‘iPod/iPhone’ カテゴリーのアーカイブ

Fahr-Info Berlin をめぐる Tohuwabohu

2008年11月7日 金曜日

Fahr-Info Berlin は、以前にも触れたことがあるが、ベルリンの乗り換え案内ソフト。ベルリンの21歳の大学生の、非常に洗練された作品だ。無料。GPS を利用して近くの駅・停留所を表示する機能もあるし、路線図も表示する。これまでに2万回ダウンロードされている。そのソフトに、大幅な機能制限が加えられてしまった。

バージョン1.1.1 の説明には、
Aufgrund einer Beschwerde der BVG mussten sowhol der Übersichtsnetzplan als auch die Detailpläne entfernt werden. Sorry dafür!

とある。ベルリン交通局からのクレームにより、データが使えなくなったということだ。どうやら、残りのベルリン・ブランデンブルク交通のデータしか使えなくなっているらしい。(らしい、と言うのは、ぼくはこの新バージョンにダウングレードしていないからだ。)

iPhone daily の記事 Keine Fahrpläne für Berliner によれば、ベルリン交通局は、Fahr-Info Berlin による運行情報の取得を拒否した。ベルリン交通局の情報は、私的な・非商用目的にのみ許可される。Fahr-Info Berlin は無償で提供されていて商用ではないが、それが App Store で提供されていることは、「私的」ではないという判断になるらしい。

ということは、App Store でしか正式にアプリを提供できない現在の iPhone のシステムが問題なのであって、Jailbreak した iPhone 用に、Cydia 経由かなにかで Fahr-Info が提供されれば問題ないということにもなってしまいそうだ。

さらに元ネタの taz の記事 BVG verbietet iPhone-Programm. BVG が iPhone アプリを禁止。「利用客たちは怒っている」”Kunden sind sauer” という副題が添えられている。開発者のヴィット氏にとっては、BVGがいちゃもんを付けてくることなど思いもよらなかった。このニュースに対するネット上の反応も、「BVG、どうかしてんじゃねーのか?」とか、「やっぱりドイツは俗物と役人に支配された国だってことだ」とかいったもの。

BVG 当局のスポークスパーソン、ペトラ・レーツは、ヴィット氏もAppleも、Fahr-Info Berlin で1セントも稼いでいないのだが、という指摘に対して、iPhone に限らずあらゆるケータイで使えるようなアプリを自前で提供する予定なのだという。

よろしい。それが本当なら、そして無償なら。しかし iPhone 用のプログラミングは、頼むから別にしてほしい。「あらゆるケータイ」向けに開発したアプリをちょこっと iPhone 向けにアレンジしただけの代物がどういうことになるかは、NaviTime の醜態がすでにじゅうぶん証明している。一番いいのは、iPhone 用には BVG が Fahr-Info Berlin を買取るなり、Witt 氏に委嘱するかたちをとるなりして、提供することだろう。(そのような例は、Lightsaber Unleashed でもすでに見られたはずだ。スターウォーズのライトセーバーを模したこのソフトは、いったん App Store から姿を消し、ルーカスフィルム社の正式なお墨付きをもって再登場している。)

いや、やっぱり、「あらゆるケータイ」向けのソフトを出すつもりなら、Fahr-Info Berlin とは無関係にそれはそれでとっとと出せばいいので、Fahr-Info Belrin を禁止する理由など、ない。今回の BVG の判断が、「顧客のため」には少しもなっていないことは明らかだ。

2008.11.13. 追記:taz の記事、VBB statt BVG: iPhone-Fahrplan für Nahverkehr doch erlaubt によれば、Fahr-Info でのデータ利用を禁じた BVG は、利用客に、自前で提供しているケータイ用時刻表検索サイトを使えと言っているらしい。いかにもケータイ用で、iPhone + Fahr-Info が供する使用感にははるかにおよぶべくもない。BVG は愚かだというしかなさそうだ。

そこにきて、BVG ではなく、VBB(ベルリン・ブランデンブルク交通連合)が、Fahr-Info Berlin の全面的な支持姿勢を打ち出したようだ。これにより、ヴィットくんは一二週間内に新バージョンを出すという。

VBB と BVG の関係をきちんと調べていないのだが(ご存知の方はご教示ください)、どうやら BVG は VBB に所属するメンバー、という関係のようだ。taz の記事には、BVG は呆然としているに違いない、自分は iPhone を持っていないが、小気味がいい、といったコメントが付けられている。

