ノンステップバス

MVV_OEG_AG_MB_O405N2.jpgtsujigaku さんが広島の低床トラムの話を書いていた。ウチのあたりには残念ながらトラムはないのだった。だが、低床バスなら走っている。

日本のあちこちのバス路線で、「ノンステップバス」が導入されている。ドイツ製の車両も少なくないようだ。

なんとなく「ノンステップ」というのは床が低い車のことだぐらいにしか思っていなかったが、そういえば、1998年に一年間、まだ一歳にもならない子供とともに、ボン(ドイツ)に住んだとき、こんなことがあった。ぼくらは自宅近くのバス停で、赤ん坊を乗せたベビーカーとともに、空港行きのバスを待っていた。バスが来て停まると、運転手は、ちょっと待てと言い、何か操作した。すると、バスが傾いて、乗り口と、ぼくらが待っていた歩道との間の段差が小さくなった。へえ、こんなことができるんだ、と思い、感心した記憶がある。

ノンステップバスとは、本来、低床なだけでなく、そうした操作ができる車両のことであり、さらに、低くなった乗車口と、地面との間に、スロープを出すこともできるようになっているらしい。たとえば、宝塚市のサイトの「道路・交通」の項に超低床ノンステップバスの導入推進という政策記事があり、そこで、車両を傾けたり(ニーリング kneeling と呼ぶらしい)、スロープを出したりといった操作をした画像が掲載されている。

しかし、ドイツでは車を持たず、かなりバスを利用していたぼくらも、ああいう経験をしたのはあのとき一回きりだったように思う。日本のノンステップバスで、そういう場面に出会ったことはない。が、それはたまたまぼくらが知らないだけなのかもしれない。

(スロヴェニアではどうだったっけ? リュブリャーナに住んだときは、もはやベビーカーとも縁がなかったから、記憶が曖昧だ。市バスのほとんどは普通の高床系ではなかったか。)

ノンステップバスであると否とにかかわらず、バスなどの乗降の際、あるいは階段を上り下りする際、ドイツでは、ベビーカーを押す母親や車いすの人に対して、まわりの人々がさっと手を貸す。開けた扉を支えて、次の人が通るのを待つといった習慣と同じで、ある程度ルーティン化した行為だとも言えるので、そのことだけでドイツ人たちを神格化するつもりはないが、日本ではそうしたことがあまりに行われないこともまた事実だ。(そのかわりか、日本製のベビーカーなどは極力小型軽量にできている。母親一人でも持ち上げて運べることが考慮されているのかもしれない。)

バリアフリーチェックの部屋というサイトのノンステップバスを利用するにはという記事によれば、運転士によっては、スロープや渡し板の出し方、(車いす用のスペースをつくるための)座席の収納の仕方を知らないことや、車いすの人の乗車に難色を示すこともあるといい、「まことに残念な限りですが、研修の徹底を切に望みたいですね」と書かれている。ボンでぼくらにニーリングをやってくれたバスの運転手は、気のせいか、ちょっと得意げだったような気がした。

同じ記事で、時刻表のことにも触れられている。たしかに、ぼくの記憶でも、阪急バスでノンステップバスが走りはじめた頃は、どの時刻のバスがノンステップ車両であるかがバス停の時刻表に記されていた。が、それがいつの間にか廃止されてしまった。車両のローテーションの都合で、どの時刻にどの車両をあてるかは完全には決めがたいという至極もっともな理由からであるらしい。そして、車いすを使っている人が、どの時刻にノンステップバスが来るか知りたい場合は、バス会社の営業所に問い合わせるのが現状では一番だと書かれている。全車両が置き換われば解消する問題なのだが…。

ちなみに、ドイツ語では低床のことを何と言うのか、少し考えてしまった。Niederflur であるらしい。英語では low floor。ノンステップは、当然、和製英語だろう。

ドイツ語版 Wikipedia の Niederflurtechnik の項
英語版 Wikipedia の low floor の項
日本語版 Wikipedia のノンステップバスの項

ドイツでは低床バスを最初に開発したのは 1976 年、ネオプラン社。本格的な開発・導入は1987年ごろのミュンヘン市とネオプラン社の協同にはじまるようだ。その後、メルセデス・ベンツ社とMAN社が参入する。

いずれにしても、低床車はコストがかかり、たとえば日本では私営バス路線に対して、行政からの各種助成金が出されているという。上記の宝塚市のページも、そういう内容だ。国土交通省は「ノンステップバス標準仕様」なるものを制定して普及につとめているのだそうだ。

ドイツ版 Wikipedia の指摘するところでは、長距離バス、観光バスには低床車はほとんど使われない。これらのバスは、座席が高くて眺めがいいこと、座席下のトランクルームが広く多くの荷物が積めることが要求されるからだ。

コメント / トラックバック5件

  1. takuya より:

    自分でコメントしてみるテスト。

  2. tsujigaku より:

    ほんじゃまぁ、昨日まではじかれていたコメントを(バックアップとっておいたので):

    ベルンでも低床バスが導入されたとき、時刻表には、Nの記号でNiederflurbusが示されていました。今は、時刻表(http://www.bernmobil.ch/ からPDFで参照可能)に「すべて低床(保証なし)」と記されているので、ほぼすべてのバスとトラムが低床になっているようです。

    チューリヒでも一部は低床トラムでしたが、その車両を示す記号は時刻表にはなかったと思います。

    ベルンで見た低床バスは、車両中央の入口の下側からスロープが出る仕掛けになっていました。へぇーっと驚いたもんです。近代的技術と無縁そうな街だったから。

  3. takuya より:

    tsujigaku さん、どうもでした。とりあえずコメント可能にしたものの、スパム対策上これではいかんのですが…。
    Niederflur、先刻ご承知でしたか。ぼくは低床トラムには乗ったことがないか、少なくともそれと認識して乗ったことがないようです。
    近代的技術に無縁、ってベルンはどんな街なんだ…。

  4. こんばんは、おじゃまします。
    低床バス、愛媛のとある自治体のものですが導入を検討しています。面白い記事、参考になりました。ありがとうございます。

  5. takuya より:

    ポールスミスさん、こんばんは。コメントありがとうございます。行政の「中の人」なんですね。普通の体力普通の状況でバスを利用しているとあまり気づきませんが、決定的に低床車がありがたい人はいるわけです。購入費がまかなえるのならば、どんどん導入されれば良いと思います。あとは運転手さんの教育でしょうか。

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