うつくしい水が飲みたい。関西の水をなんとかしてほしい。
時々訪れるスロヴェニアのアルプス山中、ボヒン地方のカムニェという村のヴァカンスアパートの水道水はとてもおいしい。それがいい水であることは、洗い物をしていても如実に分かる。ほんの少しの洗剤でも、食器の汚れがさっと落ちるのだ。水が生きているのだ。そういうことを家人が家主のアドルフおじさんに言ったら、わが意を得たりというふうに、そうだろう、そうだろうと嬉しげだった。ほんのちょっと下流の、ボヒンスカ・ビストリツァの水は、もう違うのだという。家人は水に手触りがあるということをボヒンで初めて知った、と言っていた。
スロヴェニアのあたり、いやヨーロッパはたいていの土地で、水はいわゆる硬水なのだが、そんなことは問題ではない。もちろん Radenska のミネラルウォーターはいつも購入して愛飲していたが、水道水もいい水であることは間違いないのだ。ドイツでは水道水は直接飲むものではないなどと言われる。たしかに、ポット類には、ほんの少し使っただけで、かなりの石灰分がこびりつく。でもそれは、実はどうもたいした問題ではないという気がする。水の善し悪しの基準になるものは、もっと別なところにあるようだ。
少し前に、オーストラリアのクイーンズランド州が水不足に対処するために下水を処理して飲用水にするという話がニュースになっていて、淀川水系ではそんなのとっくの昔からやっていることじゃん、と思っていたら、案の定、Slashdot でそういうコメントが付いていた。
今僕は関西に住んでいる。もともと腸が弱いのだが、たぶん関西に移った10数年前からは殊に、慢性の下痢に悩まされるのを通り越して、自分の腸が過敏なのだ、こんなものでノーマルなのだと思ってきた。昼にラーメンを作って食べると、あとが調子悪い。寝る前にウィスキーをロックで飲むと、翌日調子が悪い。
なんでこんなことを思いつかなかったのかと思うが、少し前から、極力水道水を摂取するのを避けて、コーヒーもラーメンもその他の料理もスーパーで買った水を使うようにしたら、下痢がほとんど止まった。ラーメンはスープもほとんど飲んでしまう性癖で、その水が問題なのだった。ウィスキーはどうやら水道水で作った氷が問題だったらしい。もちろん、浄水器は使っているが、このあたりの水道水、ちょっとやそっとの浄水器ではどうにもならない。
実家のある神奈川県では、思い起こしてみれば、これほどひどくはなかった。神奈川県の水源である相模川は、上流に大都市がないからだろう。
大阪周辺の水が悪いことは周知のことだ。それでも、浄水施設の性能向上によって、最近はずいぶんよくなっているのだとしきりに言われる。しかしそれでもいまだにダメなことは、僕の体が証明している。何かが浄化し切れていない。それが何なのか、それを取り除くには何が必要なのかは、おそらくいまだに明らかにされていないのだろう。
淀川水系だけではない。西宮は酒どころのはずだし、六甲の「おいしい」水も製品になっている。いずれも相当深いところから取水しているのだろう。そうでなければ、まともな酒ができるわけも、「おいしい」水がとれるわけもない。おそらく日本の山地でも最も古くから開発の進んだ六甲山の沢は、ほとんどどれも、下水の匂いがする。ことにゴルフ場の下流など、ひどいものだ。
徳島出身で近くに住んでいる友人がいる。彼女の知り合いに関西ネイティブの米にうるさい人がいて、ではその米を炊く水はどうするのだと尋ねたら、え、普通の水道水だよと言われて、その人の「グルメ」を信用するのはやめた、と言っていた。僕は深く同意する。関西に生まれ育ったら、こんな水でも平気なのかもしれない。しかしそういう人々の感覚を信用する気には、とうていなれない。
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