VBB も自前の Windows Mobile 用の時刻表サービスを提供していたが、利用者が少なく、打ち切りを考えていた。ところが Fahr-Info Berlin が出た7月、アクセス数が百倍にも急増した。Fahr-Info はこの Windows Mobile 用サイトからデータを読み取っていたからだ。そのためサービス打ち切りは取りやめになった。ヴィットくんと VBB の話し合いでは、VBB 側がヴィットくんに、時刻表データベースへの直接のアクセスを許可したという。また、BVG が使用を禁じたのと同じ(ロゴが BVG から VBB に変わるだけ)路線図も、利用を許可した。BVG ザマミロで、かつひとまずめでたい。

マネキン

2008年11月6日 木曜日

mannequin.jpg

フィンランドに日本ブームが、キター!? | エキサイトニュース

ヨーロッパ全般の現象なのであって、フィンランドでも、ということには、格別ニュース性はあるだろうか。様々なマンガのフィンランド語訳は、英語、フランス語などに比べればはるかに遅かったかもしれない。ぼく自身は、初めて『コナン』を読んだのは、丸善で見つけたフランス語訳によってであったし、初めて『ヒカルの碁』を読んだのはドイツで見つけたドイツ語版によってであった。それに「ポッキー」が「Mikado」の名で売られていたのはフランスに限ったことではない。

エキサイトニュースの記事で興味をひかれたのは、日本(少なくともアジア)女性ふうのマネキンの画像だ。これはぼくにも初見だった。

マネキンというと、白人女性っぽいのが一般で、なぜ日本の衣料品店のマネキンはみんな毛唐なのだ?といったプチ・ナショナリズム的な言説も、一頃たまに見かけた。でもそういうのを読んで、当時ぼくが思ったのは、そこらにいそうな人たちと同じようなマネキン人形がショーウィンドウに立っていることこそブキミ unheimlich なのではないだろうか、日本のマネキンが白人なのは、どこか抽象的つまりリアリティが欠けていて、だからこそある意味でまともなのではないのか、ということだった。たしか小松左京だったか、車で走っていた男が、前の車の後部ガラスに死んだ恋人の姿が見えて仰天し、事故死した、実は彼女は生前マネキンのモデルをやっていたのだった、というショートスリラーを書いていたのではなかったか。マネキンがリアルだったらブキミなのである。だから逆に、白人の世界に白人女性をかたどったマネキンしか存在しないということは、どうなんだろう、もしかしたら一種の貧しさかもしれないな、と思っていたのだ。そこらにいそうなマネキンだったら、ああ、この服はこういうキレイな人にこそ似合うものなのね、というネガティブな効果も考えられる。日本では、白人ふうのマネキンは、リアリティがないから抽象的で、だからこそ機能している部分があるのではないのか。

その逆の現象が、ここでは起きている。ヨーロッパでアジア女性ふうのマネキン。「フィギュア」の収集なんかと絡めて、もう少し精神分析的に(?)つっこんで考えてみる価値はありそうだ。

iPhone でワンセグ──フランスでの反応

2008年10月30日 木曜日

tv-iphone-1_m.jpgiPhone の外部装置でワンセグを使えるようにしてしまって、かつ予備のバッテリーとしても使えるようにする、というやり方をソフトバンクが打ち出してくるとは(多くの人々と同じく)予想していなかった。やるなあ。ぼくはワンセグには何の魅力も感じないけれど。でも予備バッテリーには関心を持たざるを得ないし、同時に発表された BBモバイルの無線LAN無償解放というのも歓迎すべきニュースだ(このあたりだとマクドナルドぐらいしかアクセスポイントがないのがナンだが。)これもぼくにはどうでもいいことだが絵文字も使えるようになるし、どうだ、iPhone になにか文句あっか? という感じですね。少なくとも iPhone の扱いに関しては、ソフトバンクは賞讃されていいのではないだろうか。別のキャリアだったらこうはならなかっただろうという気がする。

で、まあ、その話自体は、日本のあちこちのサイトで語られているので、このニュースに対して国外で比較的早く反応してきたフランスの iPhone サイト、blog iPhone.fr の話。

掲載されているのはソフトバンクの国内向けプレゼン資料であろう画像。若い女性がバッグの中にワンセグ用のアダプタを入れて歩いていて、iPhone でサッカーの試合を観ているという絵柄。「iPhone 3G でワンセグ視聴が実現」と(日本語で)書かれている。サッカーというところが、フランスをはじめヨーロッパの連中の関心を引くかもしれないと思っていたら、この記事に対する最初のツッコミが、「女の子がサッカーを観ているのか? ありえん! こりゃフェイクだな」。いやまあ、フェイクって、これ、ただのイラストだし、画面ははめ込みに決まっているんですけど。しかし男どもがサッカーに血道を上げ、女たちはちょっとそれに顔をしかめてみせたりする、という古き善き(?)ヨーロッパ的な状況にどうやら変わりはないらしい。

