インドア・クライミング教室

岩登りはやっていない。沢登りが好きで高校ぐらいの頃からちょろちょろ行っていた。が、ロープワークはまったくダメ。易しめの沢ばかりを選んできた。丹沢の葛葉川や源次郎沢、関西に来てからは六甲の西山谷、京都の毘沙門谷、金剛山の妙見谷など。しかも沢靴を買ったのも去年初めてで(それで比良の明王谷と湖南の吉祥寺川に行った)、普通の登山靴で歩いていた。

もう少し奥の深い、美しいところに行ってみたいと思うようになったのと、近ごろはたまに人を案内することも出てきたので、最低限のロープワークは習得しておかなければと思われた。

昨年K山荘の比良白滝谷ツアーに申し込んだのだが、人数が集まらなかったとかで中止になってしまった。今年になって、近くの登山会の「公開山行」で、ロープワークもある沢登りの企画をネットで見つけたので、問い合わせのメールを書いたのだが、pearのつぶてだった。なんなんだろうなあ。

ボルダリング・ジムを持つモンベル六甲店が月に二回、ロープクライミングのインドア初級講座をやっていることをつい最近知って、参加することにした。

その STEP1 と STEP2 の講習が、今日、あった。阪急六甲からバスで徳井下車。時折雨のぱらつく不安定な天気だが、インドアなのだから問題ない。

で、話が逸れるが、店に入って声を掛けたバイト店員からいきなり「××先生じゃないですか!?」と言われた。二年前にドイツ語を教えた学生、Tくんだった。今は学士入学でこの近くの大学に移っているらしい。あれ、きみ、山やるの? ─いえ、物品販売の経験があるってだけで採用してもらったので、山は知らないです。あ、でも、この前屋久島行ってきました。─それはいい。楽しいでしょ。ここで学べばいいよね。

2階のジムへ行き、ハーネスとシューズを借りて、講習開始。生徒は定員6名のところ、僕ともうお一方だけ。STEP1、90分でまずは anseilen して登り、落ち、降りる練習。ダブル・エイト・ノット(ものの本で見てブーリアン結びはそらでできるようになっていたのだが、その説明もあったものの出番はなし)を結ぶ練習を何回かして、講師のかたに確保されて人工岩壁を登る。そして下降。講師はとても丁寧で明快な教え方をされる人だった。

そもそもボルダリング・ジム自体が初体験。岩場や滝場のちょっとした登りはそれなりに経験していたが、いささか勝手が違う。大過なく登りきれたものの、少し緊張した。ジムでは、思い思いに登って落ちてくる人たちがいる。幼稚園ぐらいの女の子も楽しんでいる。僕はひたすら三点支持を厳守していたが、ボルダリング系の人たちの感覚は少し違うようだった。

ボルダリングというのは基本フリー・クライミングで、ロープの出番はないわけだが、このジムは一部にロープを設置して、そういう練習もできるようになっているのだった。

1時間の休憩があって、案の定階下の店で散財してしまった。

STEP 2 では確保側の練習。出てくる結びは、二重八の字結びに加えて、自己確保のためのインク・ノット。もう一人の参加者が登るのに合わせてロープを張り、下降に合わせて繰り出す。講師の方自らが登り、落ちるのを止める。ビレイ器のおかげで、案外力は要らない。とにかく器具の扱いやロープの結び方を間違わないかぎり、大きな困難はなさそうだ。そこを間違えば命にかかわる。ということは、結び方をせっせと復習して、体にたたき込まなければいけないということだ。

というわけで、楽しく学べました。講師の先生、相方のSさん、ありがとうございました。

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高丸山

有馬に泊まりの用事があったので、一人で六甲越えをした。六甲ケーブル下のバス停からアイスロード。「山と橋を渡る」さんのブログ記事を見て、前ヶ辻谷を遡行してみたいと思った。アイスロード途中の「鎖場から豪快な谷歩きが楽しめますがラストは難儀です。」と書かれていて、いい感じの小滝の画像がいくつも掲げられている。これは行ってみなければと思った。

しかし「山と橋を渡る」さんの記事は途中でカメラの電池が切れてしまったとかで、極端に情報が少ない。アイスロードは1回しか歩いたことがない。はて、鎖場なんてあったっけと思ったが、アイスロードの登山道がいったん谷に降りて、前ヶ辻谷本流と左股との間の小尾根に取り付く、山側に鎖が手すりのように設置された階段箇所のことだった。その階段を登らず、すぐ左の谷の奥を見ると、小滝がかかっている。ああ、これは面白いかも、と難なく越える。と、上はガラガラのガレの急斜面、ずっと上に。白く大きな堰堤が見えた。どーん、って感じ。堰堤の手前は夏草が生い茂って、フサフジウツギの花の乱舞状態。堰堤を越えるのも大変そうだが、その手前の藪コギからして大変そうだった。もしかしたら巻き道があるかなあと思ってきょろきょろしたが、それらしい踏み跡は見当たらない。「山と橋を渡る」さんの記事は2010年。「ここにダムが出来たらいやだな いやな予感が・・・」と書いていらっしゃる、その予感が、的中したのだろう。この4年の間に、大きな砂防ダムが作られ、沢はいくつもの美しい小滝とともに潰されてしまったということらしい。

しかたなく戻って階段道を上り、普通のアイスロードコースで山上に。有馬での集合時間が午後早めだったので、紅葉谷を歩いて下るのはあきらめ、バスとロープウェイで有馬へ。

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有馬ではカタ越峠近くの宿に泊まった。これはいい機会だと思い、翌朝、高丸山に行ってみることにした。六甲山地の北の外れの小ピーク。こんな機会でもないとわざわざ出かけることはないだろうという気がした。参考にしたのはにゃみさんの『六甲山ショートハイキング77コース』。

カタ越峠から有馬口に向かって車道を下っていく。にゃみさんは「右手に〈太陽と緑の道〉の案内看板が立てられた分岐がある」とお書きになっているが、この案内看板は現在はなくなっているようだった。車道から右に、車止めのポールが立つ、車が通れるくらいの砂利の道が分かれているのがそれらしい。車道を挟んだ反対側にはガードレールの切れ目から踏み跡があり、〈太陽と緑の道〉の標識があって、「←落葉山:東有野台→」と書かれている。とにかくその反対の幅広い道を進むと、10メートルほど先の右側に、〈太陽と緑の道〉の「有野台・高丸山⇔落葉山」という小さな標識があった。

ここで車道から別れる。

ここで車道から別れる。

それにしても、〈太陽と緑の道〉って標識はあちこちで目にする。で、ろくに整備されておらず荒れていることが多い。なんか謎だなあと思って少し調べたら、神戸市がやっているのだった。もう少しなんとかならないのだろうか。

そのまま進んで、神戸電鉄の線路を横断する。踏み切りはない。

神鉄有馬口〜有馬温泉間の線路を横断する。踏み切りはない。

神鉄有馬口〜有馬温泉間の線路を横断する。踏み切りはない。

横断して、左方向にゆるく登り、下っていくと、小さな沢を渡る小さなコンクリート橋を通る。沢沿いの道を少し行くと、

いい感じの谷道。

いい感じの谷道。

ヒヨドリソウ。

ヒヨドリソウ。

また、どーん。階段が現れる。最初の20段ほどで左に曲がり、そこからは一直線。250段くらいか。上部は傾斜がきつくなっている。登りきってほっとするのもつかの間、平坦な道30mくらいの先に、さらに階段が150段くらいある。でもこの間もわりと植生が豊かな感じ。

階段。

階段。

シライトソウ。

シライトソウ。いや、ノギラン?

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階段のどんづまりは水道施設。

階段のどん詰まりは水道施設。

階段のどん詰まりは水道施設。

一気に登ってきたから、ここでもう有馬三山や六甲最高峰の眺望がある。

鬼ケ島や有馬三山が見える。

鬼ケ島や有馬三山が見える。

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水道施設のフェンスにそって、石垣の上の狭いところを右にトラバースし、回り込んでいくと、

ここを回り込む。

ここを回り込む。

普通の山道になり、やがて四叉路の、ベンチのある小広場に出る。

四叉路の広場。

四叉路の広場。

ここから先はとてもよく整備されたしっかりしたハイキングコースだ。昭文社の登山地図に登山路として描かれていないのが不思議なほど。

ここから左に折り返して尾根に乗る。まもなく鉄塔のある小ピーク。明るい尾根を進んで、次の小ピークでは南に分かれて下っていく道があった。

小ピークから高丸山を望む。

小ピークから高丸山を望む。

それからちょっと下って登り返して、階段登りなどがあり、これで頂上かなと思ったらまだ手前の小ピーク。

ネズ?

ネズ?

階段道。

階段道。

もう一登りで高丸山頂上だった。

高丸山山頂。

高丸山山頂。

山頂広場。

山頂広場。

山頂はちょっとした広場になっていて、自然木でいくつかベンチが作られている。西方向の展望があり、眼下に、阪神高速北神戸線や、神鉄有馬口駅などが見えている。

阪神高速神戸線を見下ろす。

阪神高速神戸線を見下ろす。

南西方向も開けていて、鬼ケ島や有馬三山や六甲最高峰が見える。東から北にかけては、樹木が茂っていて展望はない。

有馬三山や六項最高峰の眺め。

有馬三山や六項最高峰の眺め。

下山は北西に、明るい尾根をたどる。かなり先、露岩の箇所があって、北や東の眺望が開ける。北に遠く見える双耳峰は三岳・小金ヶ岳だろう。

尾根の途中の露岩からの眺め。

尾根の途中の露岩からの眺め。

地元の登山会の方によって整備されているようで、道はきれいで歩きやすい。ちょっと急な箇所には、これでもかというぐらい、ロープが張られている。有野台の公園に下り着き、

下り着いたところ。

下り着いたところ。

住宅街を通って、神鉄五社駅へ。三田〜宝塚回りにしようか谷上〜三宮回りにしようか少し迷ったが、後者を選択して昼には西宮の自宅に帰着。

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摩耶東谷

梅雨があけて間もない7月後半、ネットで見かけて気になっていた摩耶東谷へ。阪急六甲駅から神戸市バスに乗り、五毛下車。いきなり住宅街の中の急勾配のまっすぐな坂道を登る。

