以前に、村治佳織さんのこんな発言を引用したことがあります。
村治:[...] 私は二十歳のころ日本舞踊を半年やりました。面食らったのは拍子の取り方が上から下に落ちるような感じだったこと。クラシックは下から突き上げる拍子の取り方をするのです。その感覚がうまくつかめませんでした。
[日本経済新聞 2007.1.1 元旦第三部2面 新春対談「今に生きる東西の古典 伝統と新風で受け継ぐ」村治佳織、市川染五郎]
「上から下に落ちる」と「下から突き上げる」。これは「分かる人には」すごくよく「分かる」のですが、そうでない人に説明するのは難しい。それをどう説明したらいいのか、ずっと考えていたわけです。で、最近思いついたことは、やはり動作を通じて身体で感じてもらうのがよさそうだし、それは可能なのではないかということです。二通りの動作を、それぞれ「日本的」な拍子感覚と「クラシック的」な拍子感覚でやってみます。
- 1a. 指揮のような動作・日本編
- いったん両腕を下に垂らします。肘から先を、水平より少し上ぐらいに楽に上げてみてください。手のひらは、そうですね、下に向けておきましょうか。そこから、ほんの少し上に向かってのテイクバックが必要かもしれませんが、腕全体がまっすぐ下に伸びるくらい、両脇に振り下ろして、また元の位置に降り戻してください。振り下ろした時、上体も自ずと少し前屈みになるのに任せます。それが「日本的」な拍子です。振り下ろしたところが拍の頭になります。
- 1b. 指揮のような動作・クラシック編
- 今度は、同じ出発位置(水平より少し上の位置)から、ちょうど水平ぐらいの位置へ下向きに叩く動作をして、それからその反動を使うようにして、肘から先を上に振り上げ、もう一度水平位置まで叩きおろして、やはり反動で自然に元の位置に戻ってください。手首の柔らかいスナップを加えるのもいいでしょう。それが「クラシック」の2拍子です。この場合、水平に叩くところが拍の頭になります。元の位置から水平位置を3回叩いてから振り上げれば、3拍子になります。
- 2a. 手を叩く動作・日本編
- 別の動作にしてみましょう。先ほどと同じようにいったん腕を垂らし、肘から先をほぼ水平よりちょっと上に上げ、今度は手を垂直に、手のひらが内側に向かい合うようにします。そこから、肘より先を、おへそのあたりの高さに向かって振り下ろして手を打ち合わせ、また打ち合わせたときの軌道を逆に通って元の位置に戻します。この場合も、振り下ろした時、上体は自然にやや前屈みになるはずです。それが「日本的」な拍子です。
- 2b. 手を叩く動作・クラシック編
- 同じ位置から、今度は、ほんのわずか上に向かって、手を打ち合わせます。打ち合わせた手は、先ほどとは違って、左手は左回りに、右手は右回りに、円を描くようにして(逆回転にしてしまうと「日本式」に近づきます)、繰り返し打ち合わせることになります。打ち合わせる場所は胸か首あたりの高さです。これが「クラシック」の拍子です。2回ごとに叩いたあとの円を少し大きく取れば2拍子、3回ごとなら3拍子、4回ごとなら4拍子(以下5拍子6拍子…と同じ)です。
このようにすれば、「違い」をなんとなく体感していただけるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。少なくとも取っ掛かりにはなりそうです。オーケストラのメンバーに、こうした動作をやってみてもらうことも考えられます。しかしこれでも多少苦しい説明ではあります。「日本的」とした動作でも、ほんの少しアレンジすれば、「クラシック的」な拍子もまったく表現不可能ではないし、その逆もしかりだからです。
さらにまたこの違いを身体動作抜きで言葉にしようとすると、きわめて難しいことになります。まだまだ考えなければならないことがありそうです。












Enjoy. 某ファストフードのドリンクの容器に書かれていた言葉。そう言えば、Apple 製品のおしゃれなパッケージにも同じ言葉があったっけ。これは英語ならではなのではないだろうか。ドイツ語の Viel Spaß! は根本的なニュアンスが違うし、そもそも命令法ではない。Genieß! とは言わない気がする。日本語にしても、ぴったり対応する言葉が思いつかない。楽しみなさい、とか、楽しんでいらっしゃい、とか、いかにもホンヤクではないか。
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