「だれが電話機でテレビなんか見たいと思うんだよ、このクソ番組しかないフランスだったら?」という反応もある。いや、クソ番組しかないのは日本も同じはずなんですけどね。

PDF を iPhone に送るワークフロー (FileMagnet)

2008年10月30日 木曜日

filemagnet.pngMac OS X Hints の記事、Print to iPod touch/iPhone via FileMagnet and Automatorは、Web ページでもなんでも PDF 化して、FileMagnet (¥600) 経由で iPhone/iPod touch に送り込む作業を半自動化する、簡単な Automator ワークフローを掲載している。Automator は Mac OS X 標準の作業自動化ソフト。以下はそのワークフローの紹介。

通常、Mac 上のファイルや Web ページなどを PDF 化して FileMagnet で iPhone に送る場合、次のような手順になる。

  • 1. Safari などの「プリント…」メニューを選択して、プリントダイアログ左下の「PDF」ボタンを押し、「PDF として保存…」を選ぶ。
  • 2. 保存先を指定して「保存」ボタンを押す。
  • 3. Finder で保存先に行って、保存されている PDF を FileMagnet にドラッグ&ドロップする。
  • 4. FileMagnet に iPhone とシンクさせる。
  • 5. Mac 上の PDF ファイルを消去する。

これを半自動化する Automator ワークフローは次のように作成する。

filemagnet_automator.png

  • Automator を起動して「カスタム」の新規ワークフローを作成。
  • アクション→ライブラリから「ファイルとフォルダ」を選択。
  • 「Finder 項目を開く」を選択し、右側のワークフローフィールドにドラッグ。
  • 「このアプリケーションを開く」を FileMagnet に設定。
  • このワークフローを、/ライブラリ/PDF Services フォルダに、「PDF を iPhone に (FileMagnet)」とでも名付けて保存。

こうして Automator ワークフローを作成しておくと、上の手順は、

  • 1. Safari などの「プリント…」メニューを選択して、プリントダイアログ左下の「PDF」ボタンを押し、「PDF を iPhone に (FileMagnet)」(先ほど作成したワークフローの名前)を選ぶ。
  • 2. FileMagnet に iPhone とシンクさせる。

という2ステップになる。Mac 上に作成された PDF を消去する必要はない。これは一時ファイルとして /private/tmp フォルダに作成され、システムによって定期的に自動で消去されるからだ。もしこのオリジナルの PDF ファイルを Mac 上で見たければ、FileMagnet のリストのファイル名右側の虫眼鏡アイコンをクリックすれば、ファイルの所在が確認できる。

PDF 化してしまうことで、複雑な doc, ppt, xls ファイルを直接 iPhone に送った場合の表示トラブルも防げる。

記事へのコメントで、FileMagnet ではなく Air Sharing + Automator を使う方法、Mail を使う方法も紹介されている。Air Sharing の場合は iPhone の IP アドレスを固定にしておくか、Bonjour を使う必要があるだろう。PDF に「プリント」してメールで送信するスクリプトは、標準で用意されているから、何も新たな準備がいらないところはメリットだが、わざわざメールサーバーを介することになる点、普段遣いのアドレス宛では、Mac にも同じメールが届いてやや不経済な点などの欠点がある。状況に応じて使い分ければよさそうだ。

追記:「プリント」でPDF化して iPhone / iPod touch に送るだけなら、ACTPrinter ¥115 でさらに簡単にできるようになってしまった。iPhone・iPod touch ラボの記事が詳しい。

デジタルわら人形

2008年10月26日 日曜日

youdovoodoo.jpg10月25日午前1時現在で、App Store に出ているアプリは6237点にのぼる。Delicious Libray の作者に言わせれば「カスばかり」だそうだし、またある程度そうなる構造上の必然性*も App Store にはあるようだが、それでも光るアプリも相当あるし、またカスには違いなくても実に面白がらせてくれるアプリもある。
*その一つであったあまりに厳しいNDAが緩和されたことで、iPhone プログラミングに関する知識やテクニックの公開・共有が一挙に進みはじめたようだ。今後が楽しみ。

おそらく後者に属する一つ。というか二つ。App Store には、わら人形アプリもあるのだった。それもすでに二種類も。片方が「ライフスタイル」カテゴリーに入っているあたりも楽しい。
YouDo Voodoo ¥230 (ライフスタイル)
iVoodoo ¥350 (エンターテインメント)

iVoodoo のほうは、なんと5人分の人形がセットできるし、「ターゲット」の顔写真をはめ込めてしまったりする。

もちろん僕は買ってみていないけれど、しかしどれぐらい売れているんだろうね、これ。

それぞれの売り文句抄訳:

