子供の要望で、次世代ワールドホビーフェアなるイベントに、思い切って、行ってきた。うん、ぼくにとっては相当に思い切った決断だったのだ。18日、京セラドーム。こういうイベントはすべからくこんなものかもしれないが、ひどいものだった。球場のフィールドにビニールシートをかぶせ、そこに各社のブースが並ぶ。N天堂と、Sニー・コンピュータ・エンターテインメントと、S学館と、ソフトウェアハウス各社のイベント。ターゲットはおそらく小学校高学年あたり。
フロアは「ゲーム&ホビー会場」と、隅っこの柵で仕切られた「スペシャルグッズ販売会場」に分かれており、同じフロアながら、それぞれ違う入り口から入らなければならない。10時くらいに京セラドームに着いて、まず「ゲーム&ホビー会場」へ。球場の外、場内の通路を行列を作ってぐるぐる歩かされること1時間あまり。場内は大混雑で、いちおう「会場マップ」は手渡されているものの、円形の会場でどこに何があるかを把握するのがまず難しい。丸天井には、巨大なコナンやピカチュウやドラえもんが浮いている。各社ブースではぞれぞれに漫画家のサイン会をやったり、特典グッズを配布したりしていて、そこにまた行列ができる。サイン会の行列の方はそれなりに考えて準備していたようだが、それ以外の行列の捌き方はまったく場当たり的で、かなりの長さの行列ができてしまってからロープやら柵やらを持ち出して整備していた。ブースとブースの間の通路は決して広くはなくて人でいっぱいで、何の行列がどこから始まっていてどこが最後尾なのかも分かりづらい。「スペシャルグッズ販売会場」は別だが、「ゲーム&ホビー会場」の各種ブースでもいろいろ販売していて、何がどこで手に入るのかも分かりづらい。
結局のところ、マンガの創造者であらせられる先生方のサインなどにはいっさい興味を示さず、「Pンギンの問題」のちゃちなプレート一枚を獲得して満足した子どもたちと「ゲーム&ホビー会場」から脱出したのが正午を大きく回った頃。折から外は雨。球場の中にあったマクドナルドで食料を調達し、満席の店を出て(この店ではそもそも何も言わなくてもデフォルトでテイクアウト用の袋に入れて商品を渡された)、場外のどうにか雨のかからないところで立ったまま昼食。それから傘も持たずに小雨に打たれながら、「スペシャルグッズ販売会場」に入るための行列に並ぶ。最後尾には、「入場まで150分」と書かれた札を掲げた男が立っている。2時間半。まさかそこまではかかるまいと高をくくって並ぶ。それが間違い。建物の中に再び入ることができたのは案外早かったが、それから先が長かった。雨に配慮して、屋内の行列を長くしたらしい。球場をとりまく円形の通路をずっーと奥までゆっくりゆっくり進んで、折り返し、それから入ってきたゲートを再び通り過ぎて、その先まで延々歩く。午前午後の行列を合わせて、たぶん京セラドームを2周以上はしたのだと思う。周囲には、ぐったりした子供を疲れた表情で抱き上げる親。ゆっくりゆっくり進む行列について歩きながら、持参したDSで黙々とゲームをしている子供。うんざりした様子で列から抜け出して帰っていく親子。最後は狭く区切られた長い階段を降りて、フィールドに到達する。将棋倒しの恐怖。もちろんそれを恐れて、警備員たちもぴりぴりしている(こういう構造の会場選択にも問題がありそうだ)。最後の最後のこのあたりで、警備員に食って掛かる親がいた。主催者と契約した警備会社のそのまたバイト君に怒りをぶちまけたところでどうなるものでもあるまいと思うが、気持ちは分かる。
ま、このイベント、この大阪を皮切りに東京など各地で行われるようで、ここ大阪はパイロット的な位置づけなのかもしれない。ここでの失敗や不手際が以後の会場での改善に役立つことを祈ろう。
で、「スペシャルグッズ販売会場」。最初に書いたように、「ゲーム&ホビー会場」と同じ球場のフィールドの、片隅に区切られた狭い場所。だから、階段を降りてきたとき、おお、この場所を目にするのは何時間ぶりだろう、と、妙な感慨にとらわれる。丸い天井には、相変わらずドラえもんやコナンの巨大なハリボテが浮いている。そしてこれだけの苦難を経て到達した販売会場、もともとたいした品揃えのわけでもない上に、めぼしいものは既に完売。子どもたちが当てにしていた「先行販売」グッズも、とうに売り切れ。そして販売会場に入ってまもなく、場内に「蛍の光」が流れ出す。4時で閉場なのだ。
で、イベント名称に関する疑問。どこが「次世代」なんだろう。中身自体が現行のDSやPSPと、S学館の古典的なマンガ雑誌媒体に乗っかったものでしかない。このイベントの提示のしかた、客の捌き方は前世代以前でしかない(もちろんここで Apple の MacWorld 撤退の話を思い浮かべる)。どこが「ワールド」なんだろう。内容も客も、ニッポンローカルでしかない。どこが「ホビー」なんだろう。ゲームしかないではないか。「ホビー」に括られるであろう世界は、もっとずっと幅広く、奥深い。フェア? もう何も言うまい。いや、何らかの「お祭り」を求める心性は、どこまでもぼくらに付きまとうものなのかもしれない。そのフェア=「お祭り」は、いま、どういうものであるべきなのだろうか。それは今のぼくにはよく分からないが、少なくとも「コレジャナイ」とは言えそうに思う。
祭りの話はさておいて、話が飛ぶようだけれど、要するに「みんな」が追っているものを追ったら駄目なのだ。『「みんなの意見」は案外正しい』なんて本もあるようだが、少なくとも「みんなの趣味」はたいていの場合正しくないか、少なくとも質が高いとは言えないし、それを追うことはほとんどの場合自分のためにはならない。でも子供は一度ある程度「みんな」に染まる必要があるようにも思われる。それが親としては悩みどころだ。
6時間あまりの滞在の間、4時間以上を行列に費やして、めぼしい所期の品も手に入れられなかった子どもたちが、妙に納得し満足しているようなのが、いじらしいというか救いというか哀れというか。
ひたすら人ごみというものを忌避してきたぼく自身にとっては、大阪万博(古!)以来の行列と人ごみだったかな。野球に関心がないから、球場に入ったのも久しぶり。だから苦痛は感じながらも、物珍しさに面白がっていたところもないではない。でもまあ、もう、一生、二度と、この手のところに出かけていくことはないだろうなという気がする。