六甲赤子谷〜行者山

六甲赤子谷に行った。かなり前に2回ほど行っている。そのときは一本松あたりまでバスやタクシーで入って歩き始めたが、そこからグラウンドの間を通ってアプローチする車道が閉鎖されている、と根岸真理さんの『六甲山ショートハイキング77コース』には記されている。はて、あの道は以前からゲートがあって、その手前で左に折れたところから沢筋に入った記憶があるが、さらにその前で新たに閉鎖されているのだろうか。それともあのゲートのことを言っているのだろうか。しかし行ってみて万一通れなかったら癪なので、おすすめに従って、JR生瀬駅からの「生瀬水路道」経由でアプローチすることにする。

生瀬水道道

生瀬の「駅前のコープ西側の道を登ると、200mほどで右を流れる小さな川を渡る橋があって、水路道の入口になっている」…はずだったが、そこには新たな宅地が造成されて、その工事が終わったばかりのようだった。ついこの前まで立ち入りもできなかったらしい。『77コース』はたった3年前に書かれた本なのに、もうこれである。

幸いオレンジ色の工事用フェンスの扉は今は開いていて、まだ一軒も家のない、建築中ですらない造成ほやほやの宅地をずっと奥まで進むと、やはりオレンジ色のフェンスの向こうに水路道の入口があった。たぶんガイドで「途中、木製のベンチとテーブルが置かれた〈憩いの広場〉があ」ると記されていたのは今のこの入口のあたりだろう。ベンチの残骸のようなものがあり、その先、「途中」にそういう場所はなかったから。

現在の「生瀬水路道」入口。

現在の「生瀬水路道」入口。

道は文字通り水路に沿って、小さな谷の中と小さな尾根の先端を回り込みながら、山裾をほぼ水平に進んでいく。自然林に覆われていて、意外といい感じの道だ。

生瀬水路道。

生瀬水路道。

時々、武庫川の対岸、北側の眺めが開ける。

水路道から北側の眺め。武庫川を挟んで中山などが見える。

水路道から北側の眺め。武庫川を挟んで中山などが見える。

生瀬水路道。

生瀬水路道。

JRがトンネルを出て武庫川の鉄橋を渡るところの真上を通る。

JRの鉄橋を見下ろす。真下はトンネル。

JRの鉄橋を見下ろす。真下はトンネル。

最後に、小さな谷(熊ヶ谷川というらしい)にいったん下って、登り返す。水路はその上を橋になって通っている。

生瀬水路道。

生瀬水路道。

熊ヶ谷川にいったん降りて登り返す。赤い水路橋。

熊ヶ谷川にいったん降りて登り返す。赤い水路橋。

登り返した小尾根の先端から、尾根筋を辿る道がある。その入口には赤テープなどの目印がある。小尾根の向こう側は赤子谷の下部にあたる。赤子谷と熊ヶ谷川とはこの細い尾根を挟んでこのあたりでは並行しており、もっと下で相次いで有馬街道沿いの大多田川に流れ込む。大多田川はその先すぐに武庫川に合流する。

水平道は赤子谷下流部の沢に近付きながらなおも続いているので、まずそちらに進んでみることにした。一応踏み跡は続いているし、堰堤のあるところでは越えられるような道筋も付いている。地形図や古い登山地図にも道は描かれている。が、対岸にグラウンドとその関係のバラックのようなものを見ながらかなり回り込んだあたりで、踏み跡はよく分からなくなってしまった。沢に降りて進めば進めただろうが、結局尾根道の入口まで引き返すことにした。

尾根道の入口。板切れの橋で水路を渡る。

尾根道の入口。板切れの橋で水路を渡る。

赤子谷とその一本東の熊ヶ谷川の間の細い尾根の上の道は明瞭なものだった。

赤子谷と熊ヶ谷川の間の尾根の道。

赤子谷と熊ヶ谷川の間の尾根の道。

やがて熊ヶ谷川の源頭部、小さな峠状のところに下って「生瀬高台からの林道」に合する。この「林道」、確かに地形図にも二本線で描かれているのだが、草が茂って路面は細いし、ガタガタの単なる山道で、え、これが林道?という感じ。右に下って赤子谷本流にかかるこれも草に埋め尽くされた西宝橋を渡る。

西宝橋。

西宝橋。

左へ進み、木橋を渡って赤子谷右岸の道を登っていくと、やや平坦になったところで、踏み跡は沢に降りる。そこが赤子谷右股・左股の合流点。

赤子谷左股

ここ何年かの間の数回の豪雨で、六甲の北側はいくぶん荒れている。この合流点も、かなり形が変わった気がした。以前は石を積んだかまどの跡があったが、流されてしまっている。右股に白っぽい土と石のちょっとした明るい中州ができている。そこで一休み。

合流点右股の中州から下流を見る。

合流点右股の中州から下流を見る。

二股の真ん中にはすでに草に覆われつつある小さなケルンがある。

ケルン。

ケルン。

右股寄りの踏み跡を少し行くと、「←左股|右股→」と書かれた小さな道標がある。

左股・右股の道の分岐。

左股・右股の道の分岐。

やっぱりここはより面白い左に進むしかあるまい。左股の沢に入る。すぐに小さな堰堤を二つ越える。ありがたいことにこの後この沢に堰堤はない。

堰堤。

堰堤。

小滝。

小滝。

小滝を越えていくと、すぐに赤子滝が現れる。まっすぐに落ちる7〜8mの滝だ。

赤子滝。

赤子滝。

直登は無理なので、巻く。巻き道は、少し手前の左側にもあったようだが、滝直前の右からまっすぐ突き上げているルートを取る。上部で滝に近付き、落ち口の少し上で再び沢に降りる。

巻き道の途中からの赤子滝。

巻き道の途中からの赤子滝。

赤子滝の落ち口。

赤子滝の落ち口。

階段状の滝になって入ってくる支流。

階段状の滝になって入ってくる支流。

赤子谷左股、以前の印象は、ちょっと暗めの、ややしょぼい沢だなというものだった。でも今日の何か所かの滝場は、みんなそれぞれに美しく立派に見えた。おそらく、以前来た時と季節が違い、少し水量も多い。それぞれの沢には、一番美しく見える水量というのがあるのだろう。多すぎれば進退窮まってしまったりするわけだが。

ゴルジュの入口。

ゴルジュの入口。

ゴルジュの中も、以前は単に暗くて蚊柱も立っていた記憶があるが、楽しく通過できた。ゴルジュの中の滝は、一部は水線通しに登るほかはなく、少し足が濡れたが、気になるほどではない。

ゴルジュの中。

ゴルジュの中。

ゴルジュの中。

ゴルジュの中。

ただし、この沢、そうした何か所かのハイライト部分の他は、ガレて単調な沢床を歩いていかなければならないのが欠点と言えば欠点だ。

ゴルジュを過ぎると沢はクランク状に右、左と曲がり、左に曲がったところにまた美しい滝がある。右から巻き気味に登る。

ゴルジュの次に出会う滝。

ゴルジュの次に出会う滝。

その次が二段の滝で、下段には以前はなかった荒削りな梯子が掛けてあった。

二段の滝。

二段の滝。

二段の滝の上段。

二段の滝の上段。

ガラガラの沢床を進み、もう水は終わりかなあと思うと、もう一つ、Y字の滝が現れる。

Y字の滝。

Y字の滝。

さすがにその先はどんどん水量はなくなり、水場が現れると、その先で沢水は消える。水場は左の斜面から吹き出している湧き水で、いったん流れ出たところに塩ビ管が挿してある。プラティバスに汲む。

水場。

水場。

あとは水のない、次第に傾斜を増すガラガラの沢床をたんたんと登る。

ガラガラの源頭部。

ガラガラの源頭部。

左の斜面に寄っていって、いつのまにか普通の山道のようになる。ひと登りで東六甲縦走路脇の高圧線鉄塔の下に出る。

最後の登り。

最後の登り。

沢の中ではだれ一人会わなかった。一か所、妙におっさん臭いにおいが漂っているところがあって、先行者がそこで休憩したのかもしれなかった。東六甲の縦走路にでると、そこには人がぞろぞろ歩いていた。沢の中との落差にクラクラした。土曜だものな。鉄塔から縦走路を挟んだ南側の展望ポイントにも、大勢の人がいた。

行者山

多くの縦走者たちとは逆に、縦走路を西に向かって少し歩き、ゆずり葉台方面への道を下る。またぐっと人が少なくなる。ここから、エデンの園や光ヶ丘に下ったことはあった。両者への分岐から光ヶ丘方向に少し歩いたところに再び分岐があり、そこから未踏の行者山への登りにかかる。低い灌木の茂る明るい山だ。樫ヶ峰の露岩帯の雰囲気に似ている。行者山は根岸さんのお気に入りだというのが、少し分かる気がした。行者山の山頂は、丈は低いが樹林の中で、木の間越しに大平山が見えている程度。

