やり始めてみて気がついたのだが、ネットで画像検索して語彙学習に取り込むというやり方には、いくつかのメリットがある。
まず第一に、スロヴェニア語/日本語対訳のネタ本の日本語から抱いていたイメージが微妙にズレていたり、スロヴェニア語の単語をもっぱら日本語の単語に結びつけただけで覚えていて、イメージの広がりを理解していなかったことに気づくことがある。前者はたとえば blagajna がそうだった。
『基礎1500語』では、blagajna は日本語は「会計、出札所」と書かれている。画像検索をかけると、ネットショップの会計画面みたいなものがたくさん出てくるほか、店のレジ、特にレジスター機そのものの写真が多く出てくる。それで、ああ、これは「レジ」なんだな、と気づく。そう言えば、町中の店のレジに blagajna と書かれているのをさんざん目にしてきているような気がするのだが、それとblagajna という単語の学習とが結びついていなかった。え? 「会計」ってレジのことだったの?…それは考えてみれば当然なのだけれど、スーパーのレジのことを「会計」という日本語で捉えたことはなかったような気がする。(blagajna はもちろん、出札所=チケット売り場でもあり、銀行のキャッシュカウンターのことでもある。どうやら要するに現金の授受を扱う窓口ないしカウンターのことなのだ。)
追記:日本語では、商店や飲食店のこういう場所は、要するに「レジ」が普通の表現で、それに対応する敬語表現(というのもヘンだが)が「お会計」なのではないだろうか。「お」会計であれば、そういうふうに書いてある場所がすぐに思い浮かぶが、「会計」だけだと、どうも会計士の世界のような気がしてしまうのは僕の感覚が偏っているのだろうか? あと、blagajna の「訳語」としては、「精算所」も挙げておくべきかもしれない。駐車場などで金を払うところのことだ。
スロヴェニア語の単語をもっぱら日本語の単語に結びつけただけで覚えていて、イメージの広がりを理解していなかったことに気づかされた例:hrast という単語を、「楢、樫」とだけ「覚えて」いたのだが、検索で出てきたこんな画像を目にすることで、ああ、これって「どんぐりの木」ってことじゃん、と気づく。楢、樫という日本語で気づけよ、というところかもしれないが、そんなまぬけな学習者でも絵を見れば一目瞭然なのだ。
そう言えば、日本の大学のドイツ語の教室で、商学部の学生相手につねづねこんな話を自分でしていたのだった。まず黒板に apple と書く。そしてこの単語の意味は、と訊ねる。当然、「りんご」という答えが返ってくる。そこから意地悪く訊く。英語圏の人間は apple の「意味」を知っているか? 当然答えはイエス。では、彼らは「りんご」なんて日本語の単語は知っているか? 答えはノー。日本語を勉強している奇特な人たちでなければ知らないはずだ。つまり「りんご」というのは apple の「意味」ではない。「訳語」にすぎない。そこであざとくも予め用意したリンゴを1個、バッグから取り出して見せ、これが apple の「意味」だよ、と言う。学生たちは割合素直に感心する。でも、このリンゴが apple の「意味」だってのも半分嘘だけれどね、apple というのはこの一個のリンゴだけを指しているわけではないから。「意味」とは何か、って話に入っていくと、言語哲学的にえらくややこしいことになるからこれ以上は立ち入らないけれど、「りんご」が apple の「意味」ではないことは押さえておいていい。そして、だから、外国語がわかるってことは、日本語に訳せるということではなくて、そういう「意味」が分かるということなんだよ。日本語に直すこと、つまり翻訳は、また全く別のスキルなんだ…
そんな話だ。そんな話をしていた自分が、スロヴェニア語の個々のこういうケースではちっとも分かっていないことに気づく。まあつまり、さしあたり、外国語の単語を日本語ではなく絵柄に結びつけるということは、それだけで一歩進んだことになると考えてもいいのではないか。(今回の『基礎1500語』を使ったトレーニングの基本は、そういうことをふまえた上で、いったん最小限の語彙を日本語ときっちり対応させてみる、ということだ。一見矛盾しているようだけれど。)