五毛バス停からの坂道。

五毛バス停からの坂道。

この舗装道路歩きを避けたければ、JR六甲道か、阪急王子公園北から、神戸市バス102系統で、灘丸山公園前まで行ってしまうのが賢明かもしれない。

『ヤマケイアルペンガイドNEXT 六甲山』のこのコースの記述はそっけなくて、「六甲登山ハイキング100コース」のコーナーにたった2行、

阪急六甲駅〜長峰堰堤〜摩耶東谷〜摩耶山 摩耶山に突き上げる谷。歩行=2時間5分、下りは不適 熟練者向き

とあるのみ。

長峰砂防ダムから山道。

長峰砂防ダム。車道は橋を渡って右へ、山道は左へ。

長峰砂防ダム。車道は橋を渡って右へ、山道は左へ。

ちらほらと草の花が見られる。

フェンスの下が長峰堰堤。

フェンスの下が長峰堰堤。

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対岸には大きな霊園が広がっている。

杣谷堰堤の上部。対岸は墓地。

杣谷堰堤の上部。対岸は墓地。

途中左に柵があり、「通行止め」の札が地面に落ちていた。おそらくケーブルの虹の駅に突き上げる尾根の道だろう。

虹の駅への尾根道。

虹の駅への尾根道。

杣谷堰堤を越えて左に下っていき、左から入る摩耶東谷を渡る。右に尾根の先端に登っていくのが杣谷への道。

摩耶東谷下流を渡る。右が杣谷への道。

摩耶東谷下流を渡る。右が杣谷への道。

ここから逆方向、左に沢沿いに入るのかと思ったが、すぐに堰堤にぶち当たる。右から越えられないこともなさそうだった(そしてどうやらそこを通っているらしい記録を上げている方もあった)が、少し戻って別の道を探す。

杣谷への道を進み、結論から言うと、ひと登りしてすぐに左に入る踏み跡が正解だった。最初、その先の、山寺尾根への道に入ってしまった。分かりにくかったのは、工事のために山寺尾根下部の道が付け替えられていたせいもある。この期に及んでまだ六甲では砂防ダムが増加しているらしい。谷崎も描いた洪水に触れて砂防ダムの意義を説いた説明版はこの山塊のあちこちにあるが、それが適正な数であるかどうかについての説明は決してない。工事用ケーブルの下に臨時に設置されている差し掛け屋根を二つくぐり進んで行くと、どうもひたすら尾根筋をぐんぐん登っていく。谷に降りる気配がないし分岐もない。これは違うなと思って、戻ることにする。(この差し掛け屋根、人が通ると十秒ほど、何やら音楽と鳥の声が流れるのだった。山の中で人工の小鳥の声。工事関係者に人の通行を知らせるといった役割でもあるのだろうか。でも近くに関係者はおらず、(幸い)遠くまで通る音でもない。)

工事用索道の下の差し掛け屋根。

工事用索道の下の差し掛け屋根。

最初の差し掛け屋根の(元の方向から見て)手前に、左に入る踏み跡があり、これが正解。差し掛け屋根はやがて撤去されるだろうから、別の言い方をしておくと、先ほど言ったように、摩耶東谷を渡って杣谷への道に入り、ちょっと登って尾根の先端に乗り、そこから少し平坦になるところ、その左手だ。最初は少し草がかぶっていたが、はっきりした道。摩耶東谷の左岸の少し高いところをまっすぐ進んでいく。

摩耶東谷への道。

摩耶東谷への道。

4つか5つか、木々に隠れてよく見えなかったが、摩耶東谷下流の砂防ダム群をまとめて越えていくことになる。

深谷砂防ダムを過ぎると、道は緩やかに沢筋に降りる。対岸に道もあるようだったが、沢の中を進む。沢靴は用意しなかった。普通の登山靴。

沢に降りる。

沢に降りる。

すぐにいくつか小滝があるが、楽しく越えられる。

すぐに小滝がいくつか現れる。小滝1

すぐに小滝がいくつか現れる。小滝1

小滝2

小滝2

小滝3

小滝3

梅雨明け直後の歩きではいつものことだが、調子が出ず、やたら滝のように汗をかく。しょっちゅう座り込んで長めの休憩を入れる。そのたび、首に巻いたタオルを絞る。体調の悪いとき、いやな脇汗が出ることにも気付いてしまった。これ、冬にグループで金剛山に登ったときもあったな。なんとかしなければ。

黒っぽい岩の三角形の滝が現れる。その背後にはまた大きな堰堤が聳えている。深谷第二砂防ダム。黒滝の前から右に巻く階段道が付いている。たどると、砂防ダムの上に出て、そこからさらに登る梯子段が設置されている。それを過ぎると下りになり、沢筋に戻る。

黒い滝。その上は深谷第二砂防ダム。

黒い滝。その上は深谷第二砂防ダム。ここから右に巻く。

巻き道。

巻き道。

砂防ダム上からさらに側壁に沿って階段を登る。

砂防ダム上からさらに側壁に沿って階段を登る。

タマゴタケがあった。

タマゴタケがあった。

まもなく不動滝。滝の下と、滝の上に、小汚いトタン板の小屋がある。滝行の人が使うのだろうか。滝の下、左にも支流があり、すぐ奥にまた大きめの砂防ダムが見えている。

不動滝。

不動滝。

滝の手前の中空に蔓草(テイカカズラ?)が両岸を結んで真ん中の撓んだ橋のように茂っている。そのせいもあるし、小屋のせいもあって、中段に釜を持つ三段の大きめの滝なのだが、あまり見栄えがしない。

滝下小屋脇から左の支流に向かう道。ここから右に入ると滝上に出る。

滝下小屋脇から左の支流に向かう道。ここから右に入ると滝上に出る。

下の小屋の脇を通り過ぎ、左の支流に沿った道を少し行くと、右に分かれる道があり、それを進むと、滝の落ち口にかかる小さな橋を渡り、上の小屋の前に出る。そこから上に向かう地道もあるようだったが、とりあえず沢通しに進む。

不動滝の落ち口にかかる小橋。右奥は滝上の小屋。

不動滝の落ち口にかかる小橋。右奥は滝上の小屋。

すぐにまた巨大堰堤が行く手を塞ぐ。上部に丸い穴が二つ、下に四角い穴が一つ。その四角から水が流れ落ちている。確かに間抜けな鬼の顔のようだ。

深谷第三砂防ダム。

深谷第三砂防ダム。

堰堤の30mほど手前、左岸の小尾根に、戻るように登っていく踏み跡を見つけて辿る。道はすぐに小尾根の上に出る。不動滝のすぐ上の道に入っても同じことだったろう。

一旦右にいくと、小尾根の先端の巨石の重なる小ピーク。不動滝の左岸直上の位置に当たる。この辺りから、これまで辿ってきた摩耶東谷のV字の間に、海までの視界が開けている。コース中、掬星台にたどり着くまでの唯一の展望ポイント。

小尾根の先端からの眺め。

小尾根の先端からの眺め。

小尾根の先端の岩。

小尾根の先端の岩。

小尾根の道を戻り、尾根伝いに進む。これもとてもはっきりした道。そこに落とし穴があった。息を切らせながらぐんぐん登って、どうも沢に戻る気配がないしそういう分岐もない。あの堰堤はかなり大きいとは言え、あれを越すだけならこんなに登る必要はない。どうやらこれは山寺尾根の枝尾根に付けられた道で、上で山寺尾根本体の道に合流するのだろう。こんな道があることはどの地図にも書かれていなかったから油断した。何だか今日は同じようなミスを摩耶東谷の入り口でもやっていたような気がするが…。

かなり下り戻り、堰堤上部に向かっているように見える踏み跡を発見。いや、この踏み跡は最初から目に入っていたのだが、尾根をたどる道は、このすぐ上の岩に上向きの矢印が赤ペンキで描かれていて、それにミスリードされた。この踏み跡は本当に踏み跡程度。木の間越しに見えている堰堤上部を目標に、灌木につかまりながら、かなり急な斜面をトラバースしていく。

深谷第三砂防ダムというのが堰堤の名前だった。その上を越え、砂のたまった沢にようやく戻る。

そのすぐ奥に、きれいな三段の小滝がかかっていた。播州野歩記さんの言われるように、砂防ダムができる前はもっと落差のある立派な滝だったのかもしれない。でもそこそこの水量もあり、ちょうど日が当たって、とても美しかった。下段の滝の左手にはロープが下がっていたが、頼らずともほぼ直登できた。

深谷第三砂防ダムの背後の三段の小滝。

深谷第三砂防ダムの背後の三段の小滝。

ときどき、摩耶ロープウェイの発車ベルが聞こえてくる。

ごろごろした石の増えてきた沢を進むと、間をおいて、いくつか小滝が現れる。沢筋が右に曲がるところにかかる2m程度の二条の滝は、右から巻くこともできそうだったが、あえて右側の水線を登る。足がかなり濡れた。まあ、これでいいのだ。先の三段小滝でも岩に葉が付いていたイワタバコがこの滝の左側にもあり、ここでは花を付け始めていた。

二条の滝。右側の流れに沿って登る。

二条の滝。右側の流れに沿って登る。

イワタバコ。咲きはじめたところらしい。

イワタバコ。咲きはじめたところらしい。

まもなくスリット式の巨大堰堤。別にハイカーのために空けてあるわけではないらしいが、真ん中をありがたく通り抜ける。その分厚さに驚く。これを「古代遺跡」に喩えている方があった。ピラミッドのイメージだろうか。

小滝の奥にスリット式砂防ダムが見える。

小滝の奥にスリット式砂防ダムが見える。

スリットを通り抜けて振り返る。

スリットを通り抜けて振り返る。

ガラガラの岩の沢筋を進むと、ゴルジュに入る。両岸が切り立ったゴルジュあるいは廊下と呼ばれる地形、これまで知っている範囲では、下は廊下の名にふさわしく平らなことが多かったが、ここは沢床もかなり急傾斜で、ゴルジュの中が小滝の連続になっている。

ゴルジュへ。

ゴルジュへ。

ゴルジュの中。

ゴルジュの中。

途中、左から入ってくる枝谷は、ロープウェイの西側を突き上げる沢らしい。午後のことで、ちょうどそこから、水と一緒に光が、暗いゴルジュの中に落ちてくる。このあたりは、独特なものがあって、歩いていて楽しい。どうも僕は今回、日差しがこぼれ当たっている褐色の岩とスギゴケの緑と水流の白の組み合わせに萌えていたようだ。