行者山の山頂。

行者山の山頂。

ちょうど一組の夫婦が幼児を背負子に入れて、立ち上がるところだった。彼らが行ってしまったあとは山頂を独り占め。もうおやつの時間だったが、ここで本日の山めし(沢の途中でおにぎり2個は口に入れていた)。例によって「げんさん」レシピの、サメチリ。赤子谷の水場で汲んできた水を少し使う。

「げんさん」レシピのサメチリ。

「げんさん」レシピのサメチリ。

30分ほど休憩して、わりと平坦な道を東に進み、ひと登りで行者山東観峰。

行者山東観峰付近から甲山方面を見下ろす。

行者山東観峰付近から甲山方面を見下ろす。

ここは丈のある樹木はほとんどない露岩のピークで、ほぼ360°の眺望が素晴らしい。南側は眼下に長大な壁のような集合住宅、その向こうに深谷池と甲山。そのずっと後景には、大阪湾ごしに紀州の山まで見えているようだった。やや東に目を転じると、樫ヶ峰が意外に立派にせり上がっている。北は六甲の縦走路、北東方向は北摂の山々。

樫ヶ峰が意外と立派に見える。

樫ヶ峰(左中景)が意外と立派に見える。

かなりの急下りもあるが、とてもよく整備された道。要所要所には詳細な地図付きの道標が立てられているし、あたりの樹木にはやたらに名札が下げてある。短い解説を加えたものもある。ナツハゼの実を摘んで口に入れる。同じツツジ科スノキ属だし、日本のブルーベリーと呼んでもよさそうだ。ただし時々タンニンがきつく、固めの皮は吐き出さざるを得ない。マルバハギがあちこちに咲いている。カラスザンショウも実を付けている。

マルバハギ。

マルバハギ。

ぐんぐん下って、あの壁のようなアパートの北側に出る。西に少し進んで橋を渡り、西山団地前バス停へ。10分ほどでやってきたバスで逆瀬川駅へ。

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ではヴァイオリンの左腕はどうだろう?

前項の延長で思い立って左腕でも鎖骨に注目してみる。色々と左腕の動きを試しながら鎖骨に注目してその動きを確認しようというわけだ。これはまだあまり練れたものではない、備忘程度の文章であることをお断りしておく。

ヴァイオリン、ヴィオラの左腕は必然的に肘が下がっており、右腕に関して言ったことがそのまま当てはまることはない。だが色々試してみて言えそうなことは、左腕を肩からあまり身体の前側に畳んでしまった場合は、鎖骨が機能しないということだ。左腕は、やや体側に、つまり左側に開いていた方が、鎖骨からの腕全体の連携がうまくいく。(チェロの左腕は基本的に肩から左に開いており、こうした問題は起きにくいと考えられる。)

ポジション移動の動きが一番分かりやすいかもしれない。ポジション移動の動きの基本は、左肘の開閉だ。ポジションが上がれば、左肘はより曲がり、そして胴に近付いてくるわけだが、それをあまりに身体の前面方向に入り込ませると、鎖骨が機能しなくなる、つまりポジション移動の動きに鎖骨がまったく関与できなくなり、したがって腕全体の動きが阻害されることが分かる。しかし左腕自体は楽器本体に対して右に入っていかないわけにはいかない。それを緩和するためには、ハイポジションに行くほど、胸を張って楽器を心持ち左に開くようにしたほうがよい、ということが言えそうだ。

しかし、左腕が体側に開いていれば、逆に弓を持つ右腕は楽器本体を追って、左に入っていかなければならないということになる。

このあたりはバランスの問題なのだろう。しかしこの観点から、楽器をどの程度左に向けて持つのが自分の身体にとって適正なのかを探ってみることは、無駄ではないはずだ。特に音階を駆け上がり駆け下りることが苦手だという人はこの点をチェックしてみるといいかもしれない。

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弓元で肘は下げない

少し前に、甲野善紀氏の「虎拉ぎの手」に結びつけて、ヴァイオリンの右手の形について書いたが、右腕について、一つ思いついたので書いておく。弓元で肘を下げるのはおかしいということを感じ取ってもらう方法だ。

まずもう一度、腕の関節は、手指を除いて、4箇所あることを確認しておこう。3箇所ではない。手首、肘、肩、のどの下。鎖骨からが腕の骨格だからだ。

弓元でやたらに肘を下げることを要求するvn教師はなぜか少なくない。尋ねてみても根拠は不明だ。

では腕をそのような形(以下A)にして、手が左右に水平に動くように、腕を動かしてみてほしい。動かしながら、左手で右の鎖骨に触れてみる。(←これがポイント)

A. ひじを下げた形。おのずと手首も折れる。

A. ひじを下げた形。おのずと手首も曲がる。

次に、前腕がほぼ水平になるように肘を上げ(以下B)、同じように腕を動かし、同じように鎖骨の動きを左手で触知してほしい。

b

B. 前腕が水平に近い、肘を上げた形。

Aの場合は、腕全体が協働する感じがなく鎖骨もほとんど動かない。動いても、腕全体の動きに貢献している感じがしない。鎖骨から弓先まで、一つの力のラインができていなければならないのだが、Aにはそれがない。鎖骨・上腕・前腕・手の間につながりがなく、お互いにむしろ邪魔し合っている感じになる。

これに対して、Bの場合は、鎖骨の動きが明確で、しかも腕全体の動きに貢献していること、腕全体が一体となって機能していることがはっきりと感じとれるはずだ。

念のため断っておくが、上のABは、ヴァイオリンのボウイングの形そのものではない。ここでの動きは、どちらかと言うとチェロの弓元での動きに近い。チェロの学生を診ながら思いついたことだからだし、また単純化のためということもある。ヴァイオリンでは、アップの場合で言えば鎖骨は前に向かって単純に回転して行くだけでなく、わずかに(肩の方が)持ち上がる動きが加わる。それでも基本は同一だと言っていいだろう。

この実験は、弦楽器を演奏しない方にもぜひ試してみていただきたい。

ここまでの話から直接導きだされることではないが、付け加えておくと、合理的な(「正しい」とは言わないでおく)弓元での運弓の動きは、中弓から元に向かって手と肘はほぼ同じ高さ、つまり前腕は水平で推移し、ダウンに移る直前、わずかに肘を先に下げる。肘先の動きにして1、2センチ程度。つまり肘がわずかに先行して、それからダウン動作が動き出す。

右手の形と、右腕の位置は、かなりの部分、連動している。それは確かだが、まだその点を的確に語る言葉を僕は持たない。だからここでは深入りせずにおく。

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油コブシ(六甲山)626m

手持ちの昭文社の登山地図の「六甲山・摩耶山」の古い版には、赤のサインペンで自分で歩いたコースが記入してある。全体的に赤くなってきたし、樫ヶ峰周辺や芦屋地獄谷周辺、仁川渓谷周辺など、異様に赤いラインの密度が高くなっているところもある。

かなり赤くなってきた登山地図。

かなり赤くなってきた登山地図。

それでも、まだ所々、ぽっかり白く空いた部分がある。六甲ケーブルから東、西おたふく山あたりまでのエリアも、そういう空白地帯の一つ。せいぜい、大昔に西山谷を遡行したことがあったのと、五助尾根を途中まで登ったことがあるぐらいだ。

一日中曇りの予報の日、その空白地帯に属する油コブシという奇妙な名前の山に向かう。これも、前項の堂山と同じ、岡弘俊己『関西里山・低山歩き』のコース取りに従う。油コブシから尾根伝いに登り詰めればケーブル山上駅近くに出るのだが、油コブシの先で寒天山道を下ってしまう半日ルート。家を出るのが遅くなってしまったし、夕方から予定が入っていたので、これぐらいでちょうどいい。

ガイド通りに阪急六甲から市街地を延々と歩く気もなかった。ガイドの余白で示唆されている通り、六甲ケーブル下駅までバスを使う。

六甲ケーブル下駅。

六甲ケーブル下駅。

ケーブル駅前から東へ、「六甲ドライブウェイ」(それにしてもこのドライブウェイというコトバはひっかかる)の下、北側の坂道に入る。すぐに「ドライブウェイ」を下に見るようになり、大きく鋭角なS字を描いて登っていく。このS字部分、地形図には家に杖の記号(2006年に風車と並んで導入された)が4つも並んでいる。老人ホームの団地だ。

