いま、ドイツの映画監督で最も期待されるのがファティフ・アキンだ。劇場用長編デビューは1998年の “Kurz und schmerzlos” (「短く、痛みもなく」)。アキンの出身地ハンブルク=アルトナを舞台に、トルコ系、ギリシャ系、セルビア系のチンピラの友情を描いた悲劇作品。数々の賞を獲得している。
アキン(トルコ語読みでは「アクン」と書くのが近そうだが、ドイツでは「アキン」で通っているようだ)は、トルコからの移民夫婦の間にハンブルクで生まれたトルコ系二世。第一言語はドイツ語だ。早くから映画に志をもち、高校卒業試験=大学入学資格試験合格後、ハンブルクの造形美術大学に入学。1993年からは、いくつものテレビドラマに脇役として出演した。が、おきまりの「トルコ人の役」を演じさせられることにやがて飽きて、みずから短編映画を撮り始める。
2000年公開の第2作、「七月」 “Im Juli” は一転して移民の世界を離れ(トルコ系ドイツ人は重要な脇役として登場するし、舞台は最後イスタンブールに移るが)、ドイツ人カップルが主役のラブコメディー。
第3作「ソリーノ」 “Solino” (2002)は、再びドイツへの移民、といってもイタリアからの移民の家族の20年を描くしっとりとした悲喜劇作品。
第4作が、第54回ベルリナーレで金熊賞(最優秀賞)を受賞した「壁に向かって」 “Gegen die Wand”。再びハンブルクのトルコ人の物語、今度は破滅型の男女が出会ったことから生じる恋愛悲劇だ。
これまでのこれらの作品については、それぞれ改めて書くことにする。