これまで、スロヴェニアに限らず、ヨーロッパにはたびたび来ていながら、レンタカーや自家用車などの車を使ったことはなかった。以前、スペインの片田舎、Soria や Toro に行ったときもバス。長距離バスの路線がよく分からなかったから、たぶんこの都市まで行けばあちら方面のバスがあるだろう、といった見当で動き、それで大体当たった。
スロヴェニアの中を動くのもいつも徒歩かバス。でもこの夏、山地のボヒンにいたときに初めて車を借りた。
このあたり、バスは1時間に1本。夕方以降は2時間に1本。決して多くはないから、バスの時間に合わせて歩いたり、食事したりしなければならない。乗り遅れて、五、六キロ歩いたこともよくある。嵐の晩、ボヒンスカ・ビストリツァからカムニェに向かって歩いていて、通りかかった車が乗せてくれたこともあった。カムニェのR家のバカンスアパートに一人で滞在したとき、使っていない自転車をタダで貸してもらっていたこともあるが、基本はバスか歩き。本当によく歩いた。
おかげで、歩くことによってしか見えないものもたくさん見てきた気がする。が、悪天候の日はどうしようもない。一人や二人のときは、宿で静かに読んだり書いたり仕事をすることもできて、そういう晴「行」雨読(ここでの「行」はドイツ語の gehen、つまり歩くことだ)もまたよかったのだが、小さな子どもがいては落ち着かない(今回これまで、読んだり書いたりの仕事はほとんどもっぱら早朝)。今夏のこのあたりが天候不順だったこともあり、それで8月末、初めて車を借りた。僕自身は長年無事故無違反の優良ベテラン・ペーパードライバーなので、運転は家人まかせ。
その週末も雨がちだった。土曜は、小雨の中、ボヒンの北の谷の集落、Srednja Vas スレドニヤ・ヴァースへ行き、評判の高い食堂で昼食。北の谷は、バスの便が一日6本程度と悪く、これまでほとんど来ていなかった。食堂の名を冠した肉料理の盛り合わせ。どうということのない料理だが、鶏も豚も牛も一つ一つがとても美味しい。キッチンの腕もあるに違いないけれど、何より素材がすべていいのだろうと思えた。店は北の谷の北側の斜面の少し高いところにあって、しっかりした屋根の差し掛けられた小高い席からは、この北の谷の牧草地、南北の谷を隔てるルードニツァやチェスニツァの山、その向こうに、時折小止みになって霧の晴れ間に見える南ボヒン山脈の眺めが気持ちいい。南の谷から何度も登っているルードニツァの北側が、ほとんど垂直の断崖になっているのがよく見えた。
あまりいい写真がない…。
食事の後は、そのままスタラ・フジーナの集落を通って湖畔に抜け、南の谷をボヒンスカ・ビストリツァに戻った。
翌日曜も雨模様だったが、車でブレットを通り抜けて、ラドウリツァの養蜂博物館、それからクロパの鍛冶博物館まで行った。
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