S字の右上の端で、老人ホームの建物も舗装道路も途絶える。何か工事していて、フェンスに「←ハイキング道」の標示が掲げられている。

油コブシ登山口。左奥は老人ホームの車いす用スロープ。

油コブシ登山口。左奥は老人ホームの車いす用スロープ。

そこから登山道が始まるが、最初はコンクリート階段の急登だ。例の「虎拉ぎの手」も使いながら、一段飛ばしでとっとと駆け上がる。登りきったあたりではもうそれなりに山の中という感じがする。ヒヨドリバナが目立つ。

それなりに山の中。

それなりに山の中。

ヒヨドリバナ。

ヒヨドリバナ。

そこからしばらく登って、最初の高圧線鉄塔の下で少し休憩。鉄塔をくぐって進み、もう一つ鉄塔をくぐって少し登ると一旦道は緩やかになる。

2つ目の鉄塔の下をくぐる。

2つ目の鉄塔の下をくぐる。

もう一度急坂があって、油コブシ山頂直下のベンチやテーブルと東屋のある広場に着く。海側の眺めがいい。決してメジャーなコースではないが、地元に愛されているという感じか。金曜日だが、ちらほら人が登ってきたり下ってきたりする。ここで早めの昼食。

山頂直下の広場。東屋、テーブル、ベンチがある。

山頂直下の広場。東屋、テーブル、ベンチがある。

山頂下広場からの眺め。

山頂下広場からの眺め。

恒例の山メシは、いつもながら「げんさん」レシピの「山のすだちそうめん」。もうね、今日はこれがやりたくてここまで登ってきたようなもの。

材料と道具。

材料と道具。

フライパンにテルモスの湯を入れて沸かし直し、そうめんを一把、シマヤのうどんスープ(粉末)を少々入れる。ゆで上がったところに、輪切りにしたすだち2個分を散らす。すだちのヘタの部分は下ろし金付きのスプーンでおろして入れるのもポイントだ。

山のすだちそうめん。

山のすだちそうめん。

このレシピ、実際にやってみて巧みだなあと思った。山だから麺のゆで汁を捨てるわけにはいかない。流水にさらすなんてことももちろんできない。ゆで汁がそのままつけ汁になる。そうすると、麺には多少のねっとり感が残る。そこに大量のすだちを投入することで、そんなことが気にならないぐらいさっぱりした感じを出している。いやあ、上手いし美味い。

去年4月のこんな記事を見つけた。「スダチで肥満抑制 徳島大・県工技センター、スダチチンの効果確認」。すだちと言えば徳島。徳島大、地元密着でがんばっているのだね。しかしスダチチンってのもベタな命名だ。いや、そんな効果があるのならありがたいことです。

広場から一登りで二等三角点のある油コブシ山頂。ここは眺望はない。枯れた桜の伐採作業に当たっている方々の荷物が置いてあった。下の東屋にいた人たちらしい。

油コブシへの最後の登り。

油コブシへの最後の登り。

油コブシ山頂。

油コブシ山頂。

割合緩やかで、広くもなった道をさらに進むと、寒天山道に突き当たる。

寒天山道に合流。

寒天山道に合流。

右へ、下山開始。このコース、所々で道が二筋に分かれ、「ゆるやかな道」「けわしい道」と書かれた道標が立っているのだが、現状、「けわしい道」の方はほとんど整備されておらず、笹藪がかぶっていることが多いようだった。原則、「ゆるやかな道」を選択。

全体に地味な山で、もちろん高山のようにお花畑が広がっていたりするわけではないけれど、ちらほら、様々な花が見られた。ママコナ、ノササゲ、チヂミザサ、アキノタムラソウなどなど。これは意外な収穫だった。

ママコナ。

ママコナ。花弁の先に飯粒のような白い点が2つ並んでいるのが名前の由来らしい。

チヂミザサ。

チヂミザサ。

アキノタムラソウ。

アキノタムラソウ。

ノササゲ。

ノササゲ。

ハギの仲間としか…。

ハギの仲間としか…。

ツユクサと一緒に咲いていたこれも未確認。

ツユクサと一緒に咲いていたこれも未確認。

渦森台の近くまで下りてきて、鉄塔で右折。高羽道に出る。渦森台に出てバスという手も考えたけれど、そのまま青山散策路を下る。すぐ向こうは渦森台の住宅地のはずだが、それをほとんど感じさせない道。

青山散策路。

青山散策路。

まもなく変電所のフェンスに突き当たり、舗装道路を下っていく。

変電所のフェンス。ここから舗装道路。

変電所のフェンス。ここから舗装道路。

フェンスから垂れ下がっているクズの花。

フェンスから垂れ下がっているクズの花。

クサギ。これは宅地に入ったあたり。

クサギ。これは宅地に入ったあたり。

資材置き場のようなところを通り過ぎる。道の左側は途方もない急斜面にひな壇状に建てられたマンション。右側は宅地が造成されて売り出し中だった。親和女子中・高の脇を通りすぎて、さらに下っていくと、高羽バス停。市道山手線を歩いて行ってもよかったのだけれど、舗装道路ももう堪能したので、ここでもバスを使って阪急六甲駅へ。

全行程6.4km。ささやかな、でも意外にしっとりしたコース。山めしもうまくいったし、満足。

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堂山 384m(湖南アルプス)

早朝、出がけにバタバタするとろくなことはない。この前の白髪岳のときは、朝、湯を沸かしておきながら、それをテルモス(この会社、最近は日和って英語読みの「サーモス」を名乗っているようだ)に入れて持参するのを忘れて出てきてしまった。テルモスの保温力はなかなかのものなので、今回は前の晩に沸かしてテルモスに詰め、早々にリュックに入れておいた。

いわゆる湖南アルプスは、低山ながら眺望はいいし、面白い岩場は豊富だし、渓流も美しく、全体に独特の明るさがあって、気に入っている。

その昔、奈良・京都の寺社などの建設のため、この山域から木々がやたらめったら伐り出され、土も流失し、近代にいたるまで一帯ははげ山だったという。それが、現在の独特の雰囲気のもとになっているのかもしれない。

最初、金勝(こんぜ)アルプスに行って魅力に目覚め、太神(たなかみ)山、矢筈ヶ岳、笹間ヶ岳に登り、大戸川吉祥寺谷の遡行もしたが、その中で堂山が残っていた。

9月中旬、堂山を目指す。石山駅からバスで新免(しんめ)へ。東に向かって歩いていくと、すでに右手に堂山が見えている。

すぐに堂山が見える。

すぐに堂山が見える。

このコース取りは白髪岳の項でちょっとクサした『関西日帰り山歩きベスト100』とほぼ同時期に同じ著者によって書かれた『関西里山・低山歩き』に従っている。前者と違って、こちらの方が掲載地図の等高線も明瞭だが、もちろん別途地形図は用意する。

西性寺の前で道標に従って右に折れる。吉祥寺谷に行ったときは、ここで折れずにまっすぐ進んだのだった。

道なりに進むと新宮神社。手前右側のアパートはフィンランド関係らしくて、アパートの前では、フィンランド人らしい父親が子供たちに日本語で指示をして、車のマットレスを叩かせていた。

新宮神社。

新宮神社。

境内に入ってすぐ右手の細いコンクリートの坂を登ると、登山道の入口がある。すぐに、両側にネズ、松とシダが生え、石英の粒が散り敷いた、湖南アルプスらしい道になる。獣除けゲートを通る。

湖南アルプスらしい道。

湖南アルプスらしい道。

路面の石英の粒。

路面の石英の粒。

これも湖南アルプスらしいシダ。

これも湖南アルプスらしいシダ。

要所要所、道標もしっかりしている。低いけれどもやせた明るい尾根をたどっていくと、程なく岩場に行き当たる。

明るい尾根。

明るい尾根。

岩場。

岩場。

岩場を中ほどまで登ると、一気に琵琶湖側の眺望が開ける。湖を挟んで、比叡山、比良の山々、北側には近江富士も顔を出す。日差しを避けて岩蔭に腰をおろす。微風に吹かれながら景色を眺めているのが異様に気持ちよかった。

岩場。

岩場。

北西に比叡山、琵琶湖、比良の山並みが見えてくる。

北西に比叡山、琵琶湖、比良の山並みが見えてくる。

北に近江富士(三上山)も姿を覗かせる。

北に近江富士(三上山)も姿を覗かせる。

iPhoneを岩場に立てかけ、リモコンで自撮りを試みるが、角度が決まらず、断念した。下はそのテスト写真。後で見たら、水平線は無視しているし、自分で構えたらフレームに入れることはない太陽が写り込んでいて、意外と面白い絵ができたような気がした。ちょっとした高山のようにも見える。

どこの高山?

どこの高山?

