グリーキング・テクスト、あるいは単にグリーキングと言えば、ギリシャ語化された(=意味不明の)テクストの意で、欧文の DTP で、ページレイアウトのために使われるダミーのテクストのことだ。「それはギリシャ語だ」と言えば、ドイツ語でも英語でも「わけが分からない、ちんぷんかんぷんだ」という意味になる。ただし、グリーキングに使われるのは、たいていの場合(特にアングロサクソン圏では)ギリシャ語ではなく、Lorem ipsum と呼ばれるインチキなラテン語なので、グリーキングというのは少々ミスリーディングな呼び名であることになる。
実はこの Lorem ipsum、ラテン語みたいに見えるだけで、意味はない。その意味のないテクストに「標準的なバージョン」が存在するところが面白いのだが、標準的な Lorem ipsum (名詞としては「ラテン語もどき」とでも訳すべきか)は次のように始まる。
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これはもともとキケロのテクスト ( “De finibus bonorum et malorum” B.C. 24、キケロー選集〈10〉の日本語訳は『善と悪の究極について』というタイトルになっている) の一節をでたらめに歪めたものらしい。キケロのオリジナルは、
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比べてみると、そもそも一語めの頭からしてぶった切られているのだからすごい。
以上の記述の大半は Der Brockhaus in Text und Bild 2004 のCD-ROM事典からの受け売り。もっと長いLoremとキケロの引用はここ。
ここの解説もなかなか詳しい。
しかしこの Lorem、たんなるプレースホールダー、仮の埋め草なのだから、べつにこのテクストでなくてもいいわけだが、この標準バージョンがあちらこちらで愛用されてきている。2005年初頭に出た Apple の新しいワープロソフト “Pages” に付されたテンプレートにもこれが使われていた。
ところで、この Lorem ipsum を初め、埋め草用の無意味なテクストを生成してくれる素晴らしいソフト(フリーウェア)がこちらの MacLorem。

このソフトのすごい(?)ところは、純正(?)Lorem ipsum の他に、
LOREM IPSVM全部大文字バージョン
古フランス語(もどき)
古英語(もどき)
中高ドイツ語(もどき 以下略)
古オランダ語
フィンランド語
古典ギリシャ語(これがほんとのGreeking)
エトルリア語
ローマ字による古い日本語
スワヒリ語
原インド-ヨーロッパ語
Quenya語 (J.R.R. トールキンが発明した「古代語」)
ハワイ語
完全に無意味なテクスト
…が生成できる、というところだ。しかも、同じ言語でも、”Generate”ボタンをクリックするたびに違うテクストを生成する。これだけバリエーションがあれば、ページレイアウトも楽しくなることだろう。「ローマ字による古い日本語(もどき)」なんて、まあ確かに、一語一語見れば、あり得ない音列ではないなあという感じ。要は、連中にとってスワヒリ語もフィンランド語も日本語もそれでなくてももともと意味不明(griechisch)だということですね。
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