「ピン・トレイから、Happy ピン、Sad ピンを選びましょう。それを無抵抗なヴードゥー人形にドラッグしてください。人形が快感の声または苦しみの声を上げます。あなたのターゲットも同じように感じているのでしょうか? それは分かりません。でも、あなたは気分がよくなったでしょ?」

「iVoodoo はあなたの魔術的ニーズ、スピリチュアルなニーズに応えます。現代社会ではヴードゥー人形をいじめたりピンをぶすぶす刺したりするのは難しいですね。今どきの私たちの生活には、そういうことを必要とする理由がたっぷりあるだけに残念なことです。そこで iVoodoo の登場です。」

やれやれ。

ivoodoo.jpgちょっと気になって調べてみたら、本物(?)のわら人形の通販サイトとか、わら人形の作り方使い方のサイトなんてものも、ネット上には存在するのだった。あまりよく見なかったが、五寸釘なんかもセットで売っちゃったりしているのだろうか。うーむ。

ネネちゃんちのウサギのほうが、それが「ターゲット」を代理表象するものとは見なされていない点で、どこか救われるような気もする。つまりあの母娘は、ウサギのぬいぐるみを誰かに見立ててなぐっているわけではなくて、単になぐるぶったたくという行為自体に鬱憤を発散する機能があって、その素材として、ウサちゃんを使っているわけだ。

太田透氏ふうに言えば、「二次元世界」で鬱憤を晴らしているかぎりは平和なので、その性質上「ターゲット」を特定するわら人形にしても、まあわら人形自体が脳内世界的=二次元世界的かもしれないが、「本物」のわら人形よりも、iPhone 上のわら人形のほうが二次元度(?)がさらに高くていいかもしれない。

西洋的なわら人形のことも、本来の(?)ヴードゥー教のこともよく知らないのだが、App Store のわら人形でちょっと面白いなと思ったのは、人形に刺すピン(釘ではないらしい)に、ネガティブなものとポジティブなものがあるらしいということだ。YouDo のほうにはHappyピン2種類、Sadピン2種類があるし、iVoodoo のほうにいたっては Positive, Negative, Wealth, Power, Success, Love, Spirituality と7種類ものピンが用意されていて、よくよく見ればそのうち6つはプラスの意味あいにしか思えない。好意を抱く相手にわら人形を見立てて、「よい」ピンをぶすぶすやるということがあるのだろうか? どうもそのへんの論理と心理がよく分からない。

追記(2009.01.28): ミッシェル・ロヴリック『世界の奇妙な博物館』(ちくま文庫)
を読んでいたら、その中で「ニューオーリンズ歴史的ヴードゥー博物館」の紹介もあって、次のようなことを知った。

[ヴードゥー人形は]一般には「呪いの人形」と信じられているが、もともとはそんな禍々しい人形ではなく、治療の記録として使われていた。施療者が、ある人の病歴を記録するために使っていたのである。だがいまでは情熱の人形のほうが人気がある。欲する相手の髪や爪の切りくずを人形の頭部に埋め、火をつけたいと望む部位に針を刺すと……。

呪うのではなく「火をつける」のか。ちなみに、ロヴリックの同書には、日本からは伏見稲荷がエントリしているのが面白い。

App Store のビール戦争

2008年10月16日 木曜日

Adobe AIR を使った英大衆紙 Sun の Desktop Keely が、くだらないけれどよくできている。サン、侮りがたし。

iPhone / iPod touch も、「役に立たない」アプリが楽しい。

iPhone を手にして比較的早くに揃えたのが、iPint (App Store リンク)と iMunchies (App Store リンク)と iWash。こういうくだらないものが実はけっこう好きだったりする。iPint (無料)は、iPhone / iPod touch の画面をグラスに見立て、そこにビールが注がれるギミック。iPhone / iPod touch (以下 iPhone と表記)を傾けると、飲み干されて行くかのようにビールが減っていく。iMunchies (¥350)は、iPhone の画面内でポップコーンがはじけて一杯になり、さらに上から指を差し込んで一つ取り出すアニメーションを表示する。ビールを飲めば当然つまみが欲しくなるわけで、そこで iMunchies が登場するわけだ。ビール同様、iPhone を傾ければざざっとポップコーンが流れ出て、空になる。予め本物のポップコーンを一片、手の中に隠しておければ効果満点だ。そして iWash。iPhone の中でポップコーンを煎ったりすれば当然中が汚れるわけで(ウソ)、掃除しなければならない(ウソウソ)。iWash (4.99ドル)は、ビキニの美女が、iPhone のスクリーンを内側から掃除してくれる、単なるムービーファイル。いずれにしても、iPhone ならではであることは間違いない。iPhone の有用性ではないが楽しさを人に見せるには最適だ。