岩場続き。

岩場続き。

こんな道も通る。

こんな道も通る。

堂山の北面が見えている。

堂山の北面が見えている。

このあたりで休憩していると、後から登ってきた年配の登山者が一人通り過ぎていった。歩き始めて最初の人間。「いい山ですねえ」と声をかけると、我が事を褒められたかのように無言でにやっと笑った。その気持ちは分かる。

「新免」の道標のある分岐からメインの尾根に乗る。

いよいよメインの尾根。

いよいよメインの尾根。

メインの尾根も岩場とザレ。

メインの尾根も岩場とザレ。

その続き。

その続き。

白い砂地、岩、緑がモザイクになっていて美しい。遠景は矢筈ヶ岳。

白い砂地、岩、緑がモザイクになっていて美しい。遠景は矢筈ヶ岳。

いよいよ山頂かと思うが、本当の山頂はこのもう一つ先。

いよいよ山頂かと思うが、本当の山頂はこのもう一つ先。

最後から二番目のピークから、本当の山頂を眺める。ここは一旦左に下って、前方に見える巨石のあたりを登る。

最後から二番目のピークから、本当の山頂を眺める。ここは一旦左に下って、前方に見える巨石のあたりを登る。

週末のことで、このあたりからちらほら他の登山者に出会う。いくつかピークがあって、本峰直前のピークから直進は困難。ちょっと戻って左に下り、最後の岩場を攀じ登って堂山山頂に着く。この山頂には大きなアゲハが舞っていた。思ったほど広くはないが、四方に大岩があって、その上に上るとほぼ360°、標高は400mにも満たないのに本当に眺めがいい。琵琶湖、比叡山、比良山脈。三上山、金勝アルプス。すぐ南には笹間ヶ岳、矢筈ヶ岳、太神山。それらの間に覘いていたのは鈴鹿の山かもしれない。

山頂から南の眺め。中景は笹間ヶ岳。遠くに見えている山はなんだろう?

山頂から南の眺め。中景は笹間ヶ岳。遠くに見えている山はなんだろう?

昼食は例によって「げんさん」レシピの、「ファミチキのトマト・オニオンソース煮」

昼食。

昼食。

ベランダのバジルが元気なうちにやってみなければと思って決めた。フリーズドライのオニオンスープとトマトペーストの小パック、ベランダで採ったバジルをリュックに入れて、朝6時、自宅近くのファミマに寄ったら、ファミチキのケースは空だった。店員に尋ねると、今揚げてるところで、店に出すのは6時半ぐらいからだという。地図で調べると、JR石山駅から京阪の駅を越えたところにもファミリーマートが一軒ある。バスに乗る前にささっと寄って、無事、ファミチキゲット。「げんさん」の山メシは、いつもながら、B級には見えない。いや、味もいいんだけど。

テルモスの湯をフライパンに入れて、火にかける。この山地の歴史を反映して、地面がものすごく固い。コンロのための風よけを立てようとしたのだが、固定のためのピンが全然刺さらない。幸いたいした風ではなかったので、風よけを立てるのはあきらめた。

ついでに、今回思いついたのは、iPhoneのコンパスの水準器としての利用だ。コンロはできるだけ水平に置かないと具合が悪い。コンロのアームを広げて、その上にiPhoneを置く。これは必ず火をつける前にやらなければいけない。iPhoneをローストしても、おそらくあまりおいしく食べることはできないからだ。微妙にコンロの置き場所を動かしながら、水準器の表示を見て調整する。

iPhoneのシンプルな水準器。「コンパス」を開き、左にフリックすると現れる。

iPhoneのシンプルな水準器。「コンパス」を開き、左にフリックすると現れる。

早めの昼食後、岩場を下って登り返して、主稜線をしばらく戻る。「新免」道標の分岐まで戻る手前、右に分かれる道がある。立派な道標の多く設置されている堂山だが、この分岐は「鎧ダム↔︎堂山」という小さな札が細い松の幹にくくりつけられているだけだ。この先、地形図にくっきり表れている細く短い渡り廊下のような尾根を進むというか渡るので、そう思って地図を見ていれば迷うことはないだろう。

鎧ダムへの分岐の道標。

鎧ダムへの分岐の道標。

その小さな痩せ尾根から堂山の南面を振り返ることができる。

堂山を振り返る。

堂山を振り返る。

痩せ尾根を過ぎると樹林の中に入り(従ってこのコース、ここから先は眺めはほとんどなくなる)、短く急に登り返す。登り切った小ピークは三叉路になっていて、左の道が鎧ダムだという道標がいくつも付けられている。木漏れ日が好ましい灌木の中の尾根を下っていくと、砂地のささやかな流れのある谷に出る。

砂地の小川。

砂地の小川。

流れに沿って進み、鎧ダム上部の広大な砂地に出る。水の大部分はこの厚い砂の層の下に潜っているのだと思うが、砂の上にも、いく筋もの浅い流れが蛇行しながら走っている。かつての地形図には鎧ダムの上に水が、つまりダム湖が描かれていたが、今は消されている。

こんな山の中にもスタバはないが砂場はある。

こんな山の中にもスタバはないが砂場はある。

広大な砂場を淡々と歩いて、明治初期に作られた鎧ダムに着く。

鎧ダム。

鎧ダム。

鎧ダムから下の流れ(若女谷というらしい)も、水平距離にしてほんの600mほどの渓谷だが、磨かれた花崗岩の上を走っていてとても美しい。登山道は、何度か沢を渡りながら、巻くように付いている(従ってアップダウンがある)。一箇所、大きな滝場があるが、一度下から沢通しに遡行してみたいものだと思う。鎧ダムができる以前は、上流までこんな流れだったのだろう。蛇足だが、このあたりから、これもこの山域によくある、登山道脇の白いロープと警告表示が現れる。盗掘する奴がいるからいけないのだろうけれど、げんなりし、ルソーを思い出す。

鎧ダム直下の流れ。

鎧ダム直下の流れ。

磨かれた花崗岩を掘り込んで流れる沢水。

磨かれた花崗岩を掘り込んで流れる沢水。

二条の滝。

二条の滝。

もう一度、古いダムが現れると、沢は天神川に合流する。天神川を飛び石伝いに渡る。ちょうどその通り道を塞ぐように一家族がテーブルを設置して「アウトドア」を楽しんでいらした。山歩きをしていないと、飛び石伝いの先のその河原が「道」だなどとは思いもしなかったのだろう。そういうわけで、とっとと林道に上がる。この先も近くに車を停めて天神川の河原で楽しんでいる家族連れが多い。林道は、太神山へのアプローチ、吉祥寺谷からの帰り、笹間ヶ岳からの下りで何度も歩いている道だ。舗装道路ではあるけれども、緑のトンネルになっていて、割合気持ち良く歩ける。

富川道分岐で座り込んで最後の休憩を入れていたら、バスを一本逃した。6分ほど、急ぎ足でさらに林道を下っていくと、「アルプス登山口」バス停からちょうど走り去っていくバスが見えた。バス停脇に腰を下ろし、コーヒーを淹れて、40分も待つと、次のバスが来た。登山口のバスとしては本数は多いほうだ。その直前、高齢の30人ぐらいの団体が山から下りてきた。バスが着くと、先に一人待っていた僕などにはお構いなく、どやどやと乗り込んでいった。まあ、まだ席は空いていたからよしとしよう。南郷温泉に立ち寄ることも考えていたが、面倒になってそのまま石山駅へ。

8.5kmの軽い歩き。

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白髪岳(篠山)722m

悪天候続きだった夏のあと、ようやく天気が安定してきた9月初旬、白髪岳に行ってみた。

大抵のガイドブックが白髪岳から松尾山を経て古市に戻る周回コースを紹介している中で、岡弘俊己『関西日帰り山歩きベスト100』実業之日本社、2007年(以下『ベスト100』)は、篠山口に抜けるコースを掲載している。これに従うことにした。

このガイドブックは、一つのコースが見開き2ページで、その中に情報がぎっしり詰め込まれている。往復の交通はもちろん、登山適期、出発点に食料の得られる店があるかどうか、休憩に適したポイントなどが簡潔な文章で記されている。また他書とは微妙に違って一ひねりした、したがってまた魅力的なコース取りをしている場合も多く、さて近場でどこにでかけようかというとき、ぼくが真っ先に手に取る本だ。

ただし一点問題があって、各コースに付されている地図がたまに異様に杜撰なことがある。湖南の笹間ヶ岳に行ったときも、本書に掲載の地図(p.109)を信じて道に迷った。コースラインは赤い線で示されているのだが、笹間ヶ岳から御仏河原に出る山道が、その南側の林道のラインになってしまっている。

この白髪岳の地図もひどかった。天神川の林道から取り付く登山口がずっと南に移動させられているし、松尾山から文保寺に下るラインもデタラメだし、最後の市街地に出てからの部分も、ポイントの記述は確かなのだが、地図上ではそれがことごとくズレたところに記されている。もちろん別途地形図を参照すべきものだろう。どの2.5万図を見るべきかはもちろん記載されている。だが地形図では登山道がどこを通っているかは必ずしも解らないし、いずれにしてもここまで狂うかという地図なのである。