左から枝谷が水と光を落としている。スギゴケが鮮やかだ。

左から枝谷が水と光を落としている。スギゴケが鮮やかだ。進路は右奥にまっすぐ。

ゴルジュのどん詰まりは、三方が垂直に近い岩の壁になっている。右手の岩盤は水が流れ落ちている。奥の左側にも、わずかな水が流れている。抜け出てわかったが、上で沢が二股に分かれる、そのそれぞれの水流なのだった。

ゴルジュのどん詰まり。

ゴルジュのどん詰まり。

真ん中の比較的乾いたところに、トラロープが下がっている。ここを突破するには、このロープに頼らざるを得ない。頼ると、意外に簡単に上に出た。

このロープに頼ってゴルジュを脱出する。

このロープに頼ってゴルジュを脱出する。

先に触れたように、上はまた二股になっている。ロープの固定されている大きな杉の木の下を回り込んで、右の沢に入る。もう水量も少なくなり、次第に傾斜の増すガレ沢を進む。低い石積み堰堤を一つ越える。

ソウメン滝(←適当な命名)

ソウメン滝(←適当な命名)

石積み堰堤。

石積み堰堤。

ガレた沢が続く。途中、沢の左側が小さく崩れて湧き水が滴っているところがあったので、1Lのカモノハシに水を満たす(こういう水は持ち帰って、コーヒーやみそ汁など、沸かして使うことにしている)。

ガレた沢。

ガレた沢。

右手に、これも枝谷だろうか、ぬりかべのような岩盤を水が滴っている箇所がある。

ぬりかべが、あらわれた。×たたかう ○にげる

ぬりかべが、あらわれた。×たたかう ○にげる

やがて両側を石垣で固めた水路に行き当たる。水はまったくない。傾斜は一定しているが、水路の中は石や枯れ枝や落葉が溜まっていて歩きにくい。一定間隔で現れる堰の段差は、いちいち左右に逃げて越えなければならない。掬星台から投げ捨てられた、あるいはうっかり落とされたゴミが所々に目立つ。タイヤ、子供用のボール、一番多いのはペットボトルと、ブルーシートの切れ端。有名な(このコースの記録を上げている方が必ず触れている)、モズのはやにえのようなアンパンマンに挨拶して進む。

ここまでたいへんだったね。ぼくのかおをおたべ。<食えねえよ。

ここまでたいへんだったね。ぼくのかおをおたべ。<食えねえよ。

水路。

水路。

水路の外に出て、急斜面の道なき道をはい上がる。地面は変に乾いていて、落葉が厚く、すべりやすい。先ほどまでの水のあったところよりも、この辺りの方がヤブ蚊が多い。立ち止まろうものならプーンと纏わりついてきてうるさい。ただ、アロマオイルの虫除けが効いたか、幸いほとんど刺されなかった。この水路を離れて、山寺尾根にエスケープする水平道があるということだが、どこだか判然としなかった。美しくもスリリングでも歩きやすくもない斜面をへろへろになりながら仕方なく延々登り続けると、ようやく摩耶ロープウェイの星の駅の入り口直下に出た。

出た。

出た。

靴と靴下を脱ぎ、大きな松が蔭を落としているベンチで、しばし寝転がる。途中迷って余計な尾根道を二回も登って戻ったり、体調が今一つだったりで、ずいぶん時間がかかってしまった。山寺尾根を下るつもりでいたが、乗り物を使って下山することにする。ケーブル+ロープウェイでもよかったのだが、iPhoneでふと時刻表を見ると、あと3分で阪急六甲直通のバスが出る。急ぎ足で掬星台奥のバス停に向かい、乗り込むと、すぐに発車した。

最初乗客はほとんどいなかったが、六甲山牧場でかなりの人数が乗ってきた。いつも思うのだが、バスの座席の高さで丁子ヶ辻からの車道を下っていくと、六甲の山の大きさ、深さが案外実感できる。

摩耶東谷、いくつかの小滝の直登は楽しいし、ゴルジュもいい。すごく良いところと、すごく残念なところが半々ぐらいのコースだった。迷って時間とエネルギーをロスすることがなく、最後の水路から尾根にエスケープする道が採れれば、そしてまたこんなに暑い時期でなければ、ずいぶん印象が違ってくるかもしれない。

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仁川渓谷沢登り

仁川渓谷の右岸の道はここ2、3年、何度も歩いているが、ようやく今回、沢通しに(前の記事で「ウェットコース」と呼んだもの)歩くことができた。

仁川百合野橋。

仁川百合野橋。

いつも通り仁川百合野橋から右岸沿いに進み、沢に降りる。このあたり既に、ウィリアム・デイヴィスの浸食輪廻説に言う幼年谷(ようねんこく)らしい、両岸の切り立った「渓谷」になっている。

ツクバネウツギ。

ツクバネウツギ。

この狭い切り通しを抜けて沢に降りる。

この狭い切り通しを抜けて沢に降りる。

傾斜のゆるい堰堤の上で沢靴に履き替える。

傾斜のゆるい堰堤。

傾斜のゆるい堰堤。奥にムーンライトロックが見える。

堰堤から下流を振り返る。

堰堤から下流を振り返る。

その少し先、右にムーンライトロックの聳えるところで、いつもは左の急斜面を登って、用水路沿いのコースに入る(前の記事でドライコースと呼んだもの)のだが、今回はここから水の中を行く。今日の水量はやや少なめ、水質は仁川渓谷にしてはいい方に思えた。

ムーンライトロック。

ムーンライトロック。

ムーンライトロックを回り込んで、浅い流れの中を進むと、左に露岩の斜面が現れる。沢はそこで左に曲がり、その奥に、古い石積み堰堤が水を落としている。ここはかなり深い淵になっていて、夏場は近所の中学生たちの遊び場になっている。露岩の上から飛び込むのだ。今日は誰もいなかった。

露岩の飛び込みスポット。

露岩の飛び込みスポット。

石積み堰堤は直登できないので、露岩の上から巻く。いつも歩いている道(ドライコース)だ。堰堤の上で再び沢に降りる。

小堰堤上から振り返る。

小堰堤上から振り返る。

いつも(ドライコース)はここからまた左に登り、鎖場を通過するのだが、水の中を進む。奥に閘門がある。

奥に閘門が現れる。

奥に閘門が現れる。

閘門に向かい合った大きな岩壁はパール(真珠?)と呼ばれて、古くからのクライミング・スポットの一つらしい。その岩壁が閘門に連なる部分、閘門の右側には、水路が穿たれていて、勢いよく水が噴き出している。その水が流れ込む閘門下は、ちょっと深めの淵になっている。小さな閘門は今日は完全に閉じられていて、まったく水は流れていない。

閘門下の淵。

閘門下の淵。

閘門の左手も切り立っていて、巻けるルートはない。前回、沢装備をせずにここに来たときは、この淵が越せずに撤退した。今日はじゃぶじゃぶと水に入る。閘門の下は水面から1m程度の石積みの壁になっている。その前、淵の真ん中に、大きな丸石が顔を出している。石垣を登ろうと思ったが、滑りそうな苔は付いているし、案外ホールドが薄く、躊躇した。このあたりで水深はヘソぐらい。石垣から右の端は、自然石の小さな斜面になっている。そちらに泳いでいってみたが、これも意外と取り付けない。右の水路からの水流が強くて、流されそうになる。慌てて泳ぎ戻って、一旦手前の岩に上がる。さてどうしたものか。閘門左手の岩も登れるような形ではない。かつてはここにトラロープがあったらしいが、今はそれもない。

案外難所。

案外難所。

思い切ってもう一度淵に入り、丸石に片足を置いて、もう片方の足を石積みの下部に掛け、石積みの上に手を突いて体を引き上げる。案外簡単に登れた。案ずるよりも江戸前寿司。その上の段は、閘門左側の岩が簡単に登れた。

閘門をクリアして、パールを振り返る。

閘門をクリアして、パールを振り返る。

しばらくはまた砂地で浅く平坦な沢を進む。やがて奥に大きめの堰堤(大井滝砂防ダム)が水を落としているのが見える。これも巻くルートを考えなければならない。

大井滝砂防ダム。

大井滝砂防ダム。

堰堤まで行かず、手前の、沢筋がわずかに右に屈曲するところ(上の写真を撮ったあたり)で、左手、砂が溜まって陸になっている凹角の岩壁を見ると、古くに刻まれたステップのようなものがある。そこから見上げると、すぐ上にはトラロープが下がっているのが見えた。ここから登れば、いつも右岸道(ドライコース)で大休止に使っている展望岩(勝手に命名)に出るはずだ。

トラロープの下がる脱出路。

トラロープの下がる脱出路(巻き道)。

ありがたくトラロープにすがりながら、かなりの急斜面を登ると、踏み跡はトラバース気味になり、展望岩から堰堤上に降りる踏み跡(これは通ったことがあった)に合流する。そこから一登りで展望岩。大休止。

展望岩から六甲縦走路を望む。

展望岩から六甲縦走路を望む。沢はこの右手のはるか下。

休憩後、同じ道を途中まで下り、堰堤上に下る側の踏み跡をたどる。やはり砂地の浅い流れになっているが、右側から葦の茂みが迫り、その先が意外と深そうに見えた。沢装備ではあるが、あまり積極的に泳ぎたい気分ではない。展望岩から降りてきた地点まで戻り、対岸の踏み跡から、小さく巻く。

大井滝堰堤上の流れ。

大井滝堰堤上の流れ。

再び浅い流れの中を進んでいくと、3m程度の石積み堰堤がある。その手前の淵はかなり深そう。堰堤右端の自然石の部分は、多少のホールドはありそうだが、あまりいい感じではない。

石積み堰堤。右の岩を登って高巻く。

石積み堰堤。右の岩を登って高巻く。

堰堤手前の右側の岩角を登って、左岸の古い道に登って高く巻く。狭い階段道を越えて、再び沢に降りる。また平坦な流れの中を進み、水管の橋の下をくぐる。

水管橋。ここから左岸の道に上がることもできる。

水管橋。ここから左岸の道に上がることもできる。

この辺りの流れ。

この辺りの流れ。

と、右手に「仁川渓谷バットレス」が現れる。ここも登攀練習によく使われてきた壁らしい。見上げると、いくつか残置ハーケンが見えた。

仁川渓谷バットレス。

仁川渓谷バットレス。

その先、大岩がごろごろして、小滝もかかっている。考えてみると、この沢は、峡谷の名の通り両岸はほとんどの箇所が切り立っていて、流れも美しいが、滝らしい滝はほとんどない。百合野橋の手前、沢へのアプローチのまだ車道の部分から眺める小滝と、ここの滝ぐらいだ。滝のように水を落としているのは、すべて堰堤だ。

