ハンブルクの下町、キーツ。イーボは当地生まれのトルコ人。ブルース・リーの熱狂的なファンで(またブルース・リーだ)、ドイツ初のカンフー映画の製作を夢見ている。叔父のインビスのために作った宣伝スポットフィルムが評判になり、店には客が詰めかけ、イーボは一夜にして地元のスターになる。
が、ちょうどそのころ、ガールフレンドの女優を志すドイツ人、ティツィの妊娠が判明。演劇の勉強は続けながら産む意志を固めるティツィ。途方に暮れるイーボ。おまけに、タクシー運転手の父親からは、「ドイツ女を妊娠させた」廉で勘当される。家を追い出されたイーボは親友のギリシャ人のところに転がり込む。その父親はイーボの叔父の店の向かいでギリシャ料理店を営む商売敵。ところが息子はヴェジタリアンで、一人で別にアラビア料理店を経営している。(このあたりに、ドイツのトルコ系とギリシャ系の愛憎半ばする微妙な関係も描かれていて、これもまた面白い。)
ティツィの母親は娘に言う。「ベビーカーを押しているトルコ人の男なんて見たことある?」叔父の誕生パーティの日、ちょっとした諍いから向いのギリシャ料理店に行き、ウーゾで泥酔したイーボは、そこで店主の姪、ステラといちゃつき、大失態を演じる。愛想を尽かすティツィ。イーボはティツィを、父親を、取り戻すべく、自分がよき父親になる努力を開始する…。
監督はアンノ・ザウル Anno Saul。脚本に、ファティフ・アキンや、ルーツ・トーマ(アキン映画『ソリーノ』の台本)の名が並ぶ。もはやメジャーなアキン自身が撮るには軽すぎる素材を後進に譲ったのかとも思えるが、これはこれで楽しい作品に仕上がっている。
ティツィの Nora Tschirner も、イーボの Denis Moschitto も好演しているが、イーボの父親でタクシー運転手メフメットの役に、『愛より速く』 Gegen die Wand でもすぐれた脇役ぶりを見せていた Güven Kirac。これがとてもいい。また『愛より速く』で強烈な演技を見せたシベル・ケキッリも、脇役の一人、イタリア女として登場する。
91分。DVD音声はドイツ語/トルコ語が切り替えられる。字幕は「聴覚障害者のためのドイツ語」とトルコ語。

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