さて、JR古市駅を出て交通量の多い372号線に入り、左手に採石場になっている山を見ながら踏み切りを渡って、切り通しの一段高いところに設けられた歩道を通る。その歩道が終わると右に住山(山の名前ではなく辺りの地名)への道が分岐する。そこから先は車もほとんど通らない。平日の朝のことで、ときどき自転車通学の中学生と行き違う。幅広い谷の、田園の道だ。前方、手前の尾根越しに、形のいい白髪岳が姿を見せる。

白髪岳が見える。

白髪岳が見える。

『ベスト100』の地図で登山口と記されているポイントよりもかなり先、だいぶ山の中に入ってきたなあというあたり(まだ人家がある)に松尾山への分岐がある。別のガイドによればこの辺りに有料駐車場があるはずだが、見落とした。自家用車ではここに駐車して白髪岳から松尾山を周回してくるのが普通なのだと思われる。

右が松尾山、左が白髪岳への道。

右が松尾山、左が白髪岳への道。

左に白髪岳への道を進む。幅のある林道だが、栗林のあたりですぐに舗装はなくなり、ガタガタの地道になる。この先、白髪岳への本当の取り付きである住山登山口にも数台ぶんの駐車スペースがあるが、そこまで車で入るのは、四駆車でもないと辛そうだ。

栗林がある。

栗林がある。

道は左岸から橋を渡ってきついS字に屈曲し、右岸をさらに登っていく。このあたり、マツカゼソウの群落。

マツカゼソウ。

マツカゼソウ。

柔らかな緑色の、ハギに似た葉が美しい。ちょうど小さな白い花をたくさん付けている。

葉の緑はやわらかく、とてもやさしげです。また、葉の丸みも独特の美しい曲線で、気品ただようその形は、花のない時期でもひときわ目立ちます。(ピッキオ『花のおもしろフィールド図鑑 秋』実業之日本社、2002

このマツカゼソウ、ミカン科で、葉を揉むと柑橘類の匂いがする。ミカン科で草本なのは、この植物が世界で唯一だそうだ。これの群落は、小金ヶ岳のクリンソウ群生地の近くでも見た記憶がある。

まもなく八角形の東屋のある住山登山口。東屋の背後には水場がある。大きな案内看板があって、辺りは一種の自然公園として、いくつかの遊歩コースが設けられているが、あまり整備はされていない。

住山登山口。

住山登山口。

東屋の脇からずんずん登っていくと、そのまま沢筋を進む道と、右に急斜面を登る階段道に分かれる。地形図を見ると、沢に沿った道でも行けて、距離的には近そうだったが、最初の堰堤の上からはひどく藪がかぶっていたので、あえて進むのはやめて分岐まで戻った。急斜面の階段を上るとまもなく、水平道に出会う。

丸太階段の道。

丸太階段の道。

左に進んで少し下り、二つの小沢を相次いで渉る。小沢はすぐ下で合流している。近くに銀山の跡があるらしいが、どこだか分からなかった。

小沢を渡る。

小沢を渡る。

その後は急斜面のジグザグの登りになる。朝から曇りで、このあたりでびゅうびゅう冷たい風が吹き始めた。Tシャツに短パンで来てしまったのは失敗だったかなと思った。かなり登ってようやく枝尾根の上に乗る。この尾根自体が相当に急な、木の根と岩の道。

枝尾根の急坂。

枝尾根の急坂。

息を切らせながら登りきると、ようやくメインの尾根。小さな広場になっていて、道の両側にベンチが設置されている。ここで初めて、展望も開けてくる。西には名前を知らない山々が、美しく折り重なっている。東には松の枝越しに松尾山が見える。

尾根合流点から西の眺望。

尾根合流点から西の眺望。

このベンチのある尾根合流点は、あくまでも尾根の上だが、まるで穏やかに守られた凹地のような感じがした。回りに丈の低い松が茂って、また地形のせいもあるのだろう、ここでは風が当たらず、静かで暖かかった。北東の谷から吹きつけてくる風は、頭上を越えていっているように思えた。ハントケが記した、カルストのドリーネの中のように。

尾根合流点のベンチと東に松尾山。

尾根合流点のベンチと東に松尾山。

20分ほども休憩して、再び歩き始める。ここから山頂までは一息のはず。両側に低い木々の茂る平坦な尾根の道だ。

主尾根の道。

主尾根の道。

まもなく噂に聞く、というかどのガイドブックにも書いてある岩場が現れる。

岩場が現れる。ここはまず右に巻いていく。

岩場が現れる。ここはまず右に巻いていく。

ロープや鎖が張られて、よほどの突風か雨か雪でもない限り、特に危険はない。けれど楽しめる。コースは最初岩場の東側を巻き、それから急斜面を登って尾根の西側に跨ぎ越す。その瞬間、西側の眺望が大きく開ける。先ほどのベンチのところでも見えてはいたが、ここで本当に視界がぱあっと開ける感じ。

岩場を東から西に越える。自撮りに挑戦してみた。w

岩場を東から西に越える。自撮りに挑戦してみた。w

岩場から見る松尾山。

岩場から見る松尾山。

岩場から先ほど歩いてきた住山の谷を見下ろす。

岩場から先ほど歩いてきた住山の谷を見下ろす。

狭い岩の背を進んでさらに行くと、まもなく白髪岳の山頂。360°の眺望。相変わらず高曇りだが、眺めは申し分ない。南北に伸びた山頂は、あちこちに岩が突き出している。

山頂に一輪だけ咲いていた。

山頂に一輪だけ咲いていた。

まだ風が冷たかったので、岩の一つを選んでその蔭に腰を下ろす。四斗谷を挟んで西側に伸びる尾根が美しい。あの尾根を、南のトンガリ山620mから縦走してくるコースもあるらしい。その向こうに僕にはいわゆる山座同定のできない山々が幾重にも続いている。

山頂から西側の眺め。

山頂から西側の眺め。

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休憩場所に選んだのは山頂北端の岩陰だった。そこから北に、急下りの道に入る。道の両側には、ものものしく延々とロープが張られている。数えたら、右側には6本、左側には4本のロープが束ねられ、ずうっと下まで延びている。

白髪岳北面の道。

白髪岳北面の道。

ところどころロープに助けられ、滑らないように注意しながら下りきると、道は白髪岳北側の小ピークの東側を巻く比較的平坦な道になる。このあたりは、疎林の中のうっすらとした踏み跡のような道だ。

白髪岳北の小ピーク山腹の踏み跡のような道。

白髪岳北の小ピーク山腹の踏み跡のような道。

小ピークの腹を渡りきって、再び尾根に乗ると、道は広くなる。この頃から風は止んで、青空が広がり始めた。

まもなく四叉路。左に文保寺に下る道、右に、谷沿いに住山(おそらくはアプローチに使った住山登山口の先)に下る道(「ワン谷より住山へ」の道標)。そのまままっすぐ尾根道を行く。と、鐘掛の辻。左に「肩越の辻を経て文保寺」の道標。右寄り正面の急坂登りが松尾山への道。

鐘掛の辻。松尾山側から見下ろしている。カニコウモリが多い。

鐘掛の辻。松尾山側から見下ろしている。カニコウモリが多い。

ずっと垂線通しに登っていくのかと思ったら、後半は左に回り込むようにしながら登っていく道だった。

松尾山への登り。

松尾山への登り。

ちょうど12時ごろ、松尾山山頂着。かつての城跡だそうで、まばらに木々の生えるかなりの広さがある平坦な山頂。展望はあまりない。

松尾山山頂。

松尾山山頂。

「げんさん」本レシピの「海鮮XO醤ラーメン」を作って食べる。チューブ入りを見つけて買っておいたXO醤も良かったが、桜エビが案外効いて、美味だった。まあ山では何を食っても美味い。こうした「山メシ」の問題点は、調理時間が4,5分でも、そこにいたる準備や後片づけやその他ぐだぐだしている時間を含めると、あっという間に一時間ぐらいは経ってしまうことだ。やはり余裕がないとできない。

「海鮮XO醤ラーメン」。

「海鮮XO醤ラーメン」。

太陽が出てきた。松尾山山頂の木漏れ日。

太陽が出てきた。松尾山山頂の木漏れ日。

松尾山からの下りが問題だった。先に記したように、『ベスト100』の地図は相当に怪しい。鐘掛の辻から登ってきた道とほぼ平行に、別の下り道があるかのように記されている。山頂には確かに「肩越の辻を経て文保寺へ」という道標もある。とりあえずこれに従うと、北東の尾根上をずんずん下っていく。後から考えると、『ベスト100』の記述はこの道のことを言っていたのに違いないのだが、ちょっと不安になって、途中で山頂まで引き返した。元の道を鐘掛の辻まで下って戻り、そこの道標に従って文保寺を目指す。松尾山の北側の山腹を平坦に進む道だ。結局、先ほど山頂から下りかけた尾根道らしきものと合流した。しかしその道と、鐘掛の辻から山頂への道は、決して平行ではない。90°くらいの開きがある。

