旅の備忘録 マリボル (2)

マリボルの街のたたずまいは、地理的・歴史的に言って当然かもしれないが、リュブリャーナなどよりもオーストリア南部の街に似ている。ドイツ語も(ありがたいことに)おそろしくよく通じる。スロヴェニア北西部と違って、国境を限る高い山がないせいもあるだろう。イェセニツェからの列車が長いカラヴァンケ・トンネルを抜けてオーストリア側に出るのに対して、マリボルからグラーツに向かう列車はいつのまにか国境を越える。オーストリアのほうがこころなしか針葉樹が多いといった違いだ。

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maribor_cerkev.jpg赤いレンガ積みの聖マリヤ教会もちょっと北ドイツを思わせる。

『反復』に登場するマリボルは、農業学校とそのワイン山の他は、ドラウ川(スロヴェニア語でドラヴァ川)に架かる橋のみ。

夕方、まだ早い時間、僕は街の、ドラウ川にかかる橋の上に立っていた。川は、僕の生まれた村から東に百キロも離れていないのに、まるでちがう川のようだった。郷里では、U字谷の底を流れ、生い茂った草木に隠れていて岸辺にも近づきにくく、水は音も立てずに流れていた。それがここでは、はるか向こうまで見通しよく、この平原の動脈として勢いよく流れていたし、独特の川風が吹き、そこここの砂州は、もうこの川のそそぎ込む黒海を思わせた。[...] 帰宅の時間、橋の上の行き来は次第に激しくなった。風に眼を見開きながら、人々はみな急いで歩いていた。丸い街灯が白い光を放っていた。橋には真ん中に張り出した部分があった。[...] 両手で欄干を抱え込むようにして立った僕の背後を切れ目なく人が通り、その振動が靴底に伝わってきた。僕は風と夜と街灯と通行人たちに自分が染まってしまうまで、そうやって立っていた[...]。

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雪解けの季節、水量の増した川には砂州はなかったが、丸く白い街灯も、人々の足取りも、川風も、変わっていないようだった。

コメント / トラックバック5件

  1. tsujigaku より:

    恥ずかしながら、最近やっと『反復』を「完読」したところなので、なんかリアリティを感じながら拝見しました。本から受けるイメージよりずっと「普通」のヨーロッパっぽい街並ですねぇ。 :)

  2. takuya より:

    あのへたくそで誤植だらけのやつをわざわざ読んでいただいてありがとうございます。 :)
    そうですね。普通のヨーロッパの街ですね。
    山地やカルストのほうが、やはりあくまでも「ヨーロッパ」ではあっても、面白いかもしれません。次に書くつもりのプトゥイの kurent はちょっと特異ですが。
    そういや、「盲窓」はご存知でしたか?

  3. tsujigaku より:

    「盲窓」という名前だとは知らなかったです。『反復』の中の説明を見て、そういえば、同じような代物を職場で見たような気がするなとは思ったのですが。3月竣工の新しい建物にもあったような……。違ったかな。

    ABlogを見たおかげで、もう一度『反復』を反復してみる気になりました。

  4. kwan より:

    そろそろハントケもので一つご発言がほしいところです。今はでも忍従の時かも?

  5. takuya より:

    ずっと考えているんだけど、でも、それをすべきはたぶんここではないでしょ。
    忍従ねえ。コメディ・フランセーズでもすったもんだとか?

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