この iPint をめぐって、訴訟が生じている。iPhone / iPod touch 用の唯一のアプリ販売・配布チャンネルである App Store での問題だが、Apple は当事者ではない。iMunchies の作者でもある小さなデベロッパーである Hottrix は、iPint によく似た iBeer (App Store リンク)というアプリを出していた。その Hottrix が、iPint を出している Coors 社を相手に、千二百五十万ドルの訴訟を起こしたのだ。(出所

iBeer も iPint も、両者ともに、2008年7月11日に App Store でリリースされている。iPint には、カウンターの上をビールグラスを滑らせて、向こうの端にいる客にビールを届けるというゲームが付属するのに対して、iBeer には「ゲップ」の音──これが意外と賛否両論かまびすしいが、設定でオフにできる──が付いているという違いもある。iBeer は、iPhone を振ると泡が増える。本当のビールなら泡が減りそうだが。泡の表現力は、iBeer の方が上出来であると思う。また当然、iPint にはビール会社のロゴが入っている。

だが一番の違いは、iPint が無料で、iBeer が3ドルの有料だという点だ。iBeer 側は、iPint は、iBeer の盗用で、iBeer の販売機会を損なったとして訴えているわけだ。リリースは同時だったが、iPhone のモーションセンサーを利用した iBeer のアイディア自体は、すでに App Store がオープンする1年近く前の 2007年8月に YouTube に動画でアップされており、それが iBeer が先行する証拠であると同時に、iPint はそこから盗用したのだ、ということらしい。つまり iBeer が iPint に似ているのではなくて、iPint が iBeer に似ているのだ、ということだ。

iBeer 側の訴えに、Apple は、アメリカの App Store からは iPint を消した。が、日本を含めて他の各国の App Store からは、iPint は相変わらずダウンロードできる。そのためか、Hottrix は訴訟に踏み切った。訴状は、Coors のほかに、米国外での iPint マーケティングにかかわっているBeattie McGuinness 社と DOES 1 to 10 社も訴えている。

どっちみち、「役に立たない」アプリではある。いや、自分のもっているiPhone を人に見せて、ちょっと面白がらせるには最適なアプリだし、「飲みに行こうや」てな感じで人を誘うときにも「役に立つ」。(Hottrix は、もう一つ、同工異曲の iMilk も出している。)

日本の App Store でのユーザーレビューでは、無料の iPint を持ち上げて iBeer をクサすものが目立つ(これも、あるいはこれこそが、Hottrix が怒った直接の理由かもしれない)。ユーザー側からすれば、無料のほうがいいに決まっている。しかし iPint が本当に iBeer の盗用だとすると、これはちょっと問題だ。Coors 社にとっては、相当な額であろう宣伝費の一部を割いたプロジェクトにすぎないが、Hottrix にとっては重要な収入源。訴訟の行方はぼくにはまったく見当がつかないが、おいおい、Coorsよ、盗用はダメだぜ、しかし Hottrix よ、千二百五十万ドルというのはちょっと張り過ぎだろ、という声もある。

ただ、iBeer の3ドル(¥350)というのは、App Store の中では、このアプリにしては少し高すぎるのではないかという気がする(だから同額の iMunchies を購入するときにも少し躊躇があった)。App Store での有償最低額である 99 セント/115円が妥当なところではないか。

実は、まったく話題にならないが、App Store にはもう一つ似たようなアプリが出ている。dBeer(App Store リンク)。10月2日付けの明白な後発。これも無料。DISTI というソフトウェアハウスのプロモーション。グラスのDISTI社ロゴが数種類から選べたり、普通のビール、黒ビール、緑色のソーダが選べるというあたりが特長だが、グラフィックは他の二者に劣る。ここも小規模なようだし、dBeer は App Store の「エンターテインメント」カテゴリの中で埋もれている感じだからか、Hottrix は特に問題にしていないようだ。

やはり App Store に出ているもので、よく似た名前の iBeers (¥230) は、世界各国2700種以上のビールのデータベース。少し安い iBeers Lite (¥115) もあるが、違いがよく分からない。

SmartTime

2008年10月13日 月曜日

smarttime.pngiCal のようなカレンダーと To Do を併せ持つソフトで予定を管理する場合、GTD 的には、というか Lifehack 的には、To Do をなんとなく入力していくのではなく、あるいは暫定的に To Do に放り込んだ後、カレンダー内の一定の日時に入れてしまうのが得策ではある。

最初からこれをスムーズに行なうことを目標に設計されているのが SmartTime という iPhone 用ソフト。
SmartTime ウェブサイト
SmarTime App Store リンク
デザイン(見た目という意味でも、使用感という意味でも)もなかなかいい。今のところスタンドアローンでしか機能しないが、iCal などと連係できるようになれば、とてもよいものになりそうだ。