鐘掛の辻からの道(右)と、松尾山からまっすぐ下りてくる尾根道(左)の合流点。

鐘掛の辻からの道(右)と、松尾山からまっすぐ下りてくる尾根道(左)の合流点。

尾根通しに下りてきた道と合流して尾根筋を歩くようになってまもなく、ベンチのある肩越の辻。尾根の右に下りていく道と、左に文保寺に下りていく道が分かれる。しっかりした道標が立てられている。ここから文保寺に下りていく道は、2.5万図に記載されていない。だから『ベスト100』のいい加減な地図と相まって、松尾山からの下りで躊躇したわけだ。尾根通しにも明瞭な道が続いているが、そちらを指す道標はない。

肩越の辻。背後が松尾山。左に下ると文保寺。

肩越の辻。背後が松尾山。左に下ると文保寺。

どうやらこの道で間違いはなさそうだという確信が得られて、文保寺に向かって下っていく。植林の中の道。一箇所、刈り払われて北側の展望が開け、ベンチも設置されているところがある。

伐採地から北側の眺め。

伐採地から北側の眺め。

既に沢音も大きく、まもなく文保寺の谷の沢筋に下り着く。この沢筋もマツカゼソウが多い。しばらく右岸を進んで、途中で左岸に渡る。

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再びマツカゼソウの群落。

再びマツカゼソウの群落。

そこから一息で、舗装された林道に出る。林道を下り、獣除けの扉を開けて出ると、すぐ右に文保寺観音堂。そのまま林道を進んでしまったが、境内に入って参道を下ってもよかったかもしれない。いずれ先で合流する。

文保寺観音堂。

文保寺観音堂。

ゲンノショウコ? 文保寺周辺に多い。

ゲンノショウコ? 文保寺周辺に多い。

桜門に立て掛けられた二足の巨大わらじを見て、まっすぐな舗装道路を歩く。

なんだかしどけない大草鞋。

なんだかしどけない大草鞋。

白髪岳を振り返る。

白髪岳を振り返る。

石の鳥居があって、そこで右折。『ベスト100』に記された「しゃれた美容室」(「しゃれた」というのは、店先にガス灯のような街灯が立てられていることを言っているのだろう)とカーブ「ミラー」のある辻は、本の地図上の位置はずれまくっているが、確かにあって、そこで右折。午後になって晴れた日差しの中、たらたらと歩いていくと、無事、JR篠山口駅に着いた。

火曜と木曜だけ、草野駅から「こんだ薬師温泉」に行く「コミュニティバス」が出ている。その日だったら草野駅で途中下車したのだが、生憎月曜だ。おとなしく宝塚までそのまま電車に揺られて行った。

平日のことで、山中では他の誰にも出会わなかった。一人きりの山。

白髪岳はいい山だった。しかし今回のコース、古市駅から住山登山口までと、文保寺から篠山口駅までの舗装道路歩きがかなり長い。総歩行距離15キロを超えた。やはり車で白髪岳・松尾山分岐まで乗りつけて、周回するのが正解かもしれない。

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ヴァイオリンの右手と「虎拉ぎの手」

ヴァイオリン初心者に右手の形を教えるのは難しい。腕の使い方の問題もあるが、適切な手の形もなかなかできない(そしてどうやら腕の使い方と手の形は連動しているようだ)。弾けはしない人を起用した、ヴァイオリンを演奏する姿のコマーシャル用画像や映画のシーンが見るに堪えないのは、主にここに起因する。それは初心者も同じで、大抵は、普通にものを掴む、つまむ形になってしまう。このとき、「初心者」の手は、指の付け根の関節(中手指節関節、MP関節)が曲がっている。弓を持つ(という言い方自体も問題だが)場合、MP関節はほとんど平らか、ごく軽く曲る程度だ(特殊な奏法は除く)。はっきり曲がるのは、一つ先、指先から二番目の関節(PIP関節)だ。親指は指先から一番目の関節ということになる。

腕の関節は何箇所あるかと問うと、大抵は3箇所という答が返ってくる。実際は大まかに言って4箇所ある。手首、肘、肩、そして首の下の鎖骨の付け根。この鎖骨から指先まで、一つの力のラインが通っていなければならない。へんに肘を下げたり(どこで思い込んだのだか、弓元でそうするように指導するヴァイオリン「教師」も少なくない)、手首が山形に曲がっていたり、指の付け根の関節が曲がっていると、各所の力が妨げあって適正な運弓はできなくなる(繰り返すが、いずれも特殊な奏法を除く)。そしてそうやって無理に弾いていると、手や腕に故障を招く。

このラインが通っている状態のとき、そのラインの先端は親指の先になる。先述の適正な手の形、MP関節を曲げず、PIP関節を曲げた形、指先を指の付け根に向かって軽く引き寄せた形のとき、鎖骨からのラインの終点が親指の先になっているはずだ。

ところで、武術研究者の甲野善紀氏の術に、「虎拉ぎの手」(参考)という手の技というか形がある。たとえば踏台昇降のような動きを普通にやる場合と、この手をしてやる場合では、安定度がまったく違ってくる(どなたにもぜひ試していただきたい)。手を虎拉ぎの手の形にすることで、不思議なことに全身に一つのラインが通るのだ。たとえば路面が不安定な山道を歩くときにも、この形は有効だとされているし、実際に有効だと思う。

もうお分かりだと思うが、ヴァイオリンの弓を持つ手と、この「虎拉ぎの手」(そして実はもう一つの「旋段の手」も)の形は、かなり似ている。…と、いうことに、最近になって気付いた。どちらも体の中に一本のラインを通し、全身を協働させる形なのだ。

ヴァイオリンの弓は、掴むのでもつまむのでも、「持つ」のですらない。手の中にスポッと収まっている感じだ。先ほど力のラインの終点は親指の先だと言ったが、もちろんそれは弓先まで、もう少し正確に言えば弓の毛と弦の接触点まで続いている。要は手と弓の間に、もう一つの関節ができるわけだ。関節だから、掴むのでもつまむのでも持つのでもない。十分な可動性をもって手と弓とが嵌り合っていなければならないわけだ。

付け加えて言うと、「虎拉ぎの手」に近い形は、ヴァイオリンの右手だけではない。左手もそうだ。違いは、右手は特に弓先で前腕の内転が加わり、左手は大きく外転させた形が基本になるということぐらいだ。

というわけで、ヴァイオリン初心者には、「虎拉ぎの手」で踏台昇降をさせてみる、というのを指導の一部に組み込み、その「手」を使わない場合との全身感覚のちがいを体感させてみるのも、今日、試してみて、案外有効なように思えたのだった。

ついでに記すと、甲野氏の初期の発見、「井桁の術理」は、ヴァイオリンの右腕の使い方そのものだ。一つの関節の回転運動ではなく、複数の関節が協働して、直線を作り出していく動き。

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ゴロ寝筋トレ

昨冬も軽アイゼンを着けてせっせと山歩きをしていたせいか、一年前の夏ごろにはちょっと出ていた腹が引っ込んだことに、春先、気付いた。その勢いで、ちょっと筋トレめいたこともすることにした。

ちょうど、自分にぴったりの、ゴロゴロ寝ながら楽に確実にできる筋トレの方法がわかった。金も時間も労力もかけない。いわゆるアイソメトリックスというものだが、そこにさらにそのための使い勝手のいいインターバルタイマーアプリも見つけることができた。

一言でいうと、ゴロゴロしながらインターバルタイマーを使ってアイソメトリックス、これが個人的に最強の組み合わせだということを発見したのだった。かつて、腹筋や腕立てをやっていた時期もあったのだが、取り立ててはっきりした効能は感じなかった。腹筋腕立ての他にも、iPhone用のトレーニングアプリをいくつか使って、やってみていたこともあるのだが、妙に大変かつ/または効果の実感できないものばかりだった。アイソメトリックスのことは以前から知っていたが、効果的なやり方がわからなかった。

その手のジムに行くことは最初から考えていない。金もかかるだろうし、近くの駅に隣接するガラス張りのジムの中でサイクリングマシンを必死に漕いでいたりする人たちを通りすがりに見ると、どうも奴隷のようにしか見えない。ペーター・ハントケが、トレーニングジムについてではなくてダンス教室についてだが、こんなことを書いている。