数少ない小滝。

数少ない小滝。

そしてこの小滝の先が、高さ15mの「仁川峡堰堤」。手前の両岸はV字に立った岩。その間は深い淵。

仁川峡堰堤。高さ15mあまり。

仁川峡堰堤。高さ15mあまり。

ここから脱出するのが難儀だった。巻き道らしい巻き道が見つからない。堰堤より少し手前、堰堤に向かい合った右側の岩に、これも昔誰かがステップを切った跡ではないかなと思われる箇所があった。しかし少し登ると、人が通ったとおぼしい痕跡は消えた。その上のやや左よりの岩窪が、なんとか登れそうに見えたが、その入り口を径15cmぐらいの松の倒木が塞いでいる。その倒木をなんとかかわし、潅木や笹の茎に掴まり、時折サルトリイバラの攻撃を受けながらよじ登ると、左岸の山道に出た。ちょうど、引き抜かれて倒された「立ち入り禁止」の看板のあるところ。

左岸の道に登り着いた。

左岸の道に登り着いた。

朝、ぐうたら筋トレをしたばかりで回復していない上腕三頭筋がぴきぴきした。腕にはいくつものひっかき傷ができていた。まあ、こんなところに半袖で来る奴が悪い。(そう言えば、仁川峡堰堤から少し戻った水管橋のところからは、左岸の道に確実に上がれるのだった。安全を期すならば、あそこまで戻るべきだろう。)

仁川峡堰堤を上から見る。

仁川峡堰堤を上から見る。

同じあたりから望む甲山。

同じあたりから望む甲山。

しばし息を整えてから、山道を辿り、広河原に出る。広河原というのは、要するに仁川峡堰堤によって形作られた砂地の広場なのだろう。ここから上はもはや「峡谷」ではない。広河原は葦がいっぱいに茂っている。広河原に出てすぐ、左に踏み跡があり、それを辿ると再び沢に出る。

広河原付近の沢の様子。

広河原付近の沢の様子。

そこからまた沢通しに進もうと思ったのだが、葦が生い茂り、かぶさってきていて、引き返した。ちなみにこのあたり、下流ではあまり見なかった魚影が多かった。アマゴだろうか。15cmくらいのもたくさんいる。沢に出たところまで戻り、右岸の踏み跡をさらに辿ると、「なかよし池」に出た。桟道が整備され、大きな東屋のある、トンボなどの豊富な池。

なかよし池。

なかよし池。

東屋で少し休憩。ここに座っていると、葦の茂った広河原の方から、いつも子供の遊ぶ声が聞こえる。でも今のあのあたり、あまりひと気はない。一種の心霊現象みたいだなあと思う。

なかよし池から車道に出る道から右に逸れ、妙に幅広い砂の道(あとで地図で見ると、枝分かれしまた合流する川床であるらしい。ここに水が流れているのは見たことがないが)を行くと、

砂地の涸れ沢。

砂地の涸れ沢。

再び沢に出る。先ほどの、葦の生い茂っていた地点の上流だ。喫茶「こんにちは」(←ドイツ語)のすぐ下流。「こんにちは」を左側に、五ヶ池からの水路が落とす滝を右に見ながら、沢筋を進む。やはりこの右側は禍々しい雰囲気が充満している気がする。

車道の橋を見上げる。以前は朱塗りだったが、黒く塗り直されている。

車道の橋を見上げる。以前は朱塗りだったが、黒く塗り直されている。

車道の橋をくぐり、なおも進んでいくと、葦などがかなりかぶさってくる。小橋が見えたところで右岸に上がる。小橋からの道を奥に辿ると、甲山キャンプ場下のなじみのテントサイト?に出た。今回の遡行はここで打ち切ることにする。

小橋。

小橋。

小さなコンクリート橋のかかるテントサイト付近。

小さなコンクリート橋のかかるテントサイト付近。

一休みして、着替えをし、沢靴をスニーカーに履き替えて、出発。ドライコースで来ると、ここから左岸に渡ってロックヒルに登るのだが、今回はパス。ここから小道を登って甲山自然の家を経由して森林公園に行くことも考えていたが、少し戻ってあの小橋を渡って進むことにする。道は細いが中途半端に舗装されており、すぐに車道の橋の袂に出た。

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車道を辿って甲山森林公園に入り、展望台から関学に出て帰る。

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仁川渓谷とロックヒル

樫ヶ峰と並ぶ近場の遊び場に、仁川(にがわ)渓谷がある。住宅街の近くの意外な自然。僕自身が知ったのは、たかだか三年くらい前のことだ。古くから岩登りのトレーニングなどに使われてきたスポットらしい。しかし別に岩登りをせずとも、ここは美しいし楽しい。そして色々な楽しみ方がある。

阪急仁川の駅から、仁川の右側の車道を、上流に向かってずっと歩いて行く。だんだん甲山が近付いてきて、舗装道路が終わる。その直前、岸辺にはまだ住宅の建つところに、最初の滝が現れる。左に百合野橋を渡ったところにある「地滑り記念館」に登る階段をやりすごし、沢の左側の細い道を進む。小さな岩の切り通しのような所を過ぎて、沢に降りる。

石伝いに沢の左側に沿って進み、ゆるい傾斜の堰堤を登ると、目の前に大きな岩がある。ムーンライトロックと呼ばれる岩だ。

ここから上流に向かうには、少なくとも二つの行き方がある。一つは沢にざぶざぶ入る、いわゆるシャワークライミング。流れの中を直接進めばいい。ムーンライトロックのある左岸にどうにか渡れば、岩の裾に歩ける踏み跡もあるが、岩の向こう側でどのみち水の中に降りることになる。ここではウェットコースと名付けようか。

もう一つは、右岸(左側)沿いに、概ね沢から離れた高い所に付けられた踏み跡を辿るもの。ドライコースと名付けよう。先ほどの、ムーンライトロックが対岸に迫る箇所で、左上を見上げると、石垣と柵が見える。かなり急な土の斜面を、無理矢理登って少し左に向かい、桜の木の根を掴みながら、柵の上に出る。狭い道があり、その山側には清水が流れている。実はこれは江戸時代、文化文政の頃に掘られた山之井(やまのゆ)用水の水路だ。水路は側溝のような溝状の部分と、岩壁の中をくりぬいた小さなトンネル状の部分とからなる。当時のことで作業用機械があったわけもなく、大変な仕事だったろうと思われる。

文化・文政の頃、武庫川の渇水に悩まされていた段上村の庄屋、松山五郎右衛門が村人にはかり、農民たち総出で、鑿と鎚で仁川右岸の岩壁に穴を穿ち、鋤と鍬で溝を掘る難工事を4年の歳月をかけて完成させた。この用水路が「山之井」と呼ばれ、長年の水不足は解消された。だが他村との水争いとなり、大阪奉行所の裁定を仰ぐ。文政7年、勝訴となり、利水権を獲得。(西宮市広報誌、2012. 9. 1. の記述による。)

柵の上の道を左に戻れば、地滑り記念館の敷地に至るのだが、そこは金網の扉があって、鍵がかけられている。ちょっとワイルドな道だから、記念館を訪れた客がうかつに入っては困るということだろう。その反対、上流に向かうとすぐに、スリリングな鎖場になる。登りではなく、ほぼ水平なのだが、左は岩壁、その下に用水路の水が流れ、右はほぼ垂直に沢に落ち込んでいる。歩ける道の幅はとても狭い。左の岩壁に固定されたロープを支えに通過する。

そこからしばらくはそこそこの幅のある山道。相変わらずほぼ水平に進むと、露岩帯に出る。傾斜した岩の真ん中に、狭い棚状の道が続いている。ここから、右下の浅い溝状を辿って、沢に降りてみるとよい。そこはちょっと深い淵になっていて、夏場はよく近くの中学生のガキどもが、水遊びに来て、岩の上から飛び込んだりしている。(そしてあとにしばしばゴミを残していく。困ったもんだ。)沢の中をざぶざぶウェットコースで来ても、当然ここにたどり着く。足を濡らすのを厭わなければ、上の鎖場経由よりも楽で安全だと言えるだろう。

岩を回り込んで、沢は左に曲がっていて、その奥に、石積みの堰堤が滝のように水を落としている。ここもなかなか美しい。

この上流には、ゴルフ場があり、実は水質はあまりよくない。時期にもよるようで、濁って見えるときもあれば、とても澄んで見えるときもある。

さて、この堰堤を直接登るのは困難なので、ウェットコースにせよドライコースにせよ、一旦岩の上に上がる、ないしは岩の上に戻ることになる。先ほど言った狭い棚状の道は、すぐに道ともつかなくなり、傾斜して不安定な岩場を慎重に進むと、堰堤の上で水辺に再び降りる。

そこから奥を覗き込むと、閘門が見える。ここから先も両岸は切り立っていて、水深も膝ぐらいまではある。さらに閘門の直下はちょっとした釜になっていて、泳がないことには閘門にたどり着けない。ウェットコースたるゆえんだ。かつては閘門左手の岩壁にトラロープが張られていたこともあるようだが、今はそれもない。実を言うと、ウェットコースは一度試したものの、完全な沢装備では行かなかったので、この泳がなければならない地点で断念したのだった。そのうちクリアせねば。

堰堤の上で水辺に降りた所、左に水路の一つが流れ込んでいる。ドライコースは、落ち葉もかなりたまった斜面を登り、その水路の上に出て進む。すぐに第二の鎖場。急傾斜の岩場をトラバースするもので、最初の鎖場よりもさらにスリルがある。沢からはかなりの高さがあるように感じる。(水路はこの岩盤の中のトンネルになっている。)

ここを通過してしまえば、ドライコースはあとは普通の山道だと言っていい。

ドライコースの明瞭な道をたどる。途中すぐに右下に分岐する道は、閘門の上に出る道だ。これをやりすごして進んでいくと、沢からはどんどん離れた高いところを辿るようになり、やがて右手に大きな露岩が現れる。先ほどの露岩帯と違って一枚岩ではなく、大きな岩が積み重なっている。ここは休憩に最適。正面から左手の展望が開け、六甲山地が見える。やや川下の対岸には、摩天楼岩?が見える。その上に目を転じると、高圧線の電線も通っているし、仁川高丸の住宅がちらちら見えていて、やや興をそがれるので、そちらは見ないようにする。それさえ見なければ、ずいぶん山深い感じがする。