ベータ版である現在は無料で、この無料版をダウンロードして使った人には、有料化の際に割引があるという。

iPhone に絵文字?──iPhone を褒める

2008年10月6日 月曜日

なんだか近ごろ iPhone 専門のブログみたいになっているけれど、まあ、それだけ、面白いし使いでがあるということです。

iPhone の日本での売れ行きは期待されたほど伸びていない、失速している、ってなことが言われていて、他方で、それはまだ早計だという見解もネットのあちらこちらで表明されている。ぼくも後者の考えだ。

出た当初は本当に不安定でよく固まったが、iPhone OS 2.1 で、そのへんは劇的に改善され、安定した。

発売初日に行列してまで入手する熱狂的なアーリー・アダプターや、その次の次ぐらいのところに位置するぼくのような人間は、一通り iPhone を手にしたところだろう。そこで一息ついているのが今の状況で、そしてそういう人間が周囲に iPhone を見せて回って、あ、自分も使ってみようかな、という人々がじわじわと増えてきているというところだろう。(現に、ぼくも周囲の人たちから、iPhone を使いたいのだが、という相談を受けることが増えてきた。)これを失速と呼ぶのは拙速だろう。ケータイのようでケータイでない iPhone は、それで何ができるか、それを使うことがどう楽しく便利なのか、実際に見たり触れたりしないかぎりは、分かったようで分からない。(この点、PC のようで PC でない Mac と完全にパラレルだ。)

iPhone を使うということがどういう「体験」なのか、少し古い(なにしろ iPhone の進化は速いので)が、たとえば TidBITS のこの記事(筆者はフランス在住のアメリカ人)が、軽妙にバランスよく描いている。

ここで改めて、無料あるいは比較的安価なアプリを付け加えた上でできることも含めて、iPhone でできることを思いつくままに並べてみよう。

RSSリーダで日々の様々な分野のニュースをささっとチェックする。即座に天気予報や株価を見る。ケータイサイトではないあらゆる web に気軽にアクセスする。To Do 項目を軽快に管理する。受信メールに添付されたワードだのエクセルだのPDF だのの書類をその場でさっと見る。GPS 機能を使って、現在地を Google Map で小気味よいアニメーションとともに確認したり、自分が歩いてきた山のコースをさっと地図上に表示する。夫婦で買い物メモをシンクする。「電子辞書」よりも美しい画面で英和辞典、独英辞典、独独辞典、タイ語英語辞典、あるいは各国語版の Wikipedia などなどをさっと引く。加速度センサとタップ操作で各種のゲームに興じる。自分の蔵書リストを持ち歩く。持ち歩きたい書類を iPhone に取り込んで、あるいはネット上に置いて、いつでもどこでも見られるようにする。電卓、タイマー、ストップウォッチ代わりにする。各種SNSに専用アプリでアクセスする。各種IMサービスでテキストチャットをする。フラッシュカードなど様々なアプリで日課として外国語学習を行なう。海外に VoIP で電話をする。メトロノームやチューナーとして使う。ノートパソコンのワイヤレステンキーとして使う。時刻と場所に自動的に合った星空を映し出してくれる、掌のプラネタリウムとして(実際の星空を見ながら)使う。世界各地の3Dパノラマ画像を指先でぐりぐり動かして観賞する。iTunes のリモートコントローラーとして使う。VNC で Mac や PC にアクセスし、操作する。日本語英語のみならず、ドイツ語フランス語スペイン語タイ語中国語など、無数の言語を読み書きする。即興で手描きのパラパラアニメを作って遊ぶ。写真に落書きしたり、モーフィングをかけて遊ぶ。ボイスメモとして使う。各種写真共有サービスに簡単に写真をアップロードする。世界中の人々とネットで囲碁対戦をする。まだまだいくらでもありそうだが…そうそう、メールの送受信はもちろん、そういえば音楽やPodcastingを聴くことも動画を見ることも、なんと電話をすることもできるのだった。

(iPhone で何ができるか、もう少し Life Hack 的にスジの通ったような記述は、小山龍介さんの『iPhone HACKS! 楽しんで成果を上げるハイセンス仕事術』で読める。)

もちろん、そこらのケータイでできることも含まれている。肝心なのはそれが〈どのように〉できるかなのだが…。とっても「進化」した日本のケータイに比べて、iPhone ができないことが、よく列挙されたりするわけだが、iPhone にできてケータイにできないことのほうが、公平に見て、はるかに多いと言うべきではないか。なにより、iPhone は進化するし、現にしているということだ。