ダンス教室のドアの前に立って、インストラクターの女の命令する声を聞いていると、この中にいる連中は一生監禁されているのではないか、それも自分たちで進んで、という気がして、手首に触れるドアレバーもそのための手錠のように思えた。(『反復』)

これはまあ好みの問題ではあると言っておこう。そもそもがわざわざジムまで出向くことが面倒くさい。

腹筋運動(シットアップ)や腕立て(プッシュアップ)は手軽なトレーニング方法としてよく知られているが、ここで述べる方法だと、それらほどにもバタバタ動かないですむ。ぼくは家にいるとき、ベッドでゴロゴロしながら本など読んでいることが多い。つまり、似たような生活スタイルの人、そういう懶惰な生活を送っている人にお薦めだ。

iPhone用のインターバルタイマーアプリはいくつか見たが、Runtastic Timer、これが良かった。

runtastic Timer

runtastic Timer

無料だとタイマーは一種類しか設定できないし、バナー広告も出るので、アプリ内で有料版(2014年9月現在¥200)に切り替えた。タイマー開始時や、トレーニング開始と休憩(インターバル)開始の三秒前からのカウントダウンを音声で知らせてくれる。この音声がまた英語、ドイツ語、スペイン語、フランス語、イタリア語から選べるようになっている。残念ながら日本語はないが、単純なカウントなのだから問題はない(画面の文字は日本語化されている)。ぼくはどれもそれなりになじみのある言語なので、気分で切り替えて使っている。(ただし、「あと1回」のコールが、フランス語やイタリア語でちょっとおかしいようだ。encore une série à faire が encore un série à faire になっていたりする。)

以下は具体的なやり方。ネット上から「アイソメトリックス」などをキーワードに拾ってきてアレンジしたものもあるし、この部分の筋肉を働かせるにはどういう姿勢を取ったらいいかと自分で考えたものもある。

大胸筋:口元ぐらいの高さで両手を合わせ、下におろしていくと、両前腕が水平になるぐらいのところでおのずと止まる。そこで、大胸筋の緊張を感じながら、両手を押し合わせる。指先は上(頭のほう)を向いていても、少し前方に傾けてもよい。厚手の小さめの本(ASSIMILのテキストなどは最適だ。ってマイナーすぎて誰も知らないか)などを両掌の間に挟むのもいい。ひじに変な力が入らないように気をつけたほうがよさそうだ。両手をやみくもに押し合うというよりも、掌同士が反発する力が腕を介して大胸筋に伝わるというふうに意識したほうがよさそうだ。

腹筋:ひざを立てて仰向けに寝て、上体を起こすだけ。基本的な姿勢は普通のシットアップと同じだが、そんなにバタバタ動かない。首、背骨の上の方から、起こしていき、一定秒数止める。目は自分のへそのあたりを見るようにする。腕は、個人的に、両手で反対の腕のひじを掴む形が楽なので、そうしている。普通の腹筋運動もそうだが、腰に余計な負担がかからないように注意する。慣れてきたら同時に脚も少し上げる。ただし大腿部が垂直以上にならないように。

上腕三頭筋:右ひじを曲げ、右手のひらを自分のほうに向ける。左の手のひらで外側から右手の甲側、手首のあたりを押さえる。右腕の上腕三頭筋の緊張を感じながら、一定秒数両腕を押し合う。右腕は伸ばそうとする方向、左手はそれを阻止する方向。手を替えて、左も同様に行う。

上腕二頭筋:小指を巻き込むように手を握り込み、手首、ひじを内側にぐっと折って静止する。よく力こぶ(つまり上腕二頭筋そのものだが)を見せるのに使われる形そのものだ。

大臀筋:ひざを立てて仰向けに寝、足首をやや尻に近づける。肩は床に付けたまま、肩からひざが一直線になるように尻を持ち上げ、静止する。

つねにそのつど鍛えている部位の緊張を意識する。そしてそれ以外の部位に余計な力がかからないよう、また呼吸を止めたりしないよう注意する。いずれも、少しずつ角度を変えたりすると、微妙に鍛えられる部位が変わる。それを感じながら、小さなバリエーションを楽しむといい。

腹筋は最初少しきつく感じられたので、(一回15秒+インターバル10秒)×5回にタイマーを設定した。それ以外は(一回20秒+インターバル10秒)×5回。上腕三頭筋は片腕5回ずつ。1セット5回の4〜5回目で少しキツい感じがするぐらいがちょうどいいように思う。

慣れてきて、腹筋は一回20秒に、大胸筋は一回30秒(インターバル15秒)にした。一回の秒数を伸ばすのと、回数を5回から増やすのと、どちらがいいかは分からない。まあ、こんなレベルでは、どちらでも大差ないだろう。好みや気分で決めればいいのではないか。

以上のうち、腹筋、大臀筋のものは当然寝て行うのだが、それ以外もたいていは寝たままやってしまう。これぞゴロ寝筋トレである。さすがに脚部は寝たままでは鍛えるのは難しく、寝たまま広背筋を鍛える方法とともに、何かいい方法はないか模索中だ。

これを約2ヶ月、一日一回(まれに二回)ほぼ毎日(たまに何もやらない日もある)続けて、効果が実感できている。と言うか、一応効果が実感できた現時点で記事にした。

何しろゴロゴロしていることが多い人間で、ゴロゴロしたまま、起き上がりもせず、iPhoneでタイマーアプリを立ち上げさえすれば取り掛かれる。以上の5種類全部やってもさしたる時間はかからない(大胸筋と腹筋しかやらないこともある)。タイマー以外は特別な道具も一切使わない(そのタイマーも、iPhoneのおかげで別個のハードを用意する必要がなくなった)。ダンベルはもちろん、チューブやタオルすら使わない。腕立てや腹筋のようにバタバタしないからひどく疲れることもない。もちろん金もかからない。だから続く。気軽にいつでもできるような形にすること、タイマーを使うことによって、一定の時間、一定の回数を確保することがポイントだ。

ただし最後に重要な注釈を加えておきたい。こうした筋トレは、鍛えるには鍛えるのだが、あくまでも単に見た目のシェイプアップだと考えている。体が動く、体が使えるようにするには、別の視点と方法が必要だと思う。スポーツトレーナーの松村卓は、筋トレやストレッチが体を固めてしまい、かえって動かなくしてしまうと説いている。腹筋を固めることによってたとえば大腰筋が動かなくなるというのだ。

松村 私の場合、「なぜ腹筋をやったらダメなんですか?」とよく聞かれるんですが、「じゃあ10回腹筋をやった後、腕を回してごらん」って言うと、全然回らなくなるんです。前屈すると痛いって言いますし、歩いてもらうとほんの数メートル進んだだけで足取りが重く、体が鉛のように感じてしまう。(甲野善紀、松村卓『「筋肉」よりも「骨」を使え!』ディスカヴァー・トウェンティワン、2014

「現役時代は100キロ以上のベンチプレスを青筋立てて、毎日のように挙げていたんです。クオータースクワットは300キロのバーベルを担いで10回、これを5セットは繰り返していました。」という人の言葉だ。そんなハードなトレーニングをしながら、肝心の「走る」方は記録も伸びず、故障も多かったと言う。その果てに、いかに身体を使うかを根本から考え直し、スポーツトレーナーになったのだという。そして相当な実績をあげていらっしゃる。

いまそちらの話には立ち入らないが、そういうわけで、このゴロ寝筋トレは、単なるシェイプアップです。体力を付けるわけでも、身体が使えるようにするわけでもない。それは確認しておきたい。

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伯耆大山

#あとで画像を追加する予定です。

8月中旬、台風が通り過ぎたあと、大山へ。

普通は大山寺で前泊するものなのだろうが、諸事情あって皆生(かいけ)温泉に泊まった。朝6時にタクシーを予約しておいた。5:15ごろ起き出して、一風呂浴び、支度を整えて、宿の隣のコンビニに食料と飲み物の買い出しに。ロビーに戻って待つと、5:50ごろにはタクシーが来た。大山寺までは30分ほどで、5300円だった。タクシーの運転手さんは、乗って早々、かなりの額になるが大丈夫かと尋ねてきた。もちろん痛いが、やむを得ない。

途中、大山山頂に雲がかかっているのが見えた。車道の両脇の緑もとても濃くて、いい感じだ。大山寺橋のたもとの駐車場のところで降ろしてもらった。一応トイレに。ここから車道をぐるっと回り込んだところが登山口なのだなと思って歩いていくと、そこまで行く前にショートカットのような道があったので登り始める。

すぐに夏山登山道に合流。石段の道。左右には、あちらこちら、かつての塔頭(僧坊?)の跡らしい草の生えた平地がある。排仏毀釈の嵐がいかにものすごかったかということなのだろうなあ。

