何年前だろう、京都の弦楽器店で、アマデウス四重奏団メンバーによる公開レッスンがありました。アマデウスは1987年にもう活動は止めていたので、元アマデウスと言うべきかもしれません。
アマデウスカルテット最晩年の公演を東京で聴きに行ったことがありました。ブレイニンが、指板の上で途方もないフォルテッシモを出していたのが強烈な印象に残りました。(弦のことをあまりご存知ない方のために注釈しておくと、ふつう、弦楽器の強音は駒寄りで出すんですね。指板寄りはふつう弱音。つまりあり得ない弾き方だったわけです。)
公開レッスンは、生き残りメンバーが一人一人それぞれに会場を充てられて同時に指導。僕はブレイニンがやっていたレッスンを見に行きました。狭い会場で聴衆は十数人。生徒役はたしか東京芸大や大音の1、2年生のカルテット、曲目も覚えていないし、うーん、そんなとこで突っ込まれていないでよ、という出来でした。そのうえ、ドイツ語通訳の女の子がどうにもならなくて、ブレイニンは彼女を無視して英語で生徒や聴衆に向かって直接しゃべり始める。そのときのやりとりがちょっと面白かった。
ブレイニン:室内楽 chamber music とは何でしょう?
僕:(だれも返事をしなかったので)室内(in a chamber)で演奏する音楽でしょう。
ブレイニン:(わが意を得たりというふうに)そうですね。室内。どういう室内でしょうか。それが問題なのです…。
そのあとの講釈によると、chamber (独:Kammer)という言葉で、狭い部屋を考えてはいけない。宮殿の広間をイメージすべきなのだ、ということでした。ブレイニンの講釈が歴史的にどこまで正しいかは判断が難しい気がします。19世紀には、実際、室内楽はブルジョワ(死語だな)の家庭でおおいに楽しまれていたわけですし。ただまあ、ようするに、ちまちました演奏をしていた生徒たちに対して、もっと大きな空間を考えて弾きなさいよというアドバイスだったわけですね。
自分でヴァイオリンを構えて弾き始めると、肩にというより、でっぷりふくらんだお腹にちょこんと楽器が載っているように見えました。今だったら、どう見てもメタボ呼ばわりされるのではないかという…。
そのブレイニンも数年前に亡くなったのですね。
ブレイニン追悼の2枚組CD:
以上は以前某所に出した記事に少し手を加えて再録したもの。こんなの書いていたことを思い出したのは、ありちゅんさんのところで、若かりしクララ・ヴィーク(のちのクララ・シューマン)にウィーンから与えられた die kaiserlich-königliche Kammervirtuosin という称号のことが出ていたから。この場合の Kammer- も、宮廷の、王室のといった意味なのでしょう。
こんにちは。いつもいろいろありがとうございます。Kammer と聞くと、つい四畳半くらいを想像してしまうワタシはやっぱり日本人ですね^^; コンサートホールほどは大きくない場所での演奏(宮廷での演奏とか、サロンでの演奏など)は Kammermusik に入るのでしょうか。なんとなく目からウロコですね。
ありちゅんさん
転居後初のお客様です。ようこそ。:)
そういえば、大昔、シェーンブルン宮殿の大広間で弦楽四重奏を聴いた記憶があります。天井が高くて、よく響くんですよ。Kammermusik の日本語定訳が「室内楽」になっているのは悪くないと思うのですが、元々は市民社会以前に生まれた言葉なのかもしれません。調べてみなければ。
現在の語法では、交響曲、管弦楽曲などと区別される弦楽四重奏、ピアノ三重奏、場合によってヴァイオリン・ソナタなどを「室内楽」と呼んでいますね。つまり編成による区別になっています。
何度も失礼いたします。Duden Universal を引きましたら、Kammermusik の定義が次のようになっていました。
Kammermusik:die in den fürstlichen Gemächern dargebotene Musik, LÜ von ital. musica da camera:
ernste Musik für eine kleine, in den einzelnen Stimmen oft nur solistisch besetzte Gruppe von Instrumentalmusikern oder Sängern.
これを読みますと、ナルホド~と思えますね。fürstliche Gemächerですって。takuya さんが上に書いていらしたことと合致します。古い白黒のドイツ映画やオーストリア映画でよく見かけました。どこかの公国の宮殿で楽団が音楽を奏でるシーン。ああいった雰囲気なんだろうなぁと想像しています。装飾が施され、天井からシャンデリアが下がる広間でMusiker たちが正装して領主の前で演奏するんです・・・ホールでオーケストラが演奏するほどの規模じゃないけれど、結構楽器の数はそろっていたりします。あんな感じなんでしょうか。
ホントしつこくてすみません。言葉の定義を探るのって大好きなんです…。ひと様のブログを荒らしまわったりして失礼いたします。ウィキで室内楽を調べてみたところ、「重奏」の項目にありました。以下、引用いたしますね。『重奏の音楽、重奏のための楽曲を室内楽と呼ぶ。室内楽は英語でチェンバー・ミュージック(chamber music)といい、チェンバー(chamber)とは宮廷内の広間のこと。本来は宮廷楽と訳されるべきであるが、「室内楽」の訳が定着した。同様にチェンバー・オーケストラ(chamber orchestra)は室内オーケストラと訳された。』
おおお、いろいろ調べていただいてすみません。
仕事場に置いてあるグリムでも引かなきゃなあなどと思っていたのですが、ウィキにも案外ちゃんと書いてあったんですね。Duden Universal も手元にあったのに引いていませんでした。
しかし19世紀以降の Kammermusik は、やはり宮廷楽とは訳せませんね…。Duden の語釈は、前半が〜18世紀、後半が19世紀以降によく当てはまるように思えます。そう考えると、「室内楽」というのは案外妥当な訳語だという気がします。ただ演奏する人はやっぱり小さな演奏にならないように、四畳半イメージしないように、気をつけなさいよ、というところか。
ありがとうございました。
出遅れちゃいましたが、お引越し、お疲れさまでした(*^^)
ブログふたつを統合されたのですね~?
「室内楽」というと、 四畳半とは言わないまでも(笑)
サロンコンサートくらいの規模をイメージしていました。
つまり楽器店のショールームくらい?
>宮殿の広間
ってことは、かなり広い空間なのでしょうね。
私は相当、違ったイメージを持っていたのかもしれないです。
天井も高く広いところでは、音の響き自体がまるで違ってくるでしょうし、
弾き方も変わって当然なのでしょうね~
スケールの大きい演奏をしなさい、ということなのでしょうか。。
改めまして、今後とも どうぞよろしくお願いいたします(^^)
> フルフルさん
もしかしてこちらへはお初でしたっけ? ようこそ。
Blogger でやっていた同名のブログは、統合したわけではなくて、そのまま放置してあります。使い道をどうするかな。
ええ、広い空間をイメージして演奏しないと、ですね。
> ありちゅんさん
改めて Grimm 引いてみました。バッハのことを Kammermusikus in Berlin と呼んでいた例などが挙っていました。Kammermusik は、もともとは、Kirchenmusik や、Opernmusik、Theatermusik などと対比される概念だったようですね。やっぱり第一に演奏場所としての宮廷。