スロヴェニアでは、宗教的な行事が、ドイツなどに比べて地味な感じがする。以前に触れたように、「諸聖人の日」が「死者の日」に改名されているあたり、象徴的だと思うのだが、おそらくは「社会主義連邦共和国」時代の遺産、名残りなのだろう。
11月11日は聖マルティンの日。ワイン生産地域では、「ブドウ果汁がワインになる日」で、一種の収穫の祭りの日のようだ。特にクロアチア国境に近い北西部のオルモージュなどでは、ワイン・フェスティバルが開かれる。
11日金曜日、外国人のためのスロヴェニア語教室の遠足があって、行き先はオルモージュにも近いプトゥイのワイン・フェスティバル。ぜひにも参加したかったのだが、この日に限って大学にちょい顔を出さなければならない用事があって、泣く泣く諦める。(それに、後で書くように、夕方には子供の行事があった。)
ワイン生産地ではないリュブリャーナでは、休日でもないこの日は、特に何もない。(実はこのあと少しイベントがあるのだが、それについてはまた項を改めて書く。)
ドイツでは、特にボンでは、聖マルティン Martinstag は、子供たちのお祭りという印象が強かった。夕方、子供たちは何人かのグループになって、学校の工作の時間に作った提灯 (Laterne) を手に、家々の戸口を回り、歌を歌って、お菓子をもらう。町の広場には、赤いマントを羽織って馬に乗った、ローマ兵時代の聖マルティンも登場する。数年前に住んでいたとき、我が家にも子供たちがやってきて、歌を歌って行った。あらかじめお菓子を用意しておいたことは言うまでもない。とても雰囲気のある、いいお祭りだった。日本が舞台のドーリス・デリエ監督の映画 MON-ZEN[もんぜん] (Erleuchtung garantiert) の冒頭は、たしかケルンのこのお祭りのシーンだったはずだ。
(ボンもワイン生産地域からは外れている。ライン川対岸の南に隣接するケーニヒスヴィンターにある「竜の岩」ドラッヘンフェルスの城跡の山の斜面が、ドイツのブドウ栽培最北限だ。)
リュブリャーナではそれも一般的ではないようだ。子供を行かせている私立の小学校は例外で、上の写真のように手作りの提灯 (lučka) を持って外に出た。夕方5時に再集合して、ばたばた用意して外に出るともうすっかり暗くなっている。しかし家々を回るのではなくて、みんなで並んで歩いて、少し離れたParkホテルの近くにある老人ホームまで慰問に行ってきたのだった。
別に親は学校に送り迎えするだけでついていかなくてもいいのだが、われわれは付いて行って片隅にもぐりこんだ。ホームのおじいちゃんおばあちゃんたちは食事を終えたところのようだった。照明の落とされた食堂のテーブルの間をぐるぐる列になって回りながら、聖マルティンの歌を歌う(この歌のメロディーはドイツと同じ)。僕のすぐ近くにいたおばあちゃんは、Kaj pa lepo! まあすてき、と呟いていた。いかにも、子供たちがお年寄りたちに元気を分け与えているという感じだった。これはこれで悪くない。
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