寺域を過ぎても、木の階段が続く。マルタ会談、じゃなかった、丸太階段は、土止めなのであって、決して歩きやすくはないことに文句を言ってはいけない。台風のあとだからか、かなり湿っぽい。でも朝早いし、曇りがちで、涼しく、しかも最初からブナ林の中で、あまり苦痛にならない。次第に山道らしくなる。最初に見つけた花はヤマジノホトトギスだったか。どんどん花も多くなる。曇天のせいか、シモツケソウのピンクを、初めて美しいと思った。クサボタン、ソバナ、シコクフウロ、コオニユリ、クガイソウ、ヤマハハコ、ミヤマコゴメグサ、ダイセンオトギリソウ。イワカガミはすでに花を終えて、実をつけていた。

そこそこ早めに歩き出したつもりだが、もう下ってくるひとたちが何組もいる。幼稚園ぐらいの男の子を連れた夫婦が下ってきたので尋ねると、4時から歩き始めたとのこと。涼しいうちの早朝登山。

四合目か、五合目か、このあたりからは、大山北壁の眺めや、下の地べたの眺めが、次第に開けてくる。弓ヶ浜の海岸線がくっきり見える。

六合目小屋は1360m付近。昭文社の2014年版地図では1280mあたりに小屋が描かれているので、それを頼りにすると徒な期待になるから注意。

1580m八合目。このあたりから傾斜はゆるくなる。八合目は丁子路になっていて、右は岩小屋を回ってくる周回路。とりあえず左にまっすぐ登っていく。ここから木道だ。木道は、植生保護のためなので、決して歩きやすくはないことに文句を言ってはいけない。

ヤマアジサイ、シコクフウロ、サラシナショウマ、ダイモンジソウ、トモエシオガマ、シシウド、ダイセンキャラボク。

弥山避難小屋の背後が山頂。と言うか、現在立ち入りが許されている最高点。山頂記念碑が建っている。10時頃だった。この先、ほんとうは尾根が続いて、弥山三角点1709m、剣ヶ峰1729m、天狗ヶ峰、槍ヶ峰と続くのだが、2000年の鳥取地震以後、崩落がひどく危険なので、歩くことが禁じられている。剣ヶ峰方面の尾根は、霧が出ていて、見ることも叶わなかった。到達できる最高点は、避難小屋を囲むようにして、木道のループになっている。最高点の碑のあるあたりは木道が広くなっていて、人々が思い思いに休憩している。しかしこのあたりの木道は、ほとんど傾斜が付いていて、コンロを置くには適さない。火を使って料理することはあきらめ、おにぎりだけを食べる。一段下の、小屋の回りの地面はもちろん平らだが、どうも腰を据える気にならなかった。時折霧が吹き寄せて、あたりは真っ白になる。

石室の方を回る道に入る。こちらも木道が敷かれていて、一部は地上2mあるのだそうだが、所々は地道にもなる。ダイセンキャラボクの純林。枝が木道の両側からかぶさってきているところもある。時々霧が晴れて、左手に大丿沢が落ち込んでいるのが見える。石室と池の間を通って少し登り返すと、夏山登山道との丁字路。

元の道を下っていく。やがてまた右手に大山北壁が見えてくる。そこに霧が湧き上がっては消える。立派な眺めだと思う。

自分が登っていた時間帯とは比べ物にならない程の多くの人が登ってくる。道は所々細くて、対面交互通行になる。まあ、ちょうどよい小休止の感じだ。すれ違う人の多さのせいか、山頂から6合目避難小屋まで、登りよりも長かったように感じた。

行者分かれの分岐まできて、そこからは元の道ではなく、行者登山道を下る。樹林の中のかなりの急斜面を、少しもジグザグにならず、一直線に下る。そこにびっちり土止めの丸太階段が敷かれている。これはキツかった。こちらに下ってくる人は少ない。この道を登るのはさらにキツそうだ。登ってくる人はいないだろうと思ったら、二三組、いた。ホツツジが咲いていた。

ようやく水音が聞こえてきて傾斜が緩み、少し登山道がジグザグになると、元谷の河原に出た。灰白色の岩だらけの、ガラガラの、広大な河原。これまで樹林の中だったのが、一気に日射にさらされる。しまった、日焼け止めを塗っていなかった。北壁の壮大な眺め。さっきまで霧や雲が出ていたのが、いつのまにか大きく青空が広がっている。右上の林に半ば隠れるようにして、元谷避難小屋が建っている。河原の石に記された赤ペンキを拾いつつ、日にじりじりと焼かれながら、大堰堤の右端に向かう。

そこには幅のある林道が来ている。すぐに左に元谷右岸の登山道が分かれて、そちらを下る。ブナやオオイタヤメイゲツや、緑の濃い、瑞々しい林間の道。アカタデの花が木漏れ日を受けて鮮やかに輝いていたのだが、iPhoneのカメラでは色が飛んでしまった。

大神山神社奥の院の脇に飛び出す。手水はおそらく谷から引かれた水が、中空になった古い木から流れ出していた。石段を下ると、石畳。「日本一長い自然石の道」だそうで、これがまた最後の最後で応えた。

大山寺の集落に14:00頃着。ひさしぶりの高山っぽい山。とても良かった。でもその後二日間、ひざ上の筋肉痛が引かなかった。

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インドア・クライミング教室

岩登りはやっていない。沢登りが好きで高校ぐらいの頃からちょろちょろ行っていた。が、ロープワークはまったくダメ。易しめの沢ばかりを選んできた。丹沢の葛葉川や源次郎沢、関西に来てからは六甲の西山谷、京都の毘沙門谷、金剛山の妙見谷など。しかも沢靴を買ったのも去年初めてで(それで比良の明王谷と湖南の吉祥寺川に行った)、普通の登山靴で歩いていた。

もう少し奥の深い、美しいところに行ってみたいと思うようになったのと、近ごろはたまに人を案内することも出てきたので、最低限のロープワークは習得しておかなければと思われた。

昨年K山荘の比良白滝谷ツアーに申し込んだのだが、人数が集まらなかったとかで中止になってしまった。今年になって、近くの登山会の「公開山行」で、ロープワークもある沢登りの企画をネットで見つけたので、問い合わせのメールを書いたのだが、pearのつぶてだった。なんなんだろうなあ。

ボルダリング・ジムを持つモンベル六甲店が月に二回、ロープクライミングのインドア初級講座をやっていることをつい最近知って、参加することにした。

その STEP1 と STEP2 の講習が、今日、あった。阪急六甲からバスで徳井下車。時折雨のぱらつく不安定な天気だが、インドアなのだから問題ない。

で、話が逸れるが、店に入って声を掛けたバイト店員からいきなり「××先生じゃないですか!?」と言われた。二年前にドイツ語を教えた学生、Tくんだった。今は学士入学でこの近くの大学に移っているらしい。あれ、きみ、山やるの? ─いえ、物品販売の経験があるってだけで採用してもらったので、山は知らないです。あ、でも、この前屋久島行ってきました。─それはいい。楽しいでしょ。ここで学べばいいよね。

2階のジムへ行き、ハーネスとシューズを借りて、講習開始。生徒は定員6名のところ、僕ともうお一方だけ。STEP1、90分でまずは anseilen して登り、落ち、降りる練習。ダブル・エイト・ノット(ものの本で見てブーリアン結びはそらでできるようになっていたのだが、その説明もあったものの出番はなし)を結ぶ練習を何回かして、講師のかたに確保されて人工岩壁を登る。そして下降。講師はとても丁寧で明快な教え方をされる人だった。

そもそもボルダリング・ジム自体が初体験。岩場や滝場のちょっとした登りはそれなりに経験していたが、いささか勝手が違う。大過なく登りきれたものの、少し緊張した。ジムでは、思い思いに登って落ちてくる人たちがいる。幼稚園ぐらいの女の子も楽しんでいる。僕はひたすら三点支持を厳守していたが、ボルダリング系の人たちの感覚は少し違うようだった。

ボルダリングというのは基本フリー・クライミングで、ロープの出番はないわけだが、このジムは一部にロープを設置して、そういう練習もできるようになっているのだった。

1時間の休憩があって、案の定階下の店で散財してしまった。

STEP 2 では確保側の練習。出てくる結びは、二重八の字結びに加えて、自己確保のためのインク・ノット。もう一人の参加者が登るのに合わせてロープを張り、下降に合わせて繰り出す。講師の方自らが登り、落ちるのを止める。ビレイ器のおかげで、案外力は要らない。とにかく器具の扱いやロープの結び方を間違わないかぎり、大きな困難はなさそうだ。そこを間違えば命にかかわる。ということは、結び方をせっせと復習して、体にたたき込まなければいけないということだ。

というわけで、楽しく学べました。講師の先生、相方のSさん、ありがとうございました。

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