露岩の右手から下に向かう踏み跡があり、降りていくと、砂防ダムのすぐ上の、平坦で水の浅い流れに出ることができる。ここで徒渉して対岸に取り付くと、そちら側にも道があるのだが、今は措く。

露岩の付け根から左に登っていく道は、甲山森林公園の展望台近くの東屋に突き上げる。上部は夏場は草がかぶっていることが多い。

その道を登らず、さらに水平に、やや下ったり登ったりもしながら進んでいくと、やがて丁字路で、整備された道に出る。これを右に下っていくと、「なかよし池」というなんだかなーという名前のビオトープ池に出る。季節次第では、トンボをはじめ、さまざまな生き物がいる。池には木の桟橋がめぐらされ、奥に大きめの東屋がある。ここも休憩ポイント。

東屋の先の幅広い道をゆるく登っていくと、自動車道に出る。週末に一便しかないバスの停留所がある。車道を右に進めば、なぜかドイツ語で「こんにちは」という名前の山荘風の喫茶店がある。川縁にテラス席もあり、仁川上流の流れを眺めながら、かなり高価なコーヒーが楽しめる。車道をさらに進めば、フィールドアスレチックの跡地、かつて貸しボート屋のあった五ケ池、阪急仁川テニスコート、かつての仁川植物園跡を経て、仁川駅に至る。

先ほど車道に出たところで、やや右斜め前の山道に入る。このあたりは西宮市甲山キャンプ場で、少し登ると広い道に出る。左に登れば甲山自然観察館、右にたどるとすぐにバンガローやテント場が現れる。今は右へ。さらに先、右手は湿原観察園になっている。その金網が切れるところで、右に下る道がある。下っていくと、左手はキャンプ場の炊事場。それを過ぎると、また仁川源流の水辺に降り立つ。二三、テントの張れそうな広場になっていて、沢にはコンクリートのささやかな橋が架かっている。

橋を渡って、ほぼ正面の奥に、階段がある。登り切ったところは水平な道で、その道を塞ぐように小さな金網フェンスが立てられている。道の山側には側溝状の水路がある。左にそのまま沢沿いに進んでも先で合流するが、小さな木橋で水路を渡り、正面の道に入る。

しばらく進んで、右手に気をつけていると、ザレた露岩の登り口がある。ここから取り付く。下から上までザレた急斜面で、途中にはロープも設置されている。あたりにはツツジが多い。ほぼ登り切ったあたりに大岩が現れ始める。突き当たりの大岩には、なぜかスマイリーが描かれている。左に少し行くと、大岩の折り重なった場所があり、短い固定ロープにすがって大岩の上に登る。このあたりが、ロックヒルと呼ばれる場所。真正面に甲山がでんとそびえている。ここは甲山を眺めるには最高の場所だと思う。休憩ポイント。

元のザレた斜面を下るのは難儀なので、大岩からさらに西に向かう道を辿る。途中、左に入る道を選んで下ると、山裾の水平道に出る。左に向かえば、元の場所に出る。先ほど沢から上がってきた階段とフェンスの箇所で、そのまままっすぐ進めば、喫茶店の近くで車道に出る。

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6月のジャングルジム(樫ヶ峰)

6月19日、梅雨の晴れ間、久しぶりに樫ヶ峰へ。 エデンの園でバスを降り、まず逆瀬川右岸の山麓の小径を辿る。日蔭で、薄い黄土色の蛾が無数に飛び立つ。東尾根から取り付き。ここは下りてきたことはあっても登りに使ったことはなかった。西隣の痩せ尾根を登っている年配の男性の姿が見えた。途中、樹林が切れて尾根が撓んだところに、以前、東に降りる道があったような気がして、そこを探索するつもりだったのだが、判然としない。そのまま馬の背まで上り詰めてしまった。

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馬の背から六甲の主稜線を望む。

稜線を西に進む。痩せ尾根を登ってきた男性とすれ違う。その先どう歩くか決めていなかったが、こちらは登ったことしかなかった痩せ尾根を下ることにする。ザレて急な道を、滑らないように注意しながらぐんぐん下る。ハンミョウやルリタテハまで見かけた。

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痩せ尾根の下り。

涸れ谷に下り着いて、山麓の小径を少し戻り、今度は「林間コース」から登ることにする。このコースは樫ヶ峰に登る道の中では少し長め。急登が終わって樹林の中の緩やかな道になり、少し登り返して枝尾根に乗る。最後にまた急登があって、樫ヶ峰のピークの西側で主稜線に出る。今日の目的の一つはササユリの花だったが、この尾根に出る直前で一本、もう萎れかけた花があったきりだった。

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萎れかけたササユリ。

樹林に囲まれた樫ヶ峰の頂上で暫し休憩。展望のない頂上から東に進むと露岩帯に出て、急に展望が開ける。今までこの道は逆方向でしか歩いたことがなかったので、この展開は新鮮だった。甲山、大阪平野。少々もやっていて金剛山までは判然とは見えなかった。それでも、静かでアダージョな山頂からこのアレグロな展望への移り行きはとてもいい。キタテハが舞っていた。

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樫ヶ峰東の露岩帯からの眺め。正面は甲山。

主稜線東端の丁字路に着いて、右へ、「仁川・ゴルフ場」方面に到るという道を歩いてみることにする。山歩きのブログなどを見ても、このコースを歩いている人はあまり見当たらない謎の道だ。ゴルフ場に出たらどうなるのか。以前、宝塚の惣河谷支流を遡って、ゴルフ場に迷い込んだことがあったが、あれはあまり愉快ではなかった。

道はとてもはっきりしている。黒いプラの階段が整備されてもいる。と思ったら高圧線の鉄塔下に出た。これの管理用の道なのだろう。 しかしそこから先の道も明瞭なものだった。やがて周囲は灌木のみの、陽当たりのやたらいい下り道が長く続く。

平坦になり、樹林の中に入ると、あれほどはっきりしていた道が突然不明瞭になった。しばらくは赤や黄色のテープがあったがやがてそれも見失い、浅く小さな沢が流れ出すところに出た。 少しその左岸に沿って進んだが、明らかにコースを外れている。GPSで確認すると、沢の向こうのすぐ西に、ゴルフ場内の道路が通っているようだ。

沢を渡り、右岸の斜面をよじ登ると、車道が見えた。草をかき分けて、舗装道路に出る。後でGPSの記録と地形図を突き合わせて見たら、道路に出る直前、自分が歩いたのよりも少し西寄りに、破線の道が描かれていた。どこかで見落としていたようだ。 両側は樹林の道路で、車は通らない。どうやらゴルフ場の外周を回り込む管理用の道路らしい。やがて右側に高い網に囲まれた広いグリーンが出てきた。ゴルフに興じている人たちが遠くに小さく見える。途中、低い鉄のゲートがあって、乗り越えて進む。つまり普段は車も入らない道だということだ。

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ゴルフ場管理道のゲートを振り返る。

地図ではこの道はクラブハウスの前を通るように見えたが、道なりに歩いていくと、ずっとゴルフ場の外側をまわり続けて、やがて管理用の倉庫のような建物が並ぶ一角に出た。ツナギで働いているオジサンが何人かいたが、何も言われなかった。ゴルフ場の通用門?から一般道に出る。盤滝口と宝塚西高校を結ぶ道路。人が歩くことを想定していないようで、路肩が狭い。しかもかなりの量の車が通る。登山地図には「通行注意」と書かれている。 数分歩くと宝塚西高校、13:25頃。バス待ちの間、ふと足元を見ると、ソックスや靴紐に無数のオナモミの実が付いていた。あのわずかな藪漕ぎの間に付いたらしい。毟っているうちにバスが来た。

これで樫ヶ峰の登降路12本目、制覇。

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霊仙山 (1094m/1083m)

6月1日、友人二人と。いい山だった。陽射しの強い時でさえなければ。

谷山谷、大洞谷の道は、近年の嵐で荒れて閉鎖されているという情報をネットで見て、JR彦根からタクシーで今畑まで入り、榑ヶ畑に下る計画を立てた。季節によってはヒルが多いという霊仙山、そろそろその時期のはずだが、ほとんど谷を通らないこのコースなら出くわす可能性も低いだろう。

6:39分大阪発のJR京都線快速で、9:20彦根着。駅舎の外側にはコンビニもある。タクシーもそこそこの台数が循環してくる。今畑までは5000円弱だったと思う。登山口で降りる。周囲には、朽ちかけた木造の小屋がいくつもある。廃村。山道を少し登ったところにも、石垣と家屋がある。家屋の間のちょっとした広場のようなところに梅の木があって、小さな実をたくさんつけていた。さらに少し登ると、墓があって、ちゃんと花が手向けられていた。

杉の植林帯をぐんぐん登っていくと、笹峠。初めて南側の展望が開ける。御池岳、藤原岳が望まれる。ゆるく撓んだ鞍部に、ガマズミがクリーム色の花をいっぱいに付けている。もっと早い時期なら、ヤマシャクヤクもたくさん咲く場所らしい。明るくて、木蔭もあって、とても気持ちのいいスポットだった。

しかしその後が地獄だった。笹峠の先、標高850mぐらいが森林限界になっている。カルストの山は全般に森林限界が低いようだ。つまり樹木はほとんどない。笹峠から近江展望台と呼ばれる小ピークへは、わずかな草ばかりがちょろちょろと生え、石灰岩がゴロゴロしているやたら幅広い急斜面を、延々と登り続けることになる。広い斜面は踏み跡が錯綜していて、とにかく上を目指す。ここを下る場合は迷いやすそうだ。暑い。途中に、ぽつんと立って花を付けているガマズミがわずかな木蔭を作っているところがあって、そういうところに駆け込んで休憩する。急激に開けてくる展望だけが救いだ。霊仙山は鈴鹿山脈の北端。次第次第に、鈴鹿の山々や琵琶湖が見えてくる。斜面の上の方は、次第に傾斜を緩めたいくつかの段になっていて、つまり、ああもう近江展望台かなと思って登り詰めると、その先にさらに斜面が見えてガッカリする仕掛け。ウスバシロチョウがやたらに舞っている。人の近くをひらひらと飛びながら、近くにとまって羽を広げてくれることはほとんどないので、写真が撮れない。なんだかおちょくられているような気分だ。

