閉店法

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一昔前のドイツだったら、店は午後6時に閉まるのが当たり前でした。土曜は午前のみ。月に一度「長い土曜日」と呼ばれる日(たいてい月の第一土曜)は午後4時まで(どこが長いんだか)。日曜は、朝、パン屋と花屋が営業しているだけで、あとはいっさい休み、という状態。閉店法 Ladenschlussgesetz という法でそういうふうに規制されていたのです。だから土曜の午前はショッピングタイム。どこのスーパーも、カートに商品を山盛りにした客で大混雑でした。コンビニなんてありません。それで、日曜日、なにかちょっとしたものが必要になった場合、どうしていたかというと、大きめの駅の売店か、ガソリンスタンドへ行きました。ガソリンスタンドの売店は、例外的に365日24時間営業が認められていて、コンビニ代わりだったのです。ビールやワインも公然と売っている。

日本からドイツに行くと、最初そのギャップにとまどったものでした。それでも、しばらく暮らしているうちに、不便さにかわりはないものの、週末の静かさを味わうことを覚えるようになる。これはこれでいい、と思ったものでした。

しかしどの店も6時が近づくと、まだ店内にいる客を追い出さんばかりに閉める準備を始め、まるで閉めている間が本番とでも言うように、入り口のガラス扉の内側にきれいに商品のディスプレイを始める店も多かった。なにやっとんじゃい、と思ったのも事実です。それに対して、大半が家計を握っている亭主が、店の開いていない、買おうにも買えない日曜の街へ奥さんを連れてウィンドウショッピングに出かけるのが習慣、というドイツ人も多かったようですから、持ちつ持たれつというかうまくできているというか。

近頃のドイツはかなり「堕落」してきて、閉店法が緩められ、夜も遅くまで(と言ってもせいぜい8時ですが)開いている店があったり、土曜日に夜まで営業している店がでてきたりしています。それでも、日曜日だけはタブー。ドイツ人は少なくともこの点でだけは、いつまでもまじめなクリスチャンであるらしい。

ではスロヴェニアはどうか。

大勢としてはドイツに似ていましたが、法の縛りはもともともう少しゆるかったようで、少数ながら、開いている店は日曜でも開いていました。かなり前から、都市部では、数は少ないものの、24時間営業のコンビニのような店まで存在して、ドイツを基準にヨーロッパを見ていた僕は、そのことに驚いたものでした。

EU加盟で西欧というかドイツになにかと気を使っている(ように見える)スロヴェニア、独立の可否をめぐる投票以来、国民投票の大好きなスロヴェニアは、2004年に、この点をめぐる国民投票をやったらしい。独立の是非に関する投票は投票率が90パーセント近かったそうですが、やたらに行われる最近の国民投票は行く人が減ってきて、閉店法の件では20パーセントそこそこだったとか。その20パーセントの大多数が、ドイツ的な規制に賛成してしまったらしい。投票があったのは日曜日。敬虔なキリスト教信者たちが、日曜午前の礼拝に行き、その足で投票したのだ、と言われています。

数年後には改めて投票が行われて、今度は日曜営業派が盛り返すさ、という観測もあります。

賛否の議論は見えている。組合側は営業時間の延長は従業員の「搾取」になるし(日本では学生バイトやパートの女性たちが当たり前に「搾取」されてますね)、教会はもちろん日曜は安息日だと言う。開けるのに賛成の方は、消費者の便益と需要の喚起が論拠になります。

その新閉店法がこの1月1日から施行されて、日曜日に営業していたわずかな店も、営業ができなくなりました。前に取り上げたフランス系ハイパーマーケットの「ルクレール」も、月〜金の朝8時半から夜9時まで、土曜は朝8時から夜9時までとなっており、日曜は閉めるようになってしまいました。

ドイツ同様、ガソリンスタンドの売店などには例外が認められているようですが、ウチの近くにはないし、車も持っていないので、われわれには何のメリットもありません(ボンに住んでいた時は、そのときも車は使っていなかったのですが、住んでいたところの近くに交通量の多い大きな道路があって、そこのガソリンスタンドまで歩いて行って、時々お世話になっていたのでした。)

ところがしかし、スロヴェニアの大半のスーパーを傘下に収めている Mercator は、もともとほとんどの店舗で日曜休業でしたが、ウチの近くに、独立系の小さな小さなスーパーが一軒あって、ここは365日営業で夜も9時半まで頑張っていました。法による規制ですから、当然ながら、ここも、日曜営業をやめてしまったものと思っていたら、なんと日曜の今日もやっていました。何らかの例外規定に当てはまったのか、ゲリラをやっているのかは分かりません。ともかく、僕としてはちょっと嬉しくなってしまいました。店の名前の看板も何もない、ただガラスに「店」 trgovina とだけ書かれている店。上の写真は日曜の今日の午後5時のその店。

日本ほど四六時中商売しているわけでもない、ドイツほどガチガチに規制されているわけでもないというスロヴェニアの曖昧さが好きだった僕としては、是非旧に復してほしいし、こんな店は声援したくなってしまいます。

コメント / トラックバック3件

  1. tsujigaku より:

    そうそう、皆が閉めている中で、頑張って(?)開けている店を見つけると声援したくなっちゃう。

    確かに日本はこの点でお客さま天国だけど、そのぶん働かされる人もいるわけで。好むと好まざるとにかかわらず。それにしても、元旦から開けている店が珍しくなくなって、2日から営業なんてのが、なんとなくサボっている感じがするようになった日本って、やっぱりヘンかも。大晦日に買い物する意味があまりなくなりましたからね。

    閉店法って不便にゃ違いないけど、慣れの問題なんでしょうね、結局。頑張って開けている少数派を見逃して(?)くれる余裕だけは持っていてほしいです。

  2. takuya より:

    うん、日本は逆に元旦ぐらい法的に店の営業を禁じてしまってもいいくらいかもしれませんね。とりあえず元旦だけ。 :)
    こっちは正月休みは短くて、学校も3日から始まりましたが、その分、ほかにたっぷり休みがありますからね。

  3. takuya より:

    追記代わりのコメント。今頃気づいたのですが、去年の11月に、ドイツのバーデン・ヴュルテンベルク州の労働大臣(CDU)が、近々州内の閉店時間規制を全廃する意向を表明しているようですね(現行では朝6時から夜8時)。もしかしたらついにドイツにも24時間営業のコンビニが出現してしまうかもしれません。
    しかし、日曜日にはあくまでも触らないらしい。

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