ベンヤミン・クヴァベックとジェシカ・シュヴァルツ

ベンヤミン・クヴァベック (Benjamin Quabeck) の映画は、若者が何かに一生懸命になって、最後は「犯罪者」になって終わる。“Nichts bereuen” しかり、“Verschwende deine Jugend” しかり。「青春ドラマ」を作ってこれほど臆面もなく「暗い」監督はいないだろう。ハリウッド的に脳天気におめでたい青春ドラマに対するアンチテーゼというにはあまりに脳天気に暗いように思われる。(”Nichts bereuen” でも、ハンス・ヴァインガルトナー監督の “Das weiße Rauschen” でも悲惨な主演だったダニエル・ブリュールが “Good bye, Lenin!” の主役を射止めたことは、まことに慶賀すべきことに思われる。)
クヴァベックには、主人公たちを犯罪者にしてしまう社会や国家に対する批判があるわけではない。(それがあればいいというわけではもちろんないが。)ただ暗いのだ。もちろん、われわれは事後的に「青春」を美化しがちだし、その意味で クヴァベックは一定の「真実」を射当てているのだという見方も可能だろう。だが、その暗さは批判性を欠いた脳天気な暗さに見えてしまう。
クヴァベック映画のヴィーナス、ジェシカ・シュヴァルツにも不満がある。特に演技がうまいわけではない。演技を要求されてもいない。たんに(ドイツ女にしては?)美形なだけなのだ。その点、美人というのとは少々違うであろうにもかかわらず不思議な存在感と演技力をもつフランカ・ポテンテ(トム・ティクヴァ監督の『ラン・ローラ・ラン』。ハリウッドに行ってやった『ボーン・アイデンティティ』のリメイクは失敗だったが)や、演技を正式に学んだことがないにもかかわらず才能のきらめきを感じさせるクリスティアーネ・パウル(ファティフ・アキン監督の『七月』)あたりの魅力は際立つが、クヴァベックがこうした女優を使うことはない。

…と思っていたら、そのシュヴァルツが先日のバイエルン映画祭で最優秀主演女優賞を獲得した。一皮むけた、成長した、ということなのだろうか、監督がよかったのだろうか。“Kammerflimmern” という映画での受賞。監督はヘンドリック・ヘルツェマン、これは上に挙げた(こきおろした)クヴァベック監督の “Nichts bereuen” の脚本を書いていた人物で、弱冠26歳だという。梗概(たとえばここ)で読む限り、人物や状況の設定はいくつかのトム・ティクヴァ映画に似ているように思えるが、いずれ観てみたいものだ。

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