ようやく近江展望台に着いて、長めの休憩をとる。これで霊仙山西南稜の尾根の上に乗ったわけだ。北側斜面にはガマズミやオオイタヤメイゲツ?などの木々が生えていて、その木蔭に入る。

ここから先は、一気に傾斜がゆるくなる。すでに最高点・三角点の山頂も見えている。北側のいかにもカルスト的なゆるい谷は疎林になっている。だが登山道は、むき出しの尾根の上か、南側を通る。急斜面はなくなったが、石灰岩がゴロゴロしていて、歩きにくいこと甚だしい。梅雨入り直前の太陽にガンガン照りつけられながら、南面に開けている眺望だけを慰めに、歩き続ける。歩きながら思ったのは、この山はもっと早い時期、4月ぐらいの、まだ陽射しも弱い時期に来るべき山だったのだ、ということだ。その頃なら、福寿草の群落も見られたことだろう。

霊仙山最高点直前の疎林で休憩。この先に日蔭がないことは火を見るよりも明らかだ。山頂付近はもともと笹原だったらしいが、今はそれもない。ようやく最高点に着く。しかし一気に三角点まで行ってしまうことにする。霊仙山の山頂部は、ゆるい傾斜の中に、三つのピークがある。この最高点ピーク、三角点のある少し低いピーク、その北側の経塚山。いずれも石灰岩のかけらに覆われていて、日蔭はない。

三叉路になっている小ピークに登り、左に取って、ほんのわずか下って登り返すと三角点。ここで大休止にしようかと思っていたが、やはり日蔭に入りたい。三叉路に戻って、さらに一気に経塚山の東側を目指す。かなりヘタっていたので経塚山のピークは巻いてしまった。避難小屋の方を目指し、その手前のわずかに樹木の生えているところで大休止。

経塚山の北側を回って、榑ヶ畑への道に入る。三角点北側のゆるい谷。もう下るだけのようなつもりでいたら、谷の反対側に登り返し、そこにお虎が池があった。相変わらず陽射しがきつい。さらに小さなピークを経て、急下りになるとまもなく、ようやく樹林帯に入った。

満開のタニウツギの花などを眺めながら、汗拭き峠へ。そこから少し下ると、「かなや」という休憩所?があり、それ自体は閉まっていたが、その前が、清水に冷やされた飲料水類の無人販売所になっている。一本戴いて、金属の箱に代金を入れる。ここでこの商売は、上手いと思うし、ありがたい。

それから榑ヶ畑の廃村跡の石垣を見ながら歩いて行くと、まもなく登山口。薄汚れた休憩小屋があり、林道に出る。林道は延伸工事中のようだった。

そこからの車道歩きが長かった。一時間後、醒ケ井養鱒場前に着いて、バスはもうなかったので、タクシーを呼ぶ。醒ケ井駅にはすぐに着いた。

JR醒ケ井駅は無人で、切符も買えず、ICカードも使えない。米原で乗換え、南草津で降りたとき、駅員に告げて、醒ケ井からの運賃を現金で払う。

南草津で降りたのは、例によって温泉が目的。駅から歩いて10分足らずの極楽湯南草津店

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iPhoneなどで使う登山地図・地形図

昭文社が「山と高原地図」のiPhone版を出したのは2012年4月だった。以来、使い続けている。書店に出ている紙版というかユポ版と同じ山域ごとに、アプリ内で購入する。別冊の冊子や広域地図がないぶん、少し安くなっていて、一地域¥500。マイナス面は、紙版と同じ山域しかカバーしていないから、マイナーな山では使えないこと、元地図の縮尺が1/50000だったりして、等高線の目が粗いことがあり、微細な地形が分かりにくい場合があること、赤線で示されている登山道のラインがときどき怪しいことぐらいだ。プラスなのは、基本動作はしっかりしているし、過去に購入した地図は、古い版であっても再ダウンロードすることができること。カバーされている山域を歩く時は、このアプリでGPSログを取っている。GPSロガーとしての性能も、概ね満足できる。

しかし「登山地図」ではなく「地形図」も使いたい。過去にいくつか他のアプリを試したが、数値地図を購入しなければならなかったり、自分でいちいち地図を用意しなければならなかったりなどで、使うのをやめてしまった。現時点でのベストはやはり FieldAccess だろう。オンラインの国土地理院地図を取得して表示してくれる。予めキャッシュしておけば、携帯の電波の届かない山中でも使える。

僕個人の使い方としては、上で言ったように、「山と高原地図」がカバーしている山域では「山と高原地図」を使い、GPSログもこれで取っている。登山地図には登山地図なりの情報の多さというものがあるからだ。細かい地形を確認したい時は FieldAccess を立ち上げる。下山後、「山と高原地図」で取った記録はエクスポートして、FieldAccess に読み込ませる。「山と高原地図」上では太いアバウトな線で見えているトレースも、実はかなり細かく記録されていて、FieldAccess上で確認するとそれが分かる。

最近、Android使いの山歩き初心者の友人のために、同様のアプリを少し探した。「山と高原地図」はAndroid版も出ている。地形図用には、「山旅ロガー&地図ロイド」というとてもAndroidらしい名前のアプリがあるようだ。FieldAccessの作者の方は、Android版を作る予定はないという。「実は作ろうと思ったことはあったのですが、FieldAccessを作成する上で一番重要視してるのが地図操作のレスポンスと地図描画速度で、iOS阪と同等の操作感、描画速度を現行のAndroid機上で達成するのは不可能と判断し、断念しました」とのこと。

そしてAndroid上の「山旅ロガー&地図ロイド」とiPhoneの FieldAccess を使い比べた方があって、「iPhoneの(方)がはるかに正確にトレース」するという。うーん、Android使ってGPS取っていたから遭難しちゃったなんて人がこれから出てきちゃったりするんだろうか。まあ、いくらなんでもそこまでひどいことはないだろう。というわけで、友人には「山旅ロガー&地図ロイド」を薦めておくことにした。

iOSだろうがAndroidだろうが、海外に行った場合に山用の地図アプリとしてはどれがいいか、また話が別になるだろう。数年前にウィーンにいて、ウィーンの森を歩き回ったときは、オーストリアの通信会社のSIMを挿すためにiPhoneを脱獄した。そうしたらなぜかGPSが効かなくなってしまったこともあって、あまり試せていない。そのうちまた機会があったら色々試して、報告したいと思う。

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品谷山と廃村八丁+鞍馬温泉

4月末の金曜、ずっと気になっていた京都北山の廃村八丁へ。加藤芳樹『関西周辺週末の山登りベスト120』で知り、草川啓三『極上の山歩き』(これはガイドブックとしてはやや不親切なところもあるが、とても美しいよい本だ)が取り上げているのを見るに及んで、どうしても行ってみたくなっていた。

朝5時起き、十三経由で京都に向かい、烏丸で地下鉄に乗り換えて北大路へ。そこから広河原行き8:02のバスに乗る。バスは出町柳始発で、出町柳まで行かなければいけないと思い込んでいたのだが、最近ようやく路線バスにも対応した乗換案内アプリで調べたら、北大路からの方が時間的にも少し有利なのだった。平日、始発駅で既に満席ということもない。(休日は登山客で一杯になるのかもしれない。)

実用情報:北大路の地下鉄の改札を出た所にコンビニ風の売店があり、食糧や飲料が調達できる。登山口の菅原には店も自販機もない。地下鉄からの出口は5番がバス停直近。地上に出て、すぐ右の角を曲がった先がバス停。京都市バスと違って、京都バスはICカードが使えない。出町柳から乗るのならば、バス停奥の窓口で予め乗車券を買ってしまうことをお奨めする。

少し先のバス停から大勢乗り込んで来はじめた。バスはしばらく賀茂川沿いに走り、原峠を越えて鞍馬に入る。その途中、大学の前で、大部分は降りて行った。ほとんど学生だったようだ。

鞍馬から先は数人の乗客。その辺りから、小さな、しかし耳に付く音で、延々とグリーンスリーヴズがループで流れ始めて止まらない。気が狂うかと思った。二つ前の席の、登山客風のおじいちゃんが怪しい。携帯か何か、電子機器の操作を誤って、しかも耳が悪くて気づいていないのではないか。しかし途中で彼が降りてしまってからも、音は続いた。濡れ衣だった。鞍馬温泉から先はいわゆる自由乗降区間で、途中で乗ろうとする人にバスの到着を知らせるためなのだろう、バス自体が外に向けて発している音なのだった。ちなみに鞍馬から先の道は、若狭街道と呼ばれているらしい。

バスは杉林の中の九十九折の道で花背峠を越え、花背の集落に入る。明るくて、静かだけれども寂れた感じはない。辺りはちょうどまだ桜が満開だった。

別所川沿いの道。こんな奥に北向きに流れている川だから日本海に注ぐのかと思ったら、途中で桂川に合流するのだった。桂川は周山・亀岡方面をぐるりと回り込んで、京都市内に到る。どうも北山の地理が把握できていない。

終点の少し手前、菅原に9:40頃着。橋を渡って西に進む。このあたりも小さな集落で、数軒の立派な屋敷が建っている。

菅原バス停付近。

菅原バス停付近。

川沿いに進む。杉の植林帯。道の脇には、ミヤマカタバミが白い花を付けている。

ミヤマカタバミ。

ミヤマカタバミ。

最後の人家を過ぎ、白いガードレールのついた橋を渡ると、土の道になる。新しめの丸木橋を渡り、小さな枝谷を渡ると、またすぐに沢が二股に分かれている。右が仏谷で今回のコース。ここで、沢コースと尾根コースに分かれているのだが、行きには尾根コースの入り口には気付かなかった。この二股を右に入ってすぐのところ、左に踏み込むのが尾根コース。尾根コース自体は明瞭な道だが、この入り口は分かりにくい。

沢コースの入り口。尾根コースはここを左に入る。

沢コースの入り口。尾根コースはここを左に入る。

沢コースは、最初はヘンに幅の広い林道風だが、やがて踏み跡も定かではなくなる。倒木がかなりあり、やや荒れている。狭い谷で、大きな滝はなく、水量も少なめなので、とにかく沢筋を詰め上がっていく。水は見た感じではとてもきれいだ。