MacRumors がiPhone 2.2 Includes Hidden Japanese Emoji Icons という記事を出している。日本のケータイで使われる絵文字が iPhone では使えないことなど、ぼくはどうでもいいと思っていたのだが、業界のエラい人も iPhone の決定的な欠点の一つとして挙げていらっしゃる。(現状で、どうしても絵文字を表示させたければ、ケータイメールは Gmail に転送して、Safari から読めばよい。自分から絵文字メールを送りたければ、こんなツールを作ってくださっている方もある。)それが、iPhone OS の次期バージョンではどうやら使えるようになるらしい。(同時に、Google マップの Street View が使えるようになるとか、欧文入力の際のコートコレクトがオフにできるようになるとかいった噂が出ている。)

面白いのは、MacRumors のこの記事に寄せられたコメントだ。「クールだ! これ、日本のユーザ専用ではないだろうな、自分も使いたい!」という書き込みが圧倒的多数を占めているのだ。この絵文字の件が本当だとすると、どうやら皮肉なことに、日本のケータイが誇る絵文字を世界に広める役割を担うのは、それが使えないということでこき下ろされていた iPhone だということになりそうだ。絵文字がそれほど素晴らしいものならば、そしてどうも海外でも「需要」がありそうなのに、なぜ関係者各位はそれを海外に広めることができなかったのだろうか。

Softbank は企業ユースにも積極的な売り込みをかけていて、先日まず某US系コンサルティング会社が1000台採用したという。そんな動きも含めて、iPhone はこれからがますます面白い。

iPhone で使う買い物メモ

2008年10月6日 月曜日

ToDo ソフトというか、いわゆる GTD (Getting Things Done) ソフトとしては、すっかり Things がしっくり馴染んでいる(日本語化に際して無意味に半角カナが使われているのは気に入らないが)。Mac 版は iCal の To Do と自動的に同期することができ、その Mac 版を立ち上げておけば、iPhone 版の Things を起動するだけで、Mac ⇔ iPhone 間のシンクも自動で行われる。 iCal の To Do 項目の iPhone への同期は、今のところ Apple が空白のまま放置している部分だが、この点も、Things のおかげでさしあたり事足りている。(Windows な人には、Outlook とタスクを同期できる iDo がいいかもしれない。)

ちょっと別に扱いたいなと思っていたのが買い物メモ。Things で統合的に扱ってもいいのだが、やや牛刀をもっての感が無きにしもあらずだし、ウチで使う買い物リストに関しては、後で書くようにもう一つ別の要求がある。で、ショッピングリストに特化したアプリを App Store で漁ってみた。カテゴリーが「仕事効率化」「ユーティリティ」「ライフスタイル」などバラバラなのがちょっと気になるが、’shopping’ とか ‘groceries’ などで検索すると、とにかくすでに無数に出ていることが分かる。単独で使うなら、無償の ToDo ソフトもたくさんあって、それでもいいのだが、

が、ちょっといい感じで、しばらく使ってみていた。リストが階層化されずシンプルで、さっと使えるところもいいし、背景のメモ用紙の視覚的な触感というか、それもいい。

こうしたアプリはすべて横文字圏の産で、元々のリストアイテム候補(データベース)はすべて英語だが、当然日本語入力もできて、一度入力した項目は、簡単に再び呼び出すことができる。このあたりは以下のほとんどすべてのアプリに共通する。他のショッピングリスト・アプリでは、

あたりがちょっとユニーク。Speed Shop は以前使ったリストの使い回しがしやすいよう考えられている。Shoppi はアイコンを使ったリストが特徴。Foodle は GPS を利用した location-aware な作り、シェイクで再ソートする機能などを持つ。GroceryZen はレシピと連動する特長がある。Shopping List は地図と連動。現在いる店で以前に何を買ったかが分かり、その店でよく買うものを上位に表示、リストにアイテムを入れると、その品をこの前買ったのはいつかも表示される。

だがしかし、今回考えたのは、家族間のリストの共有。家人とぼくと一緒に iPhone を購入したので、両者の間で買い物リストが共有できるのがいい。上記Shopping List (Andrea Vettori) のほか、

などは、メールでリストを送ることができるようだ。しかし折角二人とも iPhone を使っているのに、メールを送るだけではちょっと面白くない。両方の買い物リスト自体が何らかの形で同期できるほうがいい。そうなると、候補としてはこのへん。

どちらも、専用の Web サイト経由でリストの管理や共有ができる。iNeedStuff のほうは、値段だけのことはあって、それに加えて、iPhone 同士直接のシンクをうたっており、また Shopping List や Foodle のようにロケーション・アウェアでもある。

で、思い切って iNeedStuff のやつを使うことにしようかなともさんざん考えたのだが、二人分購入すれば ¥2000 である。(おまけに ¥1000 というのは、「期間限定の10%引き」のお買い得値段だそうで、本来はさらに少し高くするつもりらしい。)

