ヴァイオリン(ヴィオラ)の左手首は下腕からほぼまっすぐで、手首が楽器本体よりに曲がってしまってはいけないことになっている。
これは、初心者がもっとも陥りやすい「悪いクセ」の一つ(僕もかつてこれを直すのに苦労した)。これだと左手のフレームががたがたになって、音程がなくなる。ヴァイオリンを習い始めた人は、多くの場合、第一ポジションの次に第三ポジションを学ぶのだけれど、そのときにこのクセが付きやすいから気をつける必要がある。(第三ポジションの前に第四ポジションを、それによってポジション移動を教えたらいいのではないかと思う。第四ポジションだと、楽器のボディにぶつかるので、手首が曲がる余地はない。)
しかしまた、基本はあくまでもその通りだとしても、手首は絶対にこのように曲がってはならない、というのもまたウソではないだろうか。三度の和音を押さえるときは、第三指、第四指が低い弦に置かれる。ほかのたいていのパタンと違って、三度のときは、例外的に、手の小さめな人であればことさら、この「誤り」とされる形に近い形を意識してとる必要があるのではないだろうか。むしろそのことによって三度音程は安定するのではないだろうか。
(図は、Annemarie Jochum “Geige spielen. Ein Ratgeber fuer Liebhaber” Baerenreiter, 1994 ISBN: 3-7618-1142-X から。)
3度の和音のことはおいておいて、サードポジションの話に戻す。カトー・ハヴァシュ Kato Havas の A New Approach to Violin Playing (Bosworth) を読んでいたら、「サードポジションで手(手首)が楽器の胴に当たってよいか否かには議論があるが、自分は原則として(例外はいつでもあるが)当たってよいと考える」と書いてあった。ところが、そこに掲載されているイラスト(画像)を見ると、手首は曲がっていない。ちょうど手首はまっすぐなまま、まともなフレームのままで、手首が楽器の胴に接している図になっている。僕の経験では、サードポジションで手首が楽器の胴に接するには、手首は曲がってしまう(手が甲側に曲がる)しかない。ヴァイオリンの標準サイズは決まっているはずだから、これは手の大きさの違いということになるだろうか?
いずれにしても、ここから読み取れるのは、サードポジションで手首が胴に接してよいとするハヴァシュの発言は、その状態で手首が曲がらず、フレームがくずれないことを前提にしているはずだということだ。僕の場合を含む多くの日本人の、やや小さめな手では、これをやると確実に手首が曲がる。おそらく、ハヴァシュにとってこれは「例外」にあたるはずだ。だから、第四ポジションからがいいかもしれないという主張は、一見ハヴァシュの言っていることに反するようであっても、「手の小さめの人は」という限定を付けた上であれば、撤回する必要はなさそうに思う。
(親指と人さし指の股をネックにぴったりと付ける流儀もあるらしくて、それだとサードポジションで手が胴に当たる。)
いずれにしても、初心者がポジション移動の練習をするとき、左手全体のフレームに気をつけるべきだということは言える。その上で、以前のエントリで紹介したガールの練習なども加えていけば効果的だろう。