話が少しそれた。第二に、二カ国語対訳辞書で対応するものとして掲げられていても、概念にズレがあることに気づくことがある。スロヴェニア語で画像検索をかけても、あまりいい絵がヒットしないときなど、英語やドイツ語の対応する単語も入れてみる。もちろんこれらの言語のほうがスロヴェニア語で検索するよりも概してヒット数が多いのだが、その内容がズレていることがある。スロヴェニア語の poper を検索しても「コショウ」ばかりが出てくるのだが、Pfeffer や pepper では、ピーマンや唐辛子の画像もふんだんに出てくるのだ。ああ、そういえばそうなんだな、と思う。(スロヴェニア語では胡椒を含まないピーマン+唐辛子は paprika。英語でもドイツ語でも似たような単語も使われているけれども、Pfeffer や pepper の守備範囲が広いみたいだ。)
第三に、同じ単語、というか同じ綴りが、さまざまな言語で重なり合う意味を持っていたりまるで違った意味を持っていたりすることに気づく。Beholder からの Google の検索では、どの言語で検索しているのかは指示しない。上のどんぐりの画像は http://hrast.sumfak.hr/zavodi/genetics/hrast.jpg のものだ。”.hr” ドメインはクロアチアだから、クロアチア語でも hrast は hrast なのだな、とも気づく。
逆に、hrib (山、丘)を検索したときは、チェコのサイトからやたらにキノコの画像が出てきて、チェコ語は知らないからちょっとびっくりした。スロヴェニア語でキノコは goba だけれど、slovnik.cz で確かめたら、同じスラブ系の言語でも、チェコ語では hrib がキノコになってしまうのだった。ふうん。いわゆる faux ami というやつですね。…とまあそんな「発見」もある。
またたとえば čoln (船、ボート)をドイツ語 Boot で検索すると、当然ながらブーツ(要するにナガグツ)の画像がゴマンと出てきてしまう(つまり英語だ)。しかしそういうのもまた面白い。
# 特にどうしてもスロヴェニアのサイトに絞って検索したい/したほうがいいときは、Najdi.si の画像 (slike) 検索を使う。
第四に、ネット上には実にさまざまな画像が転がっている訳で、もちろんいろいろな意味でかなりすさまじいものもある。この検索語でなんでこんな絵が出てくんのよ? というのも少なくない。そんなふうに際どいものからシンプルなものまであらゆる画像がある中で、まあ、個人としての語彙学習が楽しくなればいいので、あまり必然性はなくても、キレイなおねいさんの出演している画像などは好んで UniLingua に取り込むことになる。最初に出した「タオル」の画像などはその例だ。いや、あれは “brisača” で検索したらたまたま第一位でヒットしたから、というのが事実なんだけれど誰も信じないだろうさ。うん、まあそういう楽しさも「メリット」に数え上げていいのだ、多分…。
もちろん、こうした画像検索には具体的な事物を指す名詞が一番適しているのだが、抽象名詞や動詞や形容詞も、工夫次第でけっこういい画像が出てくる。きれいな絵柄やぴったりした絵柄が見つかると嬉しくなる。(「押す」という動詞用の画像を探していたら、水辺でカメラを構えている男を、もう一人が舌を出しながら、後ろから押してつきおとすようなマネをしている写真が出てきた。即採用。”burja” の画像を探していて、ナノス山から吹き下ろす冷たい風のイメージをうまく捉えた写真に行き当たったときも嬉しくなった。)そこらへん、つい夢中になってハマってしまう。まあ、あくまでもスロヴェニア語の単語のイメージを探す作業だから、いいのだ。これをやっているうちにも、当の単語は少しずつ頭に入っていく。
著作権には気をつけなければならない。ネット上の画像には当然著作権が付いて回る。しかし個人としてこうした形で利用する分には、問題はあまりないだろう。(上にマグリットの絵やドングリの画像を引用したのは少し微妙かもしれない。)
Beholder には、画像を9枚並べて、提示された単語に該当する絵を答えるという「イメージ・クイズ」モードもある。画像を添えてある単語を command + クリックしていって選択してから開始する。画像が揃ってくると、これも、なかなか面白い。
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