結局ぼくらが選んだのは、Zenbe List。特に買い物リストに特化したものではなく、あらゆるリストが作れるソフトだが、ネット経由でリストの共有ができる。リストはいくらでも作れて、その中の特定のものをシェアできるようになっている。Web サイトでもリストの管理ができる(ただし Safari ではうまく動作しない。Firefox ならば問題ない)。しかも無料。しばらくはこれでいってみようと思う。

iPhone / iPod touch 用 Duden: Deutsches Universalwörterbuch と App Store での価格設定について

2008年10月3日 金曜日

iPhone / iPod touch 用の App Store に、ついに独独辞典が登場した。Duden – Deutsches Universalwörterbuch
icon。見出し語15万。これは大きい。まあ、以前から Office Bibliothek という名前で、Mac や PC で使えるデジタル版が出ていた。同じ形ですでにデジタル化されている Duden の Das große Wörterbuch der deutschen Sprache なんかも続けて iPhone 用にしてくれると嬉しいのだが。「電子辞書」ガジェットの小汚い表示、使いにくいユーザーインターフェースではなく、iPhone で見ることができるというのはやはり大きい。

ところで、問題は価格だ。App Store に出た当初は¥2900だった。それがいつの間にか¥4400になっている。どうも App Store のソフトの価格は上げたり下げたりが甚だしすぎる。

そう思っていたら、独Mac Life 誌(そう、そういう名前の雑誌がドイツには今でもあるのだ。かつて日本にもあったけれど)の記事によれば、最初́ 20 Euro で出てしまったのは App Store のミスで、今の 29.99 Euro が本来の値段なのだ、と、開発元の Paragon GmbH は言っているという。Paragon 自体のサイトでは、この説明はぼくは見つけられなかった。してみると、出てすぐに買ったぼくはラッキーだったということになりそうだが、なんだかなあ。

「駅探」もこの上なく下手なやり方で有料化して叩かれまくっている。

逆に、値段を下げてくるアプリも少なくない。レース・ゲームの Cro-Mag Rally がそうだ。当初は ¥1200 だったのをなんと ¥230 に値下げした。1000円近く、8割以上の値下げ。ぼくはどちらの値段でも買っていないので、うーむと思うだけだが、出始めに購入した人にとっては面白くないはずだ。でもどちらかというと、値下げはさほど叩かれない。当たり前か。差額で言えば有料化された「駅探」は350円だが、無料だったことからすると無限大倍(?)だからなあ。(iPhone の計算機で、0で割る割り算をやると、デカいカタカナで「エラー」と表示される。なんだか間抜けで楽しい。)

最初から、1週間だけとか、2000ダウンロードだけとか、期限を区切って無料にしてくるアプリも多い。もちろんそれならいいのだ。AirSharing も、Simplify も、Best!価格も、ぼくは速攻で入手した。

一つには、今まで Mac でも PC でも「オンラインウェア」では普通だったやり方、無償でダウンロードして試用できて、気に入って使い続けるには有償のユーザ登録をする、というやり方が App Store では不可能だということも問題なのだろう。この問題に対処する一つのやり方が期間限定無償であり、もう一つのやり方が、機能を削った無償版をリリースすることだという状態に、いまはなっているらしい。「駅探」はそのどちらでもなく、無償だとばかり思って最初から使ってきて、NaviTIMEの出来の悪さに引き比べて iPhone アプリのお手本だと絶賛してきたようなユーザが、突然有償化を告げられるという、そういうやり方をとってしまったのだった。政策のミスとしか言いようがない。それでも有料アプリのトップセラーになっているし、そのうち無償だったことは忘れられるさ、ということなのかもしれない。無償だったことを知らないユーザならば、350円はそんなに痛くはないだろう。でもぼくを含めて初期ユーザの大部分は、あ、ここは信用ならねえな、という印象を忘れることはないと思う。

# 追記:頃合いを見計らったかのように、「Yahoo!路線情報」が無料アプリとして登場した。これでいいや。

いずれにしても、App Store で購入ボタンをクリックすることが(あるいは iPhone 上でタップすることが)、まるで投機家になったような気がするのは、どうもあまりいいことではない気がする。

追記:期間限定で Aqua Forest, Neoさめがめ, Catch the Egg を無料にしたハドソンは、App Store でのアイコンに “Free Trial” という帯を入れている。この言葉だけでは期間限定無償提供なのか、デモ版なのか分からないが、いずれ有償になることを明確化する一つの工夫だと言えるだろう。また、こんなApp Store 価格更新情報サイトがもう存在するのだった。

便利だなあ。いや、喜んでいてはいけないよな、やっぱり。純正の App Store が見づらいということだし、アプリの価格がころころ変わるのもやっぱり問題だ。