ダンノ峠への沢コース。

ダンノ峠への沢コース。

源頭近く、左の樹に赤いリボンが結ばれているのを見つけ、そこから尾根の側面を登る。尾根の上まで出ずに、山腹を巻いている尾根コースらしき道に合流する。

赤い布帯の目印。

赤い布帯の目印。

そこからジグザグに登っていくと、ダンノ峠、標高760m。10:40。

ダンノ峠。

ダンノ峠。

反対側に疎林の中を下っていく道が廃村八丁への道。右に急斜面を登っていく踏み跡が、品谷山への尾根道。ダンノ峠を起点とした周回コースは、左回りの方が道が分かりやすいとどこかで読んだので、右に踏み跡をたどる。最初はかなりの急登。そこかしこにタムシバの白い花が目立つ。尾根道が左に曲がる最初の小ピークのあたりで、イワウチワの群落に気付く。丸い、緑や、紅葉したような赤っぽい葉ばかり。やがて花を付けているものも徐々に出てきた。薄いピンクでフリルのついた、丈のわりに大きな花、雄蕊が妙に目立っているし、どことなく卑猥だ。いや、キレイなんだけれど。

イワウチワ。

イワウチワ。

最初のピークを過ぎると、それほどきつい登りはなくなる。ただし概ね踏み跡ははっきりしているとは言え、地形図の確認が不可欠だ。特にいくつかのピークでは、そこから先に進むべき尾根がどの方角なのか、確かめる必要がある。逆コースで歩いて道に迷い、夜の八時にようやく下山して、山麓に住む人に京都市街まで車で送り届けてもらった、という話をネットに上げている方があった。

ところで、出発点からダンノ峠までは左京区、峠の西側は、品谷山の尾根を挟んで北が南丹市、廃村八丁を含む南が右京区であるらしい。右京区左京区ってこんなところまで及んでいるのだった。やっぱり京都の地理は分からない。

コース自体は、あまり派手な展望はないが、明るい自然林の、とても気持ちのよい道だ。ブナ、アシウスギ、ドングリ類(←大雑把)。この時期目立つのはやはり、木の花ではタムシバ、草の花ではイワウチワ。時季がずれているのか、イワカガミは見かけなかった。

タムシバ。

タムシバ。

尾根道にて。その1

尾根道にて。その1

尾根道にて。その2

尾根道にて。その2

地味だが気持ちのよい品谷山(881m)山頂に12:05着。少し休憩。

品谷山山頂。

品谷山山頂。

南西方向、品谷峠への下りにかかる。地形図で品谷峠と書かれている鞍部からもう一つピークを越えて下った先が本当の品谷峠だ。品谷山から約20分。ゆるやかな曲面の、明るい広場のような場所。ブナ林になっている。北向きの斜面には、少しだが雪が残っている。木の間越しに北西側の展望が少しある。大休止。(いや、一つ手前の峠からも下れるのかもしれない。草川啓三氏はそのように書いている。)

ブナ林。

ブナ林。

品谷峠。

品谷峠。

13:05に出発。峠からスモモ谷へ、乾いた広い谷を下っていくと、少し急になって、ロープが設置されている。それを伝って降りると、左から枝谷が合流する。こちらが本流かもしれない。一つ前の峠から下れたとすれば、ここに出てくるはずだ。この沢には水が流れていて、ここから沢下りになる。

品谷峠からの下り始め。

品谷峠からの下り始め。

何回か右に左に徒渉する。雨後なら違うかもしれないが、水量は多くはなく、特に足を濡らすこともなく歩ける。

スモモ谷。

スモモ谷。

途中、右からのもう一つの枝谷を見て、さらに下っていくと、石垣が現れ、廃村八丁に着く。13:50。刑部谷を、差し渡された丸太を支えに徒渉する。昭和8年の豪雪で村民は離村を余儀なくされ、昭和11年に廃村になったという。雪さえなければ、とてもいい土地だ。

あとで調べたら、廃村八丁の歴史にまつわる、とても興味深い、とても読みにくいサイトがあった。

廃村八丁に到着。

廃村八丁に到着。

ネットでは色々な方がお書きになっていて有名な、廃村八丁の「村長」氏がいて、挨拶する。ピラミッド型の小屋の脇には、テントも張られていた。採ったばかりのアマゴを見せてくださった(食べさせてくれる気配はなかった)。この先、刑部谷沿いの道の様子を尋ねて、早々に再び歩き出す。

村長氏のアマゴ。

村長氏のアマゴ。

道は問題ないという話だったが、そもそもこのコースも「経験者向け」レベルだった。適当なルートを選んで徒渉を繰り返す必要がある。その一か所には、サポート用にロープが張り渡されている。村長氏によるものらしい。

ロープの張られた徒渉箇所。

ロープの張られた徒渉箇所。

しかしこの沢も、雨後でなければ、特に足を濡らすこともなく済む。季節によってはヤマヒルが出るようで、ヒル除けスプレーも用意していたが、まだ早いからだろう、見かけなかった。そしてこの沢筋にも、イワウチワが多い。

四郎五郎谷を左に分け、さらにしばらく進むと、沢は左右に分かれる。左が本流で、小さな滝がかかっている。その左に、高巻き道がある。

最初の滝。

最初の滝。

もう一つ、見事な滝が現れる。水が二段にX字Y字に流れている。じゃぶじゃぶ行けば直登できそうだったが、これも巻く。

X字Y字の滝。

X字Y字の滝。

巻き道途中の桟橋は朽ちかけているが、通行に特に問題はない。

朽ちかけた桟橋。

朽ちかけた桟橋。

少し行くと、再び沢が左右に分かれて、その左の沢に入ってすぐのところに、ようやく刑部(ぎょうぶ)滝が現れる。14:35。

刑部滝。

刑部滝。

村長氏は、直登も可能だ、ロープも付けてある、とおっしゃっていたが、下から見上げてもそれらしいものは見えない。直登は諦め、左右の沢の間の尾根のとんでもない急斜面を、トラロープや木の根にすがりながら這い上る。滝よりも相当に上まで巻き上がるので、この登りが、今回、登りとしては、一番ハードだった。これだったら直登できればその方が楽かもしれない。あたりにはシャクナゲが多く、つぼみが丸くふくらんでいる。

刑部滝を巻く急登。

刑部滝を巻く急登。

ようやく急登を終え、一息ついて、急斜面の山腹のうっすらとした踏み跡を、ゆるやかに谷に戻る。このあたりもイワウチワだらけ。上の谷はなだらかだ。つまりこの沢は、刑部滝から下のほんのわずかな区間だけ、急傾斜になって滝をかけているわけだ。降り立ったところは広い河原になっていて、同志社大学の小屋が建っている。

広々とした谷。

広々とした谷。

広くて平坦な谷をダンノ峠に向かう。

谷の桜。

谷の桜。

すぐに谷は二股に分かれるが、左が正解。その次の二股は右へ。まばらな林になっている道をゆるやかに登っていくと、ダンノ峠に帰り着く。15:20。大休止。ダンノ峠の南側の斜面にもイワウチワの群落があることは、行きには気付かなかった。

ダンノ峠からの下り、今度は尾根筋のコースを行く。道ははっきりしている。意外にも、この尾根筋にもイワウチワはいくらでも咲いているのだった。それもかなり下の方まで。シャクナゲもちらほら。しかしここを登ったらきつそうだ。登りは沢コースからで正解だったと思う。

朝来た道を戻り、人家の現れる直前でもう一度休憩し、沢の水をペットボトルに詰める。

16:30。菅原バス停に着いたものの、最終にして次の、5時半のバスまではまだ一時間以上ある。山の中でもう少しゆっくりしてくるのだった。こんな、京都から見れば山の奥の奥の奥で終バスを逃したらエラいことだし、初めてのコースではどれくらい歩程がかかるものか不安だし、途中で山メシも作らず(用意はしていたのだが)、歩き続けてきて、ちょっと早すぎた。バス停脇の橋の袂でしばらく座り込んでいたが、山間のことで、もう日が翳ってしまった。じっとしていると冷えそうなので、バス道を少し先まで歩くことにする。途中、道路脇には、スミレの群落があったり、この山中では見なかったツツジが咲いていたりした。

バス道途中の風景。その1

バス道途中の風景。その1

バス道途中の風景。その2

バス道途中の風景。その2

バス道脇、スミレとキランソウとイタドリのミニ寄せ植え状態。

バス道脇、スミレとキランソウとイタドリのミニ寄せ植え状態。

下の町バス停を過ぎ、能見口バス停に17:10に着いて、ここでバスを待つことにした。川の向こうには、廃校となった小さな小学校がある。堰源小。あまり古いものではなさそうで、川縁にプールまである。廃校の哀しさというのは独特のものがある。まあ、今現在、少子化によって、世を挙げて廃校化しつつあるとも言えそうだが。

廃校。

廃校。

やがて、行きとは違う音楽を流しながら、バスが来た。乗り込んで、約一時間、花背峠を越えたところの鞍馬温泉で途中下車。ここの露天風呂はシンプルだが空が広く、山を眺めながらゆったり浸かれることを、以前来て知っていた。

鞍馬温泉。

鞍馬温泉。

数人の入浴客は外国人ばかりで、スペイン語をしゃべっていた。湯で筋肉をほぐしたあと、食堂で釜飯。北山周山の方で作っているらしいKölsch(もともとはドイツのケルンの地ビールのことだ)を称するビール。(しかしこの醸造所のサイト、なんでアドレスがビールでなくて熊──それとも我慢する、耐える?──なのか。そしてなぜÖは大文字なのか。)フロントで尋ねると、最近は外国人客が多いという。すべて泊まり客だそうだ。食後、送迎バスで、叡山電鉄のいつのまにか無人駅となっていた鞍馬駅まで送ってもらい、いつのまにかワンマンカーになっていた電車に乗って、出町柳へ。京阪で祇園四条へ。河原町から阪急に乗って帰宅。

いい山だった。

本日の脳内ループ音楽:最初はバスのせいでグリーンスリーヴズ、そのうちいつの間にかサンサーンスのヴァイオリン協奏曲第3番の第2楽章に、それからバッハのヴァイオリン協奏曲第2番の第2、第3楽章に変わっていた。

追記:

三週間後の五月中旬、今度は友人二人とともに、ほぼ同じコースを逆回りに辿った。土曜だったので、出町柳からバスに乗った。正解だったようだ。増発の出る坊村方面行きほどではないにしても、この始発駅から、バスは満席だった。

山麓の桜もさすがに終わっていた。あれだけ咲いていたイワウチワの花は一つもなくなっていた。タムシバも、ミヤマカタバミの花も消えていた。そのかわり、刑部滝や廃村の周辺には、前回には咲いていなかったシャクナゲがまだかなり咲いていた。また、品谷山の尾根の一か所、866mピークのあたりで、前回は見られなかったイワカガミが群生しているところがあった。

iwakagami

イワカガミ。

ダンノ峠から左へ、右回り。それも、谷をすぐに降りていくのではなく、草川啓三氏が書いている、峠から南にピークを一つ越えたところから西に谷を降りた。しかしこの尾根上には踏み跡はあるものの、谷を降りる道は分からず、道のないところを無理矢理下って峠谷に出た。

刑部滝への下りは、前回逆コースで這い上った尾根末端の道、桂谷と奈良谷の間の尾根末端の道ではなく、急下りにかかる直前、尾根の先のわずかなピークの手前、ささやかな鞍部から左に下る道を採って、奈良谷に降りた。どうやら、前回登った尾根末端の道こそが、村長氏がおっしゃっていた道であったらしい。そしてこの奈良谷につながる道が一般的であるらしいのだが、こちらの道も途中かなりの急斜面で、どちらが楽とも言えない気がした。

谷筋では、今度こそヒルが出るのではないかと怖れていたが、杞憂に終わった。北山のなかでも、ずっと南の魚谷山などでは4月からヒルがいたという記事を読んだが、ずっと北のここでは出てくるのが遅いのだろう。

村長氏は不在だった。スモモ谷最後の二股は、これも通常の左股ではなく、草川氏の書いている右股を登ることを考えていたが、枝がかぶさっていて、行けたとしても時間がかかりそうだったので、断念した。右股で行ければ、尾根上のピークを一つやりすごすことができるので、その点は有利なはずだが。

後半部に品谷山への登りがくるのはきつかった。やはりこのコースは尾根から品谷山を通って廃村八丁に降りる左回りの方が、楽でもあるようだ。また、言われているように、右回りの方が、尾根上のルートがより分かりにくくなる。左回りだった前回はまったく迷わなかったが、866mピークのあたりで、実際、道を外しかけた。幸いすぐに修正できたが。

ただ、右回りの今回、刑部滝がちょうど昼頃になった。狭い谷の中でほぼ南を向いているこの滝に、ちょうど日が当たって輝いていた。左回りでこの時間にこの滝に着くのは、よほど早起ちしないかぎり無理だろう。

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逆瀬川から東六甲縦走路

どうもオフに早起きできず、遠出ができない。かわりに近くに出かけることになる。この前は羽束山だった。今日は久しぶりに逆瀬川裏山探検隊。隊って一人だが。

エデンの園から東六甲縦走路へ

エデンの園バス停から歩き出して逆瀬川沿いに進み、途中から東六甲縦走路に上がる。同じようなコースを、昨年にゃみさんたちと探検隊をやった時は、手前の谷から藪漕ぎをし、ガレ場を横断して無理やり登ってしまった。それはそれで面白かったが、今度は正しい踏み跡?を辿ることにする。

コバノミツバツツジが多いが、これは別の種類と思われる。

コバノミツバツツジが多いが、これは別の種類と思われる。

通るたびに気になる、妙な所に打ち捨てられた車。

通るたびに気になる、妙な所に打ち捨てられた車。

逆瀬川左岸の道。

逆瀬川左岸の道。

アラカルートさんが紹介なさっている目印の水管というかホース。

道を横切るホース。

道を横切るホース。

このすぐ手前に右に入る踏み跡があり、木の幹にテープが巻かれている。

縦走路に上がる道の取り付き。

縦走路に上がる道の取り付き。

少し行くと石積みの小さな堰堤を越え、谷の中に入る。水はない。谷通しに登って行き、低い石積み堰堤をいくつも越える。ロープの下がっている堰堤もある。落ち葉が分厚く、足跡はほとんど分からないが、随所に赤テープがある。

石積みの堰堤。

石積みの堰堤。

振り返ると樫ヶ峰が見える。

振り返ると樫ヶ峰が見える。

ヤブツバキとコバノミツバツツジ。

ヤブツバキとコバノミツバツツジ。

やがて涸れ滝のような壁に行き当たり、右に巻くルートにロープが張られている。

巻き道。

巻き道。

越えてなおも谷筋をしばらく行き、それらしいテープのあるところで右に尾根を目指す。

このあたりから尾根を目指す。

このあたりから尾根を目指す。

ここの道はよく分からなかったが、とにかく尾根に乗ればいいことは分かっていた。なんとかたどり着いて、見覚えのある道に出た。尾根通しにしばらく登るとやがて平坦になり、すぐに東六甲縦走路に出る。

アセビ。

アセビ。

岩原山

縦走路を宝塚方向へタラタラ辿る。細ヶ谷の上部で縦走路が右に屈曲する所に、真っ直ぐ入っていく道がある。明瞭な踏み跡で、ずっと斜めに山腹を登っていく。やがて尾根の上に出る。岩原山から西にのびる尾根。尾根の上には、山頂方向にも、下る方にも、明瞭な道がある。下れば蓬莱峡に出るのだろう。ゆるい登りを、岩原山山頂に向かう。

岩原山山頂には、石が積まれて、「宝塚市最高峰」と書かれた標柱が立っている。573m。眺めはないが暗くはなく、それなりの広さのある静かな山頂だ。「山のゴボ天ソバ」(『シェルパ斉藤の元祖ワンバーナークッキング』のレシピ)を作って大休止する。

岩原山山頂。

岩原山山頂。

昼食。

昼食。

南東に向かう道をつたって縦走路に戻る。途中、タムシバの花びらが散り敷いている。

タムシバの花びら。

タムシバの花びら。

縦走路は、やはりそこそこ人が歩いている。

縦走路わきの花その1。

縦走路わきの花その1。

縦走路脇の花その2。

縦走路脇の花その2。

縦走路脇の…桜かな?

縦走路脇の…桜かな?

右に登る踏み跡を見つけて、譲葉山にも寄ってみる。縦走路の北側ではなくて南側のピークだ。展望もなく、地味な山頂だった。同じ道を縦走路に戻る。

譲葉山への入り口(右)。

譲葉山への入り口(右)。

縦走路

道の北側に高圧線の鉄塔の立つところ(赤子谷左股を詰めるとここに出てくる)で、ちょっと南に入るはっきりした道がある。ここは甲山から大阪方面の眺めがとてもいい。電線が視界を横切っているのが玉に瑕。

高圧線鉄塔南側の眺め。

高圧線鉄塔南側の眺め。

縦走路が岩倉山の南面を巻いて東に出たところの道標に、右方向を指して「この先展望良」と書かれていたので、寄ってみる。展望がいいというのは、電波反射板の下のことらしかった。展望自体は先の鉄塔のそばの方がいいが、電線がないのがこちらの利点だ。ここからも逆瀬川に下れるらしい。

縦走路を先に進む。砂山権現に立ち寄り、塩尾寺へ。砂山権現から先は、ザレた道に変わる。

砂山権現。

砂山権現。

塩尾寺から宝塚まで、公式の縦走路は舗装道路になってしまう。それを避けたかったので、不動滝経由の道を歩いてみることにする。この道は、にゃみさんの『六甲ショートコース77』で紹介されていて気になっていた。

塩尾寺〜不動滝〜宝塚

しかし『ショートコース77』の記述は宝塚からの登り方向になっていて、下りに使う場合の入り口の記述は詳しくない。本を持参してはいなかったので、とりあえず塩尾寺(えんぺいじ)の境内に入る。するといきなり黒犬に吠えつかれたので、地図の確認もそこそこに、境内から右に下れそうなところを下ってしまった。少し進んで、これは違うなと思う。道らしいものもすぐに消えてしまった。不動滝付近で沢が二股に分かれる、その間の尾根を下るはずだが、現在地はずっと南東に寄っている。戻るのも癪なので、塩尾寺の下の谷の上部、土はぐずぐず、竹やら何やらが倒れ、トタン板や粗大ゴミもちらほら転がっているひどいところ(もちろん道はない)を無理やり横断する。どうにか正しい尾根にたどり着く。昔の裏参道だそうで、半ば土に埋れた石段が続き、道は割合はっきりしている。

帰宅後『ショートコース77』の記述を確認してみたら、(登りの場合)「塩尾寺の一段上の小ピーク」に出ると書かれていた。してみると、塩尾寺よりも手前で、左に入る踏み跡があった、あれが正しい入口か。

小尾根の先におりていくと、道は右に曲がり、石段もなくなって、そこからジグザグの急下降になる。左の沢におりて渡り、巻き道のような道を通っていくと、不動滝が右手に現れる。5mくらいだろうか。滝の下には簡素な差し掛け小屋の中に小さな仏像が置かれている。滝の落ち口には古い木の樋のようなものが挿してあって、水はその樋の先から落ちている。行場になっているそうで、そのままでは水が岩壁を伝って落ちてしまう滝、こうでないと水行ができないということなのだろう。やや腑に落ちないものが残った。

不動滝。

不動滝。

滝の少し下には洞穴があった。さらに先にはバラックが二軒。人が住んでいるのかもしれない。瀬音の爽やかな沢に沿った道で、すぐに緩やかになるが、なんとなく荒れた雰囲気もあった。道の脇には、ところどころシャガの群落がある。

シャガ。

シャガ。

小さな木橋を渡り、道が沢を離れて右に登るとブロック塀に囲まれた人家が現れ、舗装道路になる。道路がぐるっと回り込んでいくところで、右上にあるはずの妙法寺の参道なのだろう、自動車道並みに広いけれども岩と土がデコボコの近道が左に下っている。そこを降りると「長寿が丘」の住宅地に飛び出す。正面に、中山の意外に端正な姿が見える。住宅の中の急坂の舗装道路を下り、右に曲がり、左に曲がると、正面に駅近くの巨大なパチンコ屋の看板を眺めながらの下りとなり、やがて武庫川の両岸に聳える巨大高層集合住宅群の下に出る。川沿いの車道を歩き、S字を描く宝来橋を渡って阪急